覚悟
15
「日野君は正直だね。」
そう思うんだったら少しは信じて欲しいんだけど……。
「じゃあ、催眠術かかるかな?あなたはだんだん眠くな~る~。」
「これは催眠術かかるな~」
冗談抜きで普通に眠くなってきた……。
「本当に眠くなってきてる。クスクス……。」
菜都実先輩の笑い声が心地いい。
「あ、お父さん帰って来た。」
え?お父さん帰宅?俺はすぐに目が覚めた。廊下から声が聞こえて来た。
「何ぃ?菜都実が男を連れて来た?今すぐここに連れて来い!!」
うわぁ~!修羅場じゃん!!俺殺される?!殺されるの?!
「取って食われないから大丈夫。挨拶だけ行こう。」
俺は菜都実先輩とお父さんのいる玄関へ行った。
俺は覚悟を決めて、正座して言った。
「菜都実先輩を僕にください!」
「はぁ?!」
菜都実先輩のお父さんは、俺の顔に顔を近づけて言った。
「何ぃ?!貴様ごときにやれる娘はいねぇんだよ!」
「あー!彼ね、酔っぱらってるから。酔っぱらった勢いで言ってるだけだから。」
菜都実先輩は冷静に、お父さんから俺の顔を離した。
離されたお父さんは廊下に寝転んで言った。
「ウッソで~す!娘三人いま~す!どれでもいいから、どれかもらってくんない?」
「あ、じゃあ菜都実さんを……。」
「だから、酔っ払いが酔っ払いの対応すんな!!」
今度はお父さんは泣き出した。
「娘を……娘をよろしくお願いします!」
「おいコラ!!お父さん!!ちょっと待て!!」
「こちらこそ!よろしくお願いします!」
やった!!菜都実先輩のお父さんに認めてもらった!!先行き好調だ!外堀を埋めていくのもありだな!
喜んでいる俺を見て菜都実先輩が、やっぱり冷静に言った。
「あー、気にしないで。お父さん、明日になったら全部忘れてるから。」
次の日…………菜都実先輩が言っていた通り、お父さんは何の記憶も無かった。
「え?そちらどちら様?……昨日?夜?いや?全然覚えてない。」
俺の覚悟は何だったんだ!?