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不誠実


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その優しい背中の手の感触が、今でも残っている。


ベッドに戻ろうとすると、菜都実先輩が支えてくれた。

「大丈夫~?」


俺はそのまま菜都実先輩を押し倒してベッドに倒れ込んだ。


これでどうだ?これで少しは意識して…………


「く、苦しい!ギブ!ギブ!」

ってプロレスになってるー!!

「す、すみません!」

慌てて起き上がった。


「なんだ、やっぱり元気じゃない。」

「あれ?俺、お持ち帰りされたんじゃないんですか?」

「持ち帰られてると思うなら、おとなしくしてて。この家にはお母さんもお姉ちゃんも妹もいるんだら。」


何だか少しイラッとした。

「じゃあ、菜都実先輩もその隙だらけな所、気をつけてくださいよ。男子高校生なんてヤりたい盛りですから。そんなんでカウンセラーとか大丈夫なんですか?一体どんなカウンセリングしてるんですか?」

俺の発言に菜都実先輩はあきれていた。

「あのねぇ……そんな事言っても何も話さないからね?私口固いんだから。」

「知ってますよ。」

別に、高校生に嫉妬してる訳じゃない。


ただ…………羨ましい。高校生は無条件で本気だと思われてる。邪な気持ちの奴だっているのに。菜都実先輩だったら、口説かれてるのに気づかないで真面目に話を聞いていそうで心配だ。


菜都実先輩が、俺の顔を見て少し笑って言った。

「日野君って…………好きって隠すの下手だよね。」

それがわかってて、実家に連れて来るとか……悪魔ですか?


「好きな人に、好きって隠す必要ってあります?」

俺は菜都実先輩を真っ直ぐ見て言った。本気だと伝わるように、本気で言った。


「好きなのに、なんで好きじゃないふりなんかしなきゃいけないんですか?」


本当は…………俺が一番、そのデメリットに気づいてる。それは、他の奴に、いらない情報を植え込まれる。例えば……女に対して不誠実だとか。別に不誠実だとは思って無い。ただ、好きな人と付き合う人が同じじゃなかっただけだ。だったら付き合うなって話か……。


女に不誠実。多分、菜都実先輩もそう思っている。過去2回の敗因は多分それだ。菜都実先輩の目にフィルターがかかって、純粋な気持ちがなかなか伝わらない。


昔はそうだったから……今も不誠実とか思われても仕方が無い。でも、今は本当に違う。本気だ。


今想うのは……目の前の、ただ1人だ。


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