潰れた
13
魔法が解けるっていつだよ?
「そうか!催眠術!その手があったか!」
「だからちょっと待って?催眠術で同棲しようとしてる?そもそも、そんなのかかるわけないじゃん!」
くっそ~!酒飲ませて持ち帰ろうにも、菜都実先輩は鬼のように酒に強い。もはやザルだ。
結局俺が潰れた。
「あれ~?先輩、日野をお持ち帰りですか~?」
「はぁ?バカな事言わないでよ!送って行くだけだよ!」
菜都実先輩は俺をタクシーにつめこんで言った。
「家、どこ?言わなきゃ本当に家に連れて行くからね?」
菜都実先輩の家?
それって…………ご実家ですよね?
俺が何も言わずにいると、しばらくするとタクシーが止まった。タクシーから降りると、マンションに入って行った。
玄関で、菜都実先輩によく似た女の子が出迎えてくれた。妹かな?
「お母さ~ん!おねえが男お持ち帰りしてきた~!」
「波瑠、うるさい!そんなくだらない事言うぐらいなら手、貸して。そっち持って!」
菜都実先輩の妹が肩を貸してくれた。なんか、菜都実先輩が二人……。幸せだ~!
「うーん、中の下。おねえにはもう少し上でもいいと思うよ?」
中の下って……中の下って妹に言われた……。なんか泣きそう……。
菜都実先輩のベッドに寝かせてもらった。菜都実先輩の匂いだ……。ヤバい……幸せ過ぎる……。
「日野君、大丈夫?お水……。」
菜都実先輩がペットボトルの水を持って来てくれた。
「ありがとうございます。」
俺は起き上がって、水を飲んだ。菜都実先輩は俺の隣に座った。
「菜都実先輩は酒、強くて羨ましいです。」
「え?そう?私は介抱された事ないから羨ましいよ?」
介抱されたいって……。
「何だか…………酔っちゃったみたい……。とか言ってみたいよね~!」
菜都実先輩はそう言って爆笑していた。
「それ、もう一度言ったら襲いますよ?」
「はぁ?!」
「そうゆう事男の前で言ったら、OKととられても仕方ないですからね?絶対言わないでくださいよ?」
まぁ、全然酔わない菜都実先輩は言わないと思うけど……念のため口止めしといた。
俺はペットボトルの蓋を閉めながら言った。
「まぁ、催眠術にかかれば酔えるんじゃないですか?」
「あー!確かに!」
「催眠術、実際にかけられたらいいですよね……。」
催眠術かけられたら…………菜都実先輩と…………
「ちょっとそれ、誰に何かけるつもり?」
「聞きたいですか?」
「うんん、いいや。遠慮しとく。お水、おかわりいる?」
すると、急に気持ち悪くなってきた。
「気持ち悪い……。」
「え、あ、トイレあっち!」
何とかトイレに間に合って……吐いた。菜都実先輩が背中をさすってくれた。何で俺の方が酒が弱いんだろう……。本当に…………情けない。