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透明じゃないけど


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小崎は大真面目だ。元々真面目な奴だとは思ってたけど……けど…………これはもはやバカだ!!


「あなたはふか~くふか~く眠りにつきます。」

「あのさ、もう帰っていいかな?」

「なんでだよ!!なんでお前にはかからないんだよ!!」

そりゃ…………催眠術なんて、普通はかからないだろ?小崎はプロでもないし。


「悪い……全然眠くならない。」

「やっぱり念仏とかじゃなきゃ眠くならないか……。」

「お前、どこへ向かってんの?」

小崎は幼なじみにかけた催眠術を解こうと必死だった。


「あのさ、芦原さんも、催眠術にかかった~とか、多分冗談だって。」

「目薬打っても、頭から水かけても解けないんだぞ?」

「頭から水かけたのか!?」

真面目もここまでくれば相当迷惑だ。それはきっと、側にいる人間なら必ず感じるはず……。


それでも側にいて、催眠術にかかる芦原さんは、小崎の事を好きなんじゃないのか?俺は少しそう思った。


今、小崎に一番近いのは、多分芦原さんだと思う。それでも、小崎には、芦原さんの存在が全然見えていない。


でも、そんな事…………小崎には絶対に教えてやらない。


すると、芦原さんがやってきた。

「お邪魔しまーす。」

普通に小崎の部屋に入り、俺に気がついた。

「あ、加島君来てたんだ。」

「あ、じゃあ俺、そろそろ帰る。」

「いいよ、いいよ。変な気使わないで。悠太はそうゆうの全然わからないから。」


芦原さんはそう言うと、テーブルに課題を広げ始めた。

「二人で何やってたの?」

「小崎が俺に催眠術かけようとしてた。」

「はぁ?悠太そんなに催眠術にハマってるの?」


ハマってるというか、沼だ。沼。催眠術が解けないという沼にはまって出て来られないんだ。


「いや、僕は催眠術を解く方法を模索してたんだ。」

「ねぇ、そんなに解きたい?」

「解かないとダメだろ?ゴーレムと結婚するとか言ってたら、美帆乃は誰とも付き合えない。」

「…………。」

芦原さんは思わず声を失った。


それは……遠回しに、ゴーレムと結婚するとか言ってる奴とは付き合えない。そう言っているみたいだった。俺にはそう聞こえてしまった。多分……芦原さんにも……。


芦原さんは来たばかりなのに、荷物を鞄に戻して言った。

「じゃ、誰とも付き合わない。」


そっち?そっちを選択する?


「ゴーレム以上にカッコいい人いないもん!!」

芦原さんはそう捨て台詞を吐いて、帰って行った。


俺は走って芦原さんの後を追いかけた。

「芦原さん!あれじゃ、小崎が沼から抜け出せないだろ?小崎は真面目なんだよ。若干バカがつくほど……。」

「加島君、ほっといて。これは私の復讐なの。」

復讐?!


「小学三年のバレンタインのチョコ、妹にあげてた。」

え…………?

「中学の入学式、寝坊して赤信号全部律儀に止まって遅刻した。それから……」

まだあるの?

「絶対先に約束した方を優先するし、毎日会えるからって私はいつも後回しだし。私の存在なんて、再放送の相棒以下なんだよ?だから、少しは頭の中私でいっぱいで苦しめばいいんだよ!」


何となく、芦原さんのやりたい事がわかった。

「でも、それじゃ小崎の言った通り、誰とも付き合えないよ。」

「いいもん。私には透明人間の彼氏がいるもん。」

「はぁ?」

透明人間の彼氏って何だ?


「俺、透明じゃないけど、彼氏になってもいいよ。」


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