表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/90

嫉妬から



そうだ、京都へ行こう。


みたいなノリで思った。


そうだ、ゴーレムになろう。


「悠ちゃんは魔法使いだね。」

僕は魔法使いなんかじゃない。魔法なんて…………魔法なんて…………


僕には可愛い可愛い幼なじみがいた。でも…………彼女は、高校一年の春に変わってしまった。僕の知ってる彼女とは別人になってしまった。それは、確実に僕のせいだ…………。僕が、あの時、あんな事さえしなければ…………


悩んだ結果、学校のスクールカウンセラーの先生に相談した。

「失礼します。」

「君また来たんだね。」

「元木先生、話を聞いてください!」

元木先生の所に通い初めて1ヶ月。毎週月曜日は元木先生の日だ。

「中村君、私、元木じゃなくて茂木ね。いい加減覚えようか?」

「最近あいつ、何でもデコるのにハマってて…………」

「あいつ?ああ、幼なじみの子ね?確かにいまだにデコるの流行りだよね~」

僕が元木先生の所に来るようになって、たまに美帆乃も来るようになった。

「あれが、あんなふうになるなんて……異常ですよね?」

「え?そう?ミスマッチではあるけど……ある意味芸術的というか……」


それは、高校入学してすぐの事だった。きっかけは、ちょっとした嫉妬だった。部活帰りに、ちょうど美帆乃が友達と話をしているのを聞いた。

「えー!美帆乃、ARASHIのコンサート行くの~?いいな~!ファンクラブでもチケット入手困難なのに~!」

「抽選に当たったの!お姉ちゃんが行けないから、代わりに連れて行ってもえる事になったの~!」

「ラッキーじゃん!」

あいつ、ARASHI好きだっけ?美帆乃はのんびりした性格で、あんまり好きな物とか主張しない。


そして、コンサートへ行った数日後、宿題をやろうと家へやって来て、延々とMJのカッコ良さを話しつづけた。

「あ、ごめんね。悠太にはつまんない話だよね。でも、みんな凄い熱気で、夢中になれる物があるって、凄いパワーだなぁって思ったんだよね。」

確かに……ファンのパワーは凄いとは思う。確かにMJはイケメンだと思う。でも、美帆乃にジュニーズヲタクになって欲しいとは思わない。

「悠太の好きな物って何?やっぱりゲームとか?」

好きな物…………?何だろう?好きな物って何だろう?ゲーム?漫画?ふと、たまたま置いてあったゴーレムのフィギュアを見て…………

「ゴーレム。」

と答えていた。

「あははは!それ、たまたまそこにあったからだよね?」

「バレた?」


そして、またMJの話に戻った。

もう、うんざりだった…………。いや、男から見てもMJがカッコ良いのはわかる。でも、面と向かって他の男の話は…………何だかムカつく。心が狭いのは自覚がある。でも……何か話題を変えよう……何か…………


ふと、さっきまで読んでいた催眠術の本を手に取った。すると、それに気がついた美帆乃が言った。

「これ、やってみた?」

「は?実際にやった事はないけど…………」

美帆乃は催眠術の本を見て言った。

「やってみる?」

「いやいや、こんなのかかる訳ないよ。」

「やってみなきゃわかんないじゃん。」

そう、かかるワケがない。僕も美帆乃もそう思っていた。


「じゃあ、リラックスしてください。」

「これ以上どうリラックスすればいい?」

美帆乃はベッドの横向きに寝て、壁に足をかけ、頭だけベッドから落ちていた。なんてだらけた格好……警戒心無さすぎ……。

「あなたはだんだんだんだん眠くなります。だんだんだんだん……」

こんなんで眠くなんの?なんないでしょ?

「そして、目覚めた時には……えーと、何にしよう?目覚めた時には……どうしようかな……?」

ふと、ゴーレムのフィギュアが目に入った。それを見ていた美帆乃が言った。

「ゴーレム?」

そう言われて、何でもいいやと思って、こう暗示をかけてしまった。

「あ、ゴーレム。目覚めたら、ゴーレムが好きになっている!」

「…………。」


え?寝てる?それ、嘘だよね?タヌキだよね?

「おーい!起きろ~!み~ほ~の~!」

美帆乃はすぐに目を覚ました。寝た振りか?

「なーんか、悠太の声眠くなるんだよね~。念仏?お坊さんとか向いてるよ。」

「いや、眠くなる葬式とかダメだって。」

「じゃ、私そろそろ帰るね。バイバイ~!」


その時は、何ともなかった。それが次の日…………


次の日の朝、美帆乃は僕にこう言った。


「悠太、私ゴーレムと結婚する!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ