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プロローグ
夕日が空を血のように赤く染めるなか、自分は草原を走っていた。顔を恐怖に歪めながら。
なぜ?
どうして?
なにがいけなかったのか?
取り留めのない思考ばかりが頭に浮かんでは消えていく。
どうしてかはわからない。
それでも本能が止まるなと叫んでいる。
ひたすらに手を前に振り、足で地を後ろに蹴る。
背後から獣の雄叫びと地を砕く足音が聞こえた。
そうだ、自分はなにかに追いかけられているのだった。
後ろにいるものを知りたくとも体が言うことを聞かない。
脳が対象を認識することを拒否する。
走ることしか自分には許されていなかった。
眼の前に森が迫る。
肺にうまく空気が入らない。
酸欠と涙と汗で視界が霞む。
ようやく森にたどり着いたと思った瞬間、体が宙を舞った。
体を強く地面に打ち付ける。
無理を強いた足が悲鳴をあげる。
全身が痛い。
立てない。
獣の嬉しそうな声が背後から聞こえる。
ああ、自分は死ぬのだと、どこか他人事のようにそう思った。
はじめての作品です。
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