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 蓮様が出て行って直ぐに、白衣をきた綺麗な女性が入ってきた。

 私はこの女性を知っていた。

 青葉大附属高等学校の養護教諭(保健の先生)で佐々木 麗子(れいこ) 27歳。

 艶のある長い髪を後にまとめ、少し垂れた目は優しげに見え、全体的に清楚な美人という感じの女性。

 そんな彼女も私と同類。

 

 佐々木 麗子は隠しキャラの生徒会顧問 神田 (はじめ)ルートのライバルキャラだ。

 彼女も嫉妬に狂い、最終的にヒロインを後から刺して殺そうとする。

 バッドエンドの場合、ヒロイン死亡後、神田先生はヒロインの後を追って自殺する。

 彼の最後の言葉は「君がいない世界はまるで地獄だ」。

 

 バッドエンドなのに、前世の私は悶えまくった。

 ヒロインめっちゃ愛されてる。

 神田先生のルートはハッピーエンド、バッドエンドともにどちらも良かった。

 前世の私の1番好きなキャラだった。

 

 しかし、ヒロインが神田先生を選ぶ確率はかなり低いだろう。

 なんせ生徒会役員全員の好感度をある一定に保たないと、彼との出会いイベントは発生しない。

 正直面倒くさい。

 ヒロインの性格にもよるが、わざわざそんな面倒くさい事をする可能性は限りなく低い。

 佐々木 麗子は良くて学校追放、悪くて逮捕なのだが、彼女は安全圏にいると言えるだろう。

 何それ。羨ましい。


 ベッドの上で正座のまま自分の思考に没頭していると、彼女はそんな私に気付き声をかけてきた。


「貴女大丈夫? 突然倒れたんでしょ? 気分は悪くない?」

「はい、全然大丈夫です。ご心配おかけしました」

「ならいいけど。今日は大事をとって、もう少し休んだら帰った方がいいわ」


 心配そうにこちらを見下ろしている、佐々木先生。

 心配してくれるのはありがたいが、今日は始業式のため午前中のみで、明日から通常授業が始まる。

 ぼっち確定の私は教室移動がある場合、このままでは迷子になってしまう。

 そのため、今日はある程度教室の場所を覚えなければならないという使命があるのだ。


「お気遣いありがとうございます。でも、本当に大丈夫です。やらなければいけない事もありますし」

「そう? でも無理はダメよ。気分が悪くなったら必ず病院に行く事」

「はい、分かりました。それとですね……職員室へはどう行けばいいのでしょうか?」 




 ♢ ♢ ♢ ♢




 あの後、親切にも佐々木先生が案内してくれて、私は無事職員室に辿り着いた。

 保健室にまだ用があるらしく、佐々木先生とは職員室の前で別れた

 仕事があるというのに、私をここまで案内してくれて、なんて優しい人なんだろう。

 そんな人が嫉妬に狂って殺傷ざたを起こすなど想像できない。

 恋など前世を含めてした事がないので分からないが、恋は人を狂わせると聞いた事がある。

 恋愛とはそんな恐ろしいものなのか……。

 それなら恋なんてしたくないな……。

 興味はあるが、それが破滅ルートへの第一歩となり、ゲームのシナリオ通りになった場合、私が私でなくなる可能性もある。

 あぁ、考えただけでも恐ろしい……。

 

 ん? ちょっと待って。

 今の今まですっかり忘れてたけど、私……蓮様とがっつり絡んでるよね?

 関わらないと決めてから、一瞬で絡んでるよね?

 しかも、電話番号まで交換して……。

 

 私の顔から血の気が引いていく。


 私のバカヤローーーー!!

 なぜ、今の今まで気付かない!!

 自分で決めた事すら守れないし忘れるって、どんだけバカなの!!

 会社の上司にもよく言われてたじゃない!!

 「よく考えてから発言や行動をしろ」って。 

 自分で自分に呆れるわ!!

 

 職員室前で一人反省会をしてたら、後から誰かに肩を叩かれた。

 反射的に後を振り返ると、生徒会長がいた。


「顔色が悪いようだが大丈夫か?」


 心配そうに私の顔を見つめる生徒会長。

 私はビビりすぎて、魂がぬけるかと思った。

 先程関わってしまった事を後悔してたら、また攻略キャラに出会うとか、今日は厄日かなんかですか?


「ん? 君は朝倒れた子じゃないか。まだ具合が悪いのか?」

「いえ、大丈夫です!! ご心配にはおよびません!!」


 私は力いっぱい否定した。

 これ以上攻略キャラに関わる訳にはいかない。

 私は自分の身がかわいいのだ。

 同じ失敗はしない。


「そうか。ならいいが……無理はするなよ」


 そう言って生徒会長は職員室に入って行った。


 無事、接触を最小限に留められました。

 さすが私!! やればできる子!!


 それにしても、見ず知らずの生徒の体調まで気遣うとか、どんだけ優しいんでしょうか。

 蓮様に佐々木先生、生徒会長。皆優しすぎる。

 これが世間一般では普通なのかな?

 家族以外に優しくされた事なんてないから、よく分からない。

 もし、これが普通だとしたら、私にも友達はできるかもしれない。

 恋愛ができないなら、高校生活は友情を育むという目標はどうだろうか。


 前世でもまったく出来なかった友達。

 憧れの友達。

 一緒に登下校したり、帰りは寄り道しちゃったり、時には喧嘩して更に友情が深まっちゃったり……。

 なんて素敵な「友達」という響き。


 こうしてはいられない!!  

 友達を作るために一刻も早く教室へ向かわなければ!!


 私は意気揚々と職員室へ入って行った。


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