表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、ヒロインの恋をこっそり観察しようと思います  作者: 彩心
1学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

10


「着いたぞ」

 

 五十嵐君の一言で私はゆっくり地面に降ろされ、顔にかけられたブレザーは回収される。


 つ、疲れた……。

 ここまでくるのに、どれだけときめかされた事か……。

 

 階段を降りる時に落とさないように、ギュッと力を入れられるとより密着度が高まる。

 それに五十嵐君もふんわりと良い香りがするのですよ。

 その香りで頭がクラクラして何も考えられなくなり、うっかりときめいてしまう。

 そんな事が何回かあり、その度に手の甲の皮膚をねじり上げ、痛みで冷静さを取り戻す。


 左の手の甲を改めて見ると、赤くなっていた。

 それに気付いた五十嵐君は、私の左手を手に取った。


「赤くなってるじゃねーか! 俺どっかにぶつけた?」


 心配そうにシュンとして私を見つめる五十嵐君。


 やめて! そんな目で見ないで!

 またときめいてしまう!


 私は慌てて手を自分の後に引っ込める。

 

「これは……そう! 元々なのよ元々! ハハハハハ……」

「そうなのか? でも痛そうだけど……」

「だ、大丈夫! その内勝手に治りますから」


 私はこれ以上五十嵐君と2人でいるのは危険と感じ、目の前のドアを開く。


 ドアを開けると、ここは本当に生徒会室なのかと思うほど、豪華な部屋だった。

 広い室内に豪華な机と椅子が6セット置かれ、一目で高級品なのだとわかるソファにローテーブルまである。

 休憩中なのか、紅茶の茶葉の良い香りが部屋を満たしていた。

 そんな豪華な部屋の中、ソファで(くつろ)ぐ蓮様と湊君と女子1名。


 そうだった……ここは魔の巣窟。

 部屋の豪華さに圧倒されたが、攻略対象が増えたこの部屋の方が更に危険だった。


 ドアを開けたまま固まっている私と蓮様は目が合うと、ひらひらと笑顔で手を振ってくれた。

 湊君もニコニコとこちらを見ている。

 だが、1人の女子だけは違った。

 私をもの凄く睨んでいる。


 えっ? なんで睨まれてるの?

 私とこの子は初対面のはずなんだけど……。


 この睨んでくる女子は桜木 美央ちゃん。

 湊君と双子のお姉ちゃん。

 確かゲームでは、美央ちゃんはサポートキャラだ。


 しかし、人形の様に整った顔立ちで睨まれると、もの凄く怖い。

 やっぱりライバルキャラは何もしなくても、嫌われてしまうのだろうか。


 そんな事を考えていると、いつの間にか蓮様が私の傍にいて私の肩に手を回すと、部屋の中に招き入れられた。

 美央ちゃんの方を見ると、睨むだけではなく怒りのオーラがだだ漏れていた。


 それを見ていた蓮様はニコッと笑い「いつもの事だから気にしないで」と言った。


 気にしないでと言われても、気になりますよ。

 私はビクビクしながら蓮様に連れられ生徒会室の中を進む。

 

 湊君はタッタッタっとにこやかに私達に走り寄ってくると、私の肩を掴んでいる蓮様の手首を掴む。

 すると、蓮様は「い゛っ!」と言うと私の肩から手を放し、掴まれた方の腕を持ってうずくまった。


 急にどうしたのだろうか?


 湊君の方を見るとニコニコしているし、こんな天使が何かしたとも考えずらい。

 私は蓮様に声をかけようとすると、湊君は私の腕を掴み無邪気な笑顔で「蓮はきっと急にお腹が痛くなったんじゃないかな?」と言った。

 

「蓮様は薄着ですし、胸のボタンを外しているから、きっと体が冷えたのかもしれませんね」

「……ぷふ、うん……そうだと思うよ」


 湊君が涙目でそう言うので、余程蓮様を心配しているのだなと思った。

 同じ生徒会で幼馴染みだからというのもあるかも知れないが、そこまで他人を心配する湊君マジ天使!

 

「なんだよ蓮、腹痛(はらいた)か? トイレ行けよ」


 ドアを閉めてゆっくりこっちに歩いて来ていた五十嵐君が、うずくまっている蓮様の横に立って言う。


「ぷ……ふふ……」


 湊君は顔を下に向け、口を手で覆って小刻みに震えていた。

 あぁ、心配しすぎてついには泣いてしまうなんて……。


「蓮様。湊君もこんなに心配していますし、保健室かお手洗いに行かれてはどうですか?」

「ふふふ……あぁーもうダメ」


 湊君は小声で何かを言うと蓮様に駆け寄った。


「蓮! 大丈夫? 保健室に薬を貰いに行こう!」

「違う……湊のせーーい゛ってぇ!」

「ほら痛むんでしょ? 無理しないで」


 そう言って湊君は蓮様を立ち上がらせ、蓮様の腕を自分の肩にまわし、蓮様を支えてドアの方へと歩いて行く。


「湊! 後で覚えてーーい゛っ!」

「ほらほら、そんな大きな声だすから痛むんだよ」

「お前なぁーーう゛っ!」

「そんなに痛むのか? なら俺も肩を貸すよ」


 五十嵐君は湊君と反対側の蓮様の腕を自分の肩に回すと、蓮様は引きずられる様に3人は生徒会室を出て行った。


 蓮様凄く痛そうだったけど、大丈夫かな?


 蓮様が心配で3人が出て行ったドアを見ていると、後から「蓮を取り合う三角関係……ふふっ」っと声が聞こえてきた。

 後を振り向くと、美央ちゃんはご機嫌なのかニコニコして3人が出て行ったドアを見ていた。

 

 先程までだだ漏れていた怒りのオーラは完全に消え、なぜ急に機嫌が良くなったのかは分からないが、取りあえず美央ちゃんの機嫌を損ねないように、美央ちゃんと向かいのソファに腰をおろした。

 すると、美央ちゃんは急にバンっと机を叩いて「そこはダメーー!!」と大きな声で叫んだ。

 ビックリして、私は急いで立ち上がる。


 えっ? 座るのもダメなの?

 私本当に初対面から美央ちゃんに嫌われてるんだなぁー。

 設定上とはいえ、何もしてないのに嫌われるのって悲しいな……。

 

 また何かすると美央ちゃんに怒られるかも知れないので、私はソファの隣に立っている事にした。

 

「なんでそんな所で突っ立てるの?」


 いつまでも立ち続ける私に気付いて、美央ちゃんは不思議そうに私に尋ねてきた。


「えっ? 座るのはダメなのかと思いまして」


 そう言うと美央ちゃんは目を丸くして驚いている様だった。


「あぁ、違う違う。そこがダメってだけで、ほらっ、私の隣に座ったら?」


 そう言って美央ちゃんは自分の隣をポンポンと叩く。


「で、ではお言葉に甘えて……」


 私は()()ずと美央ちゃんの隣に腰かける。


「貴女、蓮の言ってた助っ人の人?」

「はい、そうです。手伝いを頼まれた2年の星野 宇宙と申します」

「私は1年の桜木 美央。皆『美央』って呼ぶからそう呼んで」 


 美少女が私に満面の笑顔を向けて下さっている!

 しかも、名前呼びの許可まで!

 ありがたやー、ありがたやー。

 

 あれ? もしかして私そんなに嫌われてなかったりする?


 そんな事を考えて返事をしない私に、美央ちゃんは顔をググッと近づけて威圧的に「美央って呼んでね」ともう一度言った。

 笑顔なのに威圧的って凄いな……あれ? 湊君の時もそう思った様な……。

 やっぱり双子は似るんだなぁーと、ぽけーっと美央ちゃんの威圧的スマイルを眺めていると「宇宙! 聞いてるの!」っと怒られてしまった。


「は、はい! 聞いています! み、美央ちゃん……」


 私が名前を呼ぶと、満足したように美央ちゃんはうんうんと頷いて、ソファに座りなおす。


「それでね、宇宙。この生徒会室にはルールがあるの」


 先程自分の名前を呼ばれたのは気のせいかと思っていたが、やっぱり気のせいではなかった。

 美央ちゃんが私の名前を呼び捨てで呼んでくれている!

 こ、これはもう友達だよね! 2人目の友達!


「だから! 宇宙、聞いてるの!」

「は、はい! 美央ちゃんは私とお友達になってくれるんですよね?」


 思わず美央ちゃんの両手を握った。

 美央ちゃんは驚いた様子で私を見ている。

 その視線で我に帰った私はパッと手を放した。


「す、すいません……」


 は、恥ずかしい……感情が高ぶった勢いで馴れ馴れしく触ってしまった。

 私の顔はみるみる内に赤くなっていく。


 まだ友達認定もされてないのに急に触られたら気持ち悪いし、驚くよね。

 あぁ、穴があったら入りたい……。

 

 穴がないので苦し紛れに自分の顔を手で覆って隠した。


「ふふ……何それ」


 美央ちゃんの声は呆れているようだった。

 あぁーまたしても失敗してしまった。

 私の対人関係スキルほんとポンコツ……。

 あっ、涙でそう……。


「いいよ」


 自分に都合の良い幻聴まで聞こえ始めた……。

 

「だから! 友達になろうって言ってるでしょ、宇宙!」


 そう言って美央ちゃんは私の腕を掴んで引っ張った。

 引っ張られた事により、私の顔を覆ってい片手が剥がされる。

 美央ちゃんは私と目が合うとニコッと笑った。


「ふふ、何泣いてるのよ」

「えっ? 幻聴じゃないんですか?」

「幻聴って……」

「ほ、本当に友達になってくれるんですか?」

「今そう言ったでしょ」


 やったぁー!!

 友達2人目できましたーー!!

 しかも、美少女です!!


「宇宙は大丈夫そうだから……」

「えっ? 何か言いました?」

「何でもない」

「そうですか?」


 なんだか一瞬、美央ちゃんの顔が寂しそうに見えたけど気のせいだったかな?

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ