表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女3人寄ればかしましいなんてモンじゃない  作者: よしゆき
第3回 ソーサラス・シークレット・サービス
8/61

3-A 朝の風景

 入学式の翌日、影郎(かげろう)は朝8時過ぎには高校に到着した。

 そして、教室の廊下側後方にある、自分の席についていた。


 本当は、もっと遅めに登校する予定だった。

 が、自宅の最寄りの阿佐ヶ谷(あさがや)駅から、学校の最寄りの上野駅までの所要時間を調べず、概算で見当をつけて家を出た。その結果、もくろみよりもだいぶ早く着いてしまった、というワケだ。


 始業時刻の8時半までの時間は、無為に過ごすには、少々もったいない。


「ま、いいや」


 影郎は、朝から気分がよかった。理由は2つある。


 1つ目は、入学初日に、2人もの人間と知り合いになれたことだ。影郎にとって、それはかつてないことだった。

 しかもそれが女の子とあっては、いやおうなしに期待が高まるというものだ。彼も、詮ずる所は男なのだ。

 2つ目は、昨夜、自分には魔法の才能があるかもしれない、ということが分かった点だ。


 たとえ魔法でも、もしも誰もが行使し得る、ありふれたものだったとしたら、影郎は少しも、ありがたがらなかっただろう。

 しかし、それは実際には、扱える者が日本で100年間に10人も現れないような、稀有な能力だという。このことは、影郎にもある変身願望のようなものを、大いにくすぐった。


 それで彼は、ひょっとしたら中学校のときよりも、ずっと楽しい高校生活になるかもしれない、などと考えていたのだ。

 もう1ついえば、昨日、化け物退治などという非現実的な仕事の誘いを、あっさり引き受けたのも、この2点が主要な動機だ。


 8時15分ごろ、4、5人の女子生徒の一団が、教室に入ってきた。

 先頭は、深い黒髪を短く切り揃えた、大きく意思の強そうな瞳の少女。海堂らんだ。

 対していちばん後ろが、時折り茶髪にも見える黒髪を肩甲骨まで伸ばした、まん丸い瞳の人物。こちらは天宮晴日だ。


 間にいる若干名も、昨朝らんたちと一緒に、写真を撮っていたメンツだ。

 彼女らは、雑談に興じながら着席した。全員が窓側前方、つまり影郎とは反対側の座席だ。

 らんを他の者がとり囲むような格好になっている。


「ところで、朝のニュース見た?」


 晴日やらんとは別の女子が、話題を替えた。


「どんなん?」


 らんがそのほうに身を乗り出す。


妙高(みょうこう)ルークが結婚するんだって」


「ああ、それホンマやったんや」


「聞いたことあったの!?」


「前にインターネットのニュースで見てん。もう、1週間くらい前やったんちゃうかな?」


「ショックだわあ。わたし、好きだったのに」


「えー? 鹿(しし)シンイチのほうがイケメンちゃう?」


 どうやら芸能人の話題のようだ。


 影郎は、この方面には全く関心がない。聞いても、外国語のようにしか認識できない。


「わたしは妙高ルークのほうが好みかな」


 別の1人が、スマートフォンの画面を見ながら言った。2人の顔写真を、見比べているらしい。


「ええー、(みね)まで!?」


 らんが驚く。


「だって鹿シンイチって、けっこう年配に見えるんだもの。――晴日ちゃんはどう?」


 嶺と呼ばれた子は、晴日の机にスマートフォンを置いた。


「んー、私は……」


 晴日は2、3秒考えた後、画面の1点を指さした。

 らんががっくりとこうべを垂れる。晴日も妙高ルークとやらを選んだことが、見てとれた。


 その後もらんたちは、歌手やバラエティ番組について、語り合った。始業のチャイムが鳴り、鳥尾先生が教室に現れるまで、一瞬たりとも話は途切れなかった。

 らんは、一緒にいた子たちの中でも、特によく喋っていた。

 対して晴日は、自分から発言することは少ない。らんらに何かを訊かれたら、それに答える程度だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ