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魔法少女3人寄ればかしましいなんてモンじゃない  作者: よしゆき
第13回 生き霊の言い分とは
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13-G 名古屋観光

 影郎たちはその後、愛知県警察本部まで移動した。

 本部には、辰午と初恵がいた。

 影郎は念のため、初恵から検査をうけた。といっても、チェックしたのは火傷など外傷の有無くらいだ。

 これも終わると、5人は私服に着替え、一部始終を辰午らに報告した。


「なるほど、そういうワケか……。だとしたら、萩原さんの落ち度も、極めて大きいと言わざるを得ないな」


 辰午は声を潜めていた。警察の誰かに聞かれたら、マズいからだろうか。


「小瓢さんと3年間同居した後、別の女の人と結婚しようとしたこと?」


 早月が問うた。


「それも、褒められたものじゃないけどね。僕が思ってるのはむしろ、小瓢さんからの中傷に対して、何もしなかったことだよ」


「やられたほうが仕返しを望まないんだったら、いいんじゃないの? 小瓢さんだって、最終的にはそれで納得したんだろ?」


「ふつうはね。でも今回の場合、小瓢さんの行動は、あまりにも常軌を逸している。小瓢さんが言ったことは、萩原さんが人間であることまで否定しかねない内容だし、おまけに、周りの人まで巻きこんでる。あんな行動は端的にダメだと知らしめないと、今後どれだけの人が迷惑をこうむるか、分かったもんじゃない。それに、もし小瓢さんが、別の誰かを同じように逆恨みしたら、小瓢さんはその人をも、人間として見られなくなるところまで、追いこもうとしただろうしね」


「そりゃそうだけど、萩原さんが小瓢さんを逮捕させたりしたら、『地位を乱用して私的に警察を行使した』って非難する、格好のネタになるよ」


「もちろん、警察力を用いるのは、立場上むずかしいね。でも、だったらだったで、裁判で差し止めなり、損害賠償なりを求めればいいだけの話さ。裁判官なんて、警察のトップどころか、内閣総理大臣とか最高裁の長官の言いなりにもならないから、逮捕するときみたいな批判とも、無縁だしね」


「あ、そっか」


「それを知らない、萩原さんじゃあるまいに。たぶん彼自身、小瓢さんに対して、負い目を感じてたんだろうね。それにしても、人がよすぎるきらいがあるけど」


「シンゴも人のこと、よう言わんやろ。――それはそうと、何で小瓢さんが近所とかSNSとかでゆうたことが、単なる中傷やって分かるん?」


 今度はらんが尋ねた。


「小瓢さんは、弁護士会に懲戒請求をすることを思いつくくらい、頭の切れる人間のようだからね。もし本当に影郎くんの言うようなことを、萩原さんからされたのだったら、逆に小瓢さんのほうが萩原さんを訴えて、損害賠償請求をしたり、場合によっては萩原さんを暴行罪なり何なりで、刑事告訴していたと思う。それをしなかったということは、そんなことがあったと裏づける物証なんか、ないんじゃないか、って推論が働くんだ」


「けど、赤の他人に風説を流すんって、効果的なん? ウチには、そんなに賢いやりかたやとは思えへんねんけど」


「それはもう、絶大な効果があるわよ」らんの質問には辰午ではなく、初恵が答えた。「人はふつう、『こんなことがありました』とかいう、できごとそのものについての情報と比べて、それをいつどこで体験したかとか、何から知ったかとかいう、知識の出所に関する情報は、忘れやすいの。聞いた当初はデタラメだと思っても、時間が経って誰から聞いたのか忘れると、一転して真実だと受け止めてしまうことを、『スリーパー効果』っていうのよ。小瓢さんはもしかしたら、そのことも知ってたのかも」


「女狐やな……」


 らんが呟いた。


「何か、ドロドロし過ぎてて、聞きたくなくなってきちゃった……」


 早月が顔をしかめる。


「そうだね。ちょうど僕も、『これ子供に言っていい内容なのか?』って思えてきたところなんだ。――そうそう。僕が萩原さんのこと、さっきみたいに言ってたの、くれぐれも内緒に頼むよ」


「ええー? どうしようっかなあ」


 らんは腕を組んで、悩むふりをした。


 影郎たちはその後間もなく、県警本部を退出した。時刻は8時半ごろだ。

 最寄りの市役所駅から、地下鉄を利用して、辰午と初恵は、名古屋駅に向かった。そして当初の予定通り、新幹線で東京に戻った。

 それ以外の5名の行き先は、伏見駅だ。予約してあった宿が、この付近にある。彼らは近辺で夕食をとってから、ホテルに向かった。


「わたくし、あと数日で帰国でしょ? 今まで言いませんでしたけど、影郎くんが〈帰神法〉を使うところを、1度も見れずに終わるんじゃないかって、心配してたんです。最後の最後に、こちらの目的も果たせてよかった……」


 ホテルに向かって歩く途中、ライナが述懐した。


「そう? そう言ってもらえると、嬉しいよ」


 影郎は笑った。


 翌日5人は、名古屋の名所を回った。

 もっとも、観光に使ったのは半日ほどだ。午後はほぼ全て、嶺へのお土産を選ぶのに費やした。名古屋駅のビルや、その周囲のデパートに入っている名店の、全商品をチェックしたのではないかとさえ、影郎には思われた。

 最終的に、5人でお金を出し合い、まんじゅうやういろうを購入した。

『魔法少女3人寄ればかしましいなんてモンじゃない』は、今回を以ていったん完結扱いとします。


 詳しくは活動報告に譲りますが、この第13回はリメイク元の『SSS――ソーサラス・シークレット・サービス』でいえば、全体の真ん中です。後半は別の作品として、改めて連載したく思います。


 ということで、一時的に「なろう」から離脱しますが、復活まで長くはお待たせしませんので、今後ともよろしくお願いいたします。ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

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