表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/61

12-D 肝試しの計画(2)

 結局、直子に説き伏せられ、嶺やライナも含めた7人全員が、講堂に忍びこむことが決まった。説き伏せられたというよりは、強引に押しきられた、といったほうが適切だ。

 7人は、2日後の午後8時に、校門の近くで集合することになった。

 交渉や議論においてモノをいうのは、ロジックや立脚する事実などよりも、声の大きさと粘り強さなのだと、影郎は改めて実感した。


 直子は目的を遂げるが早いか、帰ってしまった。影郎以下6名は、茫然自失のていで、上野公園にとり残された。

 立ち尽くす影郎らを尻目に、らんと嶺はいち早く我に返り、少し離れたベンチに腰を下ろした。


「何て強引な奴なんだ!」


 正気をとり戻すや、影郎は憤慨した。真具那(まぐな)が思い出されて、ならなかったのだ。


「ごく稀にああなるんだ。普段は比較的大人しめだし、親切な子だよ。どういう場合に変なスイッチが入るのかは、現在調査中」


 早月が影郎をなだめる。


「うう、信じないぞ……」


 そう言いながらも影郎は、あっさり翻意して、早月の言葉が正しいと思い始めていた。

 以前彼女は、らんに対する真具那のふるまいに、たいそう立腹していた。

 だから、もしも本当に直子が、彼と同じような人間であるのならば、早月は直子のことを、もっと悪く言っただろう。それ以前に、関わろうとしないはずだ。


「あ。それと、さ。SSSと無関係な人に霊の存在が知られると、困ることがあるのか?」


 影郎は問うた。


「え? どうしてそう思ったの?」


 早月が聞き返す。影郎がこの点を疑問に感じたこと自体が意外、といったふうだ。


「らんといい早月といい、少々片意地と思えるほど、心霊体験の話とか心霊写真に否定的だったからさ。『それだと霊がいたとは断定できない』とか、『この写真はわざわざ霊を出してこなくても説明できる』とか」


「ああ、そういうこと。確かにボクたち、仙骨のない人と一緒にいるときは、意識的に、霊が存在しないものとして行動するようには、してるかな」


「なぜに?」


「だって、ほら」ライナが語る。「わたくしたちって、人には見えないものが見えるでしょ? もしほかの人の目に映っていないものについて、わたくしたちだけ『ほら、あれが見えないの?』なんて言ってたら、不気味がられるじゃないですか。ですから、ふつうの人には何が見えて何が見えないかには、いつも気を配るんです。霊なり魔法なり、自然科学で存在が証明されていないものについては、わたくしたちもとりあえず、『ない』という前提でふるまうんです」


 影郎らが立ち話をする間、らんと嶺も同様に、長いすで2人、語らっていた。


「なあ、嶺。やっぱ、気ぃ咎めるんやったら、ムリに来ぉへんでええよ。直子にはウチらがちゃんとゆうとくから」


「大丈夫。頭が硬いとか、1人だけいい子ぶってるとか、思われたくないし」


「誰もそんなこと思わへんって。直子もゆうとったやん。『いい意味でマジメ』とか、『そういうとこが好き』とか。あれはウチも同感やで」


「いいの」


「ひょっとしてあんた、実は写真のこと気になっとる?」


「それは端的に言って違うわ」


 この点だけは、きっぱりと否定する嶺だった。


 嶺を含む6人はこの日、アメヤ横丁で買い物などをした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ