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魔法少女3人寄ればかしましいなんてモンじゃない  作者: よしゆき
第7回 ブロンドのかぐや姫
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7-B 3人娘と登庁

 放課後、影郎たちは日常業務のため、典儀課に向かった。影郎、晴日、らんに加えて、早月もいた。

 4人は神谷町駅で地下鉄を降りて地上に出、桜田通りという道路を、南へ歩いた。進行方向を向いて、車道の左側だ。


「それにしても、早月も魔法使いだったなんて……」


 信号待ちをしながら、影郎は言った。

 同時に彼は、けさ教室で、早月が真っ先に自分に話しかけてきた理由を理解した。


「そうなの。それも、私やらんちゃんよりも、ずっと経験豊富なのよ」


 晴日が自慢げに答えた。


「ち、ちょっと、晴日! 大げさに言わないでよ。――いい、影郎? そんなに差はないからね。ホントだよ!」


 早月が、即座に訂正する。見れば、顔が真っ赤になっているではないか。


「でも、晴日やらんよりは、早くからSSSにいたんだろ?」


 再び、影郎が口を開く。


「ううん。任官したのはあくまで、3人同時だよ。それに、SSSと関わりを持ったのも、ボクよりも晴日のほうが早いし」


 早月の喋りかたは、小さな男の子のそれだ。

 聞けば、帰国したばかりのとき、中学校で流行っていたという。これが標準的な日本語なのだとカン違いして、マネしたみた結果、廃れた後も、とれなくなってしまったとか。


「どういうことだ?」


「ボク、小学校を卒業した後すぐ帰国して、晴日たちやおばーちゃんと知り合ったの。そのころはまだ、おばーちゃんが現役だったんだ。で、中2のときにおばーちゃんが亡くなって、その直後に3人で任官した、ってワケ」


「魔法も、芽実さんから?」


「少しは、おばーちゃんに教えてもらったこともあるよ。けど、基礎はひいお婆ちゃんからかな。ボクのひいお婆ちゃんも、魔法使いだったんだ」


「ひいお婆ちゃんか……。芽実さんもそうだけど、魔法使いって長生きなんだな」


「そうだね。ひいお婆ちゃんは芽実おばーちゃんよりも5つ年上で、105才まで生きたんだよ」


 芽実は2年前に、102才で没したという。だから、早月が今した話によれば、彼女の曾祖母は、4年前に亡くなったことになる。


 さらに早月から聞いた所によると、彼女の曾祖母は、名をイーファ・ブレトナハといい、芽実とは戦前からの知り合いだったそうだ。

 また、早月が帰国するなり、芽実の元を訪れたのは、生前のイーファの勧めによるという。


「早月ちゃんのいない間、本当に大変だったわ」


 イーファにまつわる話がひと段落すると、晴日が言った。いかにも、うちしおれたような声色だ。


「ごめんね。おわびに何かおごるよ。えっと、ベルジャン・チョコレートがどうとか、メールに書いてたっけ?」


「ウチらも、まさか4回も死にかけるとは思ってもみんかったわ」


 らんが呟いた。


「嘘っ!? それ、どゆこと?」


「邪魔が入ったんが1回。勢い余って、自滅しそうになったんが1回。最後は自分らで対処できたんが1回。でも、1回は正攻法でよう勝たんかったわ」


 らんは指を折って、4月に式神と戦った回数を数えた。それぞれ、夜刀神(やとのかみ)、トウテツ、鬼女、マロースカとの戦いのことを、言っているのだろう。


「やっぱり、私とらんちゃんだけだと、全然ダメね。この1か月、早月ちゃんなしで戦って、改めて早月ちゃんのありがたさを思い知ったわ」


 晴日は、早月の目をまっすぐ見つめた。


「ちょっと、おだてても何も出ないよ。晴日とらんの2人がかりでダメだったら、ボク1人ふえても、たぶん結果は同じだってば!」


 早月はまたも、立ちどころに否定した。

 今度は、耳まで真っ赤だ。今にも頭から、湯気が立ち上りそうだ。


(さては照れ屋なんだな、こいつ。実力はあるみたいだけど)


 影郎は思った。

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