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魔界=魔王だっ! Next World  作者: リーマンズ・ハイ
8/13

 8話 ロハの村

挿絵(By みてみん)


 


 

 私達はロハの村に入った。

 

ジャンによると、結構大きい村だとの事だった。


「おぉーー猫耳!兎耳もいる!

 子供、メチャ可愛い~~!!」

 

 今まで見た事がなかった獣人を、初めて見た。

平和そうな村だった。村というより、

街に近かった。

色んな店が軒を連ね、宿屋もある。


ジャンは、小さくネコの姿になっていた。


「まずは宿を探しませんと・・

 ちょっと聞いて参ります」

ミリアが村の中心へと入っていった。


「ジャン、ここはどんな村なの?」


「はい、この辺りでここしか村はありませんので、

 色んな種族が集まってまいります。

 ここから海岸へ行き、船でリーワースに

 向かうモノや、また帰って来るものなどですね」


「ふーん・・リーワースへの中間地点なのね」


「そうですね、行商人が殆どですが」


 ミリアが戻ってきた。

「セリーヌ様、宿が見つかりました。

 行きましょう」


「うん。わかった。

 ジャン、アナタそのままでいなさい。

 ペットと言うことにするから」


「ぺ・・・ペット?とは?」


「うーーん。難しいわね。

 まぁ、動物のツレってことよ」


「は・・はぁ・・」


 私達は宿屋に入った。

大きな部屋を当てがってくれた。

馬車で寝るのも悪くはないけど、やっぱり

ベッドはいいわぁ!



 荷をほどき

リベラとミリアとで食事に出ることにした。

ジャンは私の魔力を食べてるので、

食べなくてもいいらしい。

留守番をしてもらうことにした。


村の中に出ると、いろんな種族の人らが

たくさんいた。


すぐ先にブラッセリがあった。

私達はそこに入った。


 適当に頼み食事をしていると、

隣のテーブルにいた獣人の商人達と思われる

人たちの話が耳に入ってきた。


「最近、リーワースにもアナト教の奴らが

 出入りしているみたいだな」

 猫人族と思われる中年の男が言った。


「あぁ、表向きは戦争には加担しないと

 言っているが、裏で糸を引いているのは、

 クベイラ神皇国って話だよな・・

 そいつらが出入りしているってことは、

 リーワースも巻き込まれるんじゃないのか?」

 オーク族らしき者が応えた。


「あそこが戦争に巻き込まれたら、

 商売あがったりだわ。大丈夫かねぇ」

 猫人族が言う。


「まぁ滅多なことはないだろうよ。

 ダミア国王様は寛大な方だけど、

 どっちかってーと獣人よりだからな。

 アナト教の奴らの動きには

 注意されているだろうさ」

 コボルト族らしいものが言う。

 


 どうやら戦争の話をしているみたい。


「ねえ、リベラ。アナト教って何?」


「ヒューマンエリアの一番奥にある

 クベイラ神皇国の国教ですわぁ。

 表向きは平和主義とかキレイ事を

 言っているみたいですけど、

 裏では相当汚い事をやっている

 みたいですわねぇ・・アカ殿が仰ってました」

 リベラは露骨に嫌な顔をした。


「あぁ、それは私も聞きました。

 ヴェナートとか言う教皇がかなりの

 曲者らしいですよ」

 とミリアが言った。


「へぇー・・まぁ私達には関係ないけど。

 なんか戦争ってイヤだわ」

 

「どこの世界に行っても、大なり小なり、

 争い事はございましてよ?セリーヌ様」


「前の世界でもあったの?」


「はぁい。東の大陸っていう所では、

 ずっと領地争いの戦争を繰り返して

 おりましたわぁ。

 シュベル様はすごく嫌っておりました」


「そうそう。

 いっつも『アイツらはバカの集まりだ』

 って仰っていましたねぇ。ウフフフ」

 ミリアが笑った。


 私は気になっていたことを、ついでにリベラに

聞いてみた。


「ねぇねぇ、リベラにとってパパって

 どんな人だったの?」


 リベラは一息おいて、上を向きながら言った。

「うーーん・・そうですねぇ、可愛らしくて、

 カッコよくて、大きい方でしたねぇ。

 何よりも発想が自由奔放でした。

 セリーヌ様と同じですね。ホホホホ」


 何かを思い出すように笑ってリベラは言った。


「あぁ~あぁ~・・私もパパみたいに

 なれるかなぁ・・」

 パパの話を聞くたびに、大きさがリアルに

伝わってくる。


「セリーヌ様はセリーヌ様らしくで、

 よろしいんじゃございませんか?

 私達はシュベル様のご息女だから・・

 ということで、お仕えしている訳じゃ

 ありませんですわよぉ?」 

 リベラが言った。


 私は魔王の就任式を思い出した。

「ありがとう。リベラ、ミリア。

 私も何ができるかわかんないけど、

 取りあえず足掻いてみるわ!」


「はぁい。しっかり支えさせていただきます」


「うん!」


 食事を終え、店を出ると、

村が騒がしくなっていた。


「どうしたんだろ?なんか騒がしくない?」


「そうですわねぇ・・」


 ミリアが慌てて通り過ぎていく猫人族に聞いた。

「どうされたんですか?」


「ル・・ルスハンの奴隷商人たちが、

 子供たちを・・猫人族と兎人の子供たちを・・」

猫人族の村人が慌てて言った。


「なんだって?」


「村を出てすぐの所で遊んでいたはずが・・

 帰ってこなくて。連れていかれる所を

 見たって話しが入って」


 この村に入った時に見かけた、可愛い獣人族

の子供達の顔が浮かんだ。


「リベラ、ミリア!私達も探しに行きましょう!」


「承知しました!」


「ジャン、起きているかな。呼ばなくちゃ」


 私は念話でジャンに話しかけた。


「ジャン!起きてる?ちょっときて」


「は・・はい!只今!」


 ジャンが宿屋から走ってきた。


「ど・・どうされたのですか?」


「獣人の子供達が奴隷商人にさらわれたらしいの。

 探しに行こうと思って!」


 話を聞いて、ジャンは思い当たる節が

あるように言った。

「主、それなら我に心当たりがあります」


「そうなの?」


「はい。奴らの動きは知っております。

 いつも見つけ次第、追い払うのですが」


「わかった。じゃぁ、連れていって。

 ミリアはここにいて。

 見つけたら念話で連絡するから、

 村の人に伝えてあげて!」


「畏まりました。お気をつけて!」


 私とリベラはジャンにまたがり、

ジャンの心当たりの場所まで行った。


「主、ここらで奴らはさらってきた

 子供たちを集めております。

 我が姿を隠し、探って参ります」


 ジャンは森の中の、少し開けた場所の

近くで、私達を下ろした。


「いいわ。手を出すんじゃないわよ?

 全部集まってから一気に取り戻すから!」


「承知いたしました」


 ジャンの姿が消えた。足音もしない。

すごーい!ホントなんだ!


しばらくすると・・


「主」


 後ろから声がした。


「ヒッ!!なな・・なによー!

 ビックリするじゃない!」


「申し訳ありません。場所を見つけました。

 まだ仲間を待っているみたいです」


「じゃぁ、その近くで見える所に連れていって」


「承知しました」


 しばらく森の奥に入ると、また少し開けた

場所があった。

木の檻に捉えられた獣人の子供たちがいた。


「10人?ぐらい?いるわね」


「けしからん奴らです。

 何度追い払っても、また来ます」

ジャンが忌々し気に言う。


「獣人の子供はいい値段で売れますものねぇ・・

 ホントにゲスい輩だこと・・」

 リベラも呆れたような感じで言った。


 しばらくすると4~5人の男達が

森の奥から出てきた。

子供達を5人ほど連れていた。

全部で、奴隷商人と思われるのが12~3人、

護衛と思われる兵士みたいなのが4人、

16~17人の男達がいた。


 全員揃ったようで、出発しようとした。


「リベラ。結界張って。

 あの場所から出れないように」


「わかりました」


 リベラはすぐに結界を張った。


「ジャン、行くわよ!」


「ハッ!」


 私は連中の前に立ちはだかった。

ジャンは白虎の姿になった。


「アンタ達、行かせないわよ。

 痛い目を見たくなかったら、

 子供達を置いて帰りなさい」


 私達の姿を見て、頭領らしき者が声を上げた。

「はぁ?いきなり出てきて、なんだ?テメェ?」


 また別の体の大きい男が、バカにしたような

口調で言った。

「おいおい、お嬢ちゃんよ。

 サーベルタイガーかなんか知らねぇが、

 そいつとお嬢ちゃんでオレたちの

 邪魔をしようってか?笑わせるぜ」


 と言い、男達は銃を構えた。


「貴様ら、我が主を愚弄するのか!」

ジャンが吠えた。


「ほう!このトラ、喋るぜ!

 こいつも捕まえようぜ!

 高く売れそうだ!!キャッハハハ!」

 背の低い男が、甲高い声で言った。


「おいおい!こっちは銃だ。剣じゃ勝てないぜぇ?

 そこの喋るトラ!おめーもだ。

 毛皮になりたくなかったら捕まっとけ!」

 また頭領らしき者が言う。

 

「貴様ら!」

ジャンがいきり立つと、背の低い男が

銃を檻の中の子供達に向けた。


「おっと!このガキらを、

 何人か今、殺ってもいいんだぜ?

 ヘタな事しないほうがいいんじゃねーか?

 クッヘヘヘ!」


「ぬっ!貴様ら・・!」

 ジャンが堪えた。


 その様子を見ていた私は、怒りを通り越して

呆れてしまった。

なんて馬鹿な奴らなのだろう・・

これが人間か・・情けない。


「はぁ・・そうなの・・。

 私、人間を相手にするのって

 あんまり気が進まないんだけど・・

 アンタらは、どうやら中身は

 人間じゃないようね?

 遠慮なくやらせていただくわ」


「はぁ??何いってんだ・・」

背の低い男は、意味が分からないようだった。


 その瞬間、私は動いた。


 まぁ、なんとユックリだこと。

銃を発砲しても、タマが見えるわ。

私を打てっこない。ママ譲りの光速剣からは

逃れられない!


 私は全ての銃を剣で破壊した。

次いでに腰にある剣も

全部引っこ抜いて投げ捨てた。


そして、頭領と思われる男の首筋に剣を突き立て

止めた。


「ぬ!!あわわ・・・ちょ・・ちょっと・・」

 男は慌てた


「なぁに?もう、銃も剣もないわよ?

 あとはこのまま私が剣を動かせば、

 アンタの首も無くなるわ」


 私は喉元に剣を突き付けたまま、檻のカギを

その男の腰から奪った。

 

「わ・・わかった・・全部おいて引き上げる・・

 だ・・だから命だけは・・助けてくれ!!」


「ジャン!!!」


「ハッ!」

ジャンは何人かの男達に爪を浴びせ、

追い払った。全員逃げ出した。


 頭領だけが残った。


「お・・おおいおい!お・・おいていくな!!」

 泣きわめくような声で、

男は逃げていく連中に向かって叫んだ。


「アンタを解放する前に、聞きたい事があるわ」

私は剣を突き付けたまま、男を座らせた。


「な・・なんでも言う!

 だ・・だから解放してくれ!」

男は腰を抜かしたような状態だった。


「今までさらった子供達はどこにいるの?」


 そういうと男は、悲鳴に近い声で

「う・・売った先はわからねぇ・・お・・

 オレは下っ端だ!

 ル・・ルスハンの商会に連れていって、

 金を貰うだけなんだ!」


「ルスハンの商会?そこに子供達を集めてんの?」


「た・・たぶんそうだ!

 ば・・場所は教える!!

 そっから先はわかんねー!」

 相変わらず悲鳴だ。

 

「いいなさい!」


「ブ・・ブレス商会だ!

 武器商人だ!武器倉庫の地下に

 奴隷置き場がある!!」


「それはどこにあるの!」


「ル・・ルスハンの港だ!すぐわかる!!」

男はもういいだろうというような感じで

私を見た。

その眼付に狡さを感じた私は、また来るな?

と思った。


「いいわ。どうせまた懲りずに来るんでしょ?

 もうコリゴリと思うように、片耳頂くわ」

 

「え・・え??ヒッヒィイイイッ!」


  ブシュンッ!


 私は片耳をそいだ。


「次はこれで済まないわよ」


 ギャーギャー喚いて転がりまわる。

大げさな。

出血だけ止め、男を解放した。

慌てて走って逃げていく様を

リベラがニコニコと見送っていた。


「セリーヌ様、容赦ありませんね?ウフフ」


「なによ、片耳ぐらい。無くても聞こえるわよ。

 大げさねぇ~男って」

 

 子供達はおびえていたが、助かるとわかって

ホッとしたようだった。

暗くなってきたので、15人の子供達はいったん、

ロハの村へ連れ帰った。


 連れ帰ると、村は安堵の空気に包まれた。

村長に事情を話し、他の村の子供達は

翌日、彼等に送り届けてもらう事にした。


村は私達への歓迎モードに移行した。

村長の計らいで、宿代も無料になった。


 良いことしちゃいました。魔王なのに。



 明けて翌日、私達はロハの村を出立した。

村人全員の見送りの元で。

しばらく歩いて村を離れてから、馬車モードに移り

海岸へ向かった。


 昨夜のルスハンのブレス商会は

しっかりと頭にある。

今はまだ、助けに行けないけど、

必ず、捉えられている子供達を解放したいと、

リベラとミリアに伝えた。

2人とも、なんの反対もせずに、

手伝うと言ってくれた。なんか嬉しかった。



 さぁ、もうすぐ海岸に着く。

 そしたら、ミリアに乗って、海峡を越え、 

 リーワースだ!

     


  

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