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第12話「宇宙海賊と成層圏の亡霊:後編」【Iパート 地球の海】

 【7】


 ぷかり、と水面にジェイカイザーと、バックパックから救護用の浮きを膨らませた〈ザンク・スナイパーカスタム〉が浮かび上がる。

 仰向けに浮かんだ2機のコックピットハッチが開き、裕太とエリィは装甲の上によじ登って外の空気を大きく吸った。

 水平線近くには、先程見た地図から察するに日本のどこかの海岸が薄っすらと見えている。

 そして、彼らがいる近くに、波を立てないように静かに〈ネメシス〉が着水した。


「銀川……俺たち、無事に帰ってこれたんだな」

「そうね、笠本くん……」


 水面に浮かぶ〈ネメシス〉を見ながら感傷に浸っていた2人に、文字通り水をかけるようにして〈エルフィスMk-Ⅱ(マークツー)〉がバーニアを吹かせながら水面近くをホバリングして近づいてくる。

 そしてコックピットハッチを開き、「お熱いねえふたりさん」と茶化すように笑う進次郎と、笑顔で手を振るサツキが顔を出した。


「おいこの進次郎、俺が落ちてるときに逃げやがって」

「〈ザウル〉を仕留めたんだから文句を言うんじゃない。こっちだって初乗りで戦ってヘトヘトなんだぞ」

「はい! 進次郎さんはとっっても素敵でした!」


 レーナといた時の不機嫌が嘘のように〈エルフィスMk-Ⅱ(マークツー)〉のコックピットから顔を出したサツキがギュッと進次郎の片腕に抱きついた。

 キリッと格好つけていた進次郎の顔が緩み、鼻の下が伸びていく。

 裕太が「台無しだな」と呆れ顔をしていると、通信越しにレーナの怒り声が響き渡った。


「あーこらっ! 進次郎さまにくっつくんじゃないの! 進次郎さま~こっちに来てくれたらハグしてあげますよ!」

「えっ、本当かい?」

「進次郎さん! 私の気持ちも考えてくださいよ!」


 海上で繰り広げられるプチ修羅場に呆れて失笑する裕太とエリィ。

 そんなふたりの元へ、〈ネメシス〉からレーナとジュンナを乗せた1台のモーターボートが近づいてきた。


「ほら、お姫様と50点。早く乗りなさい。日本までパパが送ってくれるって」

「ああ、助かるよ。……あれ? 俺の点数上がってない?」

「ま、あれだけ戦ったあと一人で大気圏を突破して、生き残ったという偉業を讃えてのボーナス点よ」

「何だよ、かっこよく見えたとかじゃねえのか」

「あら笠本くん。あたしにとっては裕太は世界一のイケメンよぉ!」

「それ、フォローと受け取って良いのかな……」


 苦笑いを浮かべながらモーターボートに乗った裕太は、ジュンナがボウルを手に持っていることに気づいた。


「ジュンナ、何を持っているんだ?」

「見てくださいご主人様。ミクロ単位で皮の部分だけを的確に除去したジャガイモです」


 そう言って差し出されたボウルの中には水に浸った黄色く輝くジャガイモが大量にあった。


「……まさかジュンナ、お前この騒動の間ずっとジャガイモの皮むきしていたのか?」

「もちろんですご主人様。マスターやご主人様たちが放置していた分も綺麗スッパリ全部剥いておきました」

「ハハハ、ありがと……」

「あはは……。あっ、見て笠本くん!!」


 エリィに肩をトントンと叩かれ、彼女が指差す方を向いた裕太は思わず「おお」と感嘆の声を漏らした。

 後ろにいたレーナもつられて顔を向け、表情を輝かせる。

 水平線に浮かぶ真っ赤な太陽。

 雲一つない穏やかな海面に沈む夕日は、裕太たちの帰還を祝うかのように空を綺麗なだいだい色に染め上げていた。



─────────────────────────────────────────────────


登場マシン紹介No.12

【ブランクエルフィス】


全高:8.0メートル

重量:7.4トン


 宇宙戦艦ネメシスを母艦とするガエテルネン海賊団が運用するエルフィスMk-Ⅱ(マークツー)をベースとしたカスタム機。

 白を基調とした装甲を持つエルフィスMk-Ⅱ(マークツー)とは違い、全身を黒く染め上げられている。

 これは宇宙空間において迷彩の役割をはたすというのもあるが、半分以上がパイロットであるレーナ・ガエテルネンの趣味である。

 大きな特徴として頭部のメインセンサーがエルフィス系列共通のツインアイタイプではなく、モノアイタイプへと変えられている。

 最初こそはツインアイタイプのセンサーであったが、実戦の中でセンサーを何度かやられたため、高級なツインアイから安価なモノアイへと変更されたという理由がある。

 また独自の武装として背部のX字のバックパックに備え付けられた無線浮遊ビーム砲「ガンドローン」がある。

 これは機体から分離してターゲットの近くへと砲台そのものが移動し近距離の、それも様々な角度から攻撃を行うという武装である。

 扱うには相当の訓練が必要であるが、レーナは難なくコレを扱えている。

 【次回予告】


 修学旅行から帰還した裕太とエリィは、警察の人たちへと土産物を配りに向かう。

 そこで裕太は母親の仇ともいえる機体のことを聞く。

 いっぽう内宮は、メビウスの社内で裕太を憎む男と出会っていた。


 次回、ロボもの世界の人々第13話「旅の終わりに」


「それで、修学旅行は楽しめたのか、お二人さん?」

「ええ、もっちろん! ホテルの一緒のお部屋で寝てぇ、笠本くんのお父さんに挨拶したから、気分は新婚ハネムーンだったわぁ!」

「おい銀川! 親父に挨拶ったって本当に『こんにちは』って挨拶しただけだろ!!」

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