第12話「宇宙海賊と成層圏の亡霊:後編」【Fパート 亡霊との戦い】
【4】
「いっけぇ! ガンドローン!」
『ジェイバルカン!!』
「ショックライフル発射!」
次々と湧いてくる無人キャリーフレームをテンポよく落としていく裕太とレーナ。
相手の攻撃自体は狙いが不正確な上、頻度も低いので大したことはないのだがキリのない戦いにいい加減疲弊してきていた。
「ぜぇ……ぜぇ……。レーナ、今何機落としたっけ……」
「わたしは24機、40点は17機ね」
「一戦でエースパイロットになれそうだな……」
「パパが応援を送ってくれたらしいし、もうちょっとの辛抱よ」
レーナの言葉に嫌な予感をしながら、裕太は飛んできたビーム弾をジェイカイザーの左腕に装着されたビームシールドで弾き、ビームを発射した無人の〈アストロ〉に向けてショックライフルを打ち込む。
「応援って……まさか銀川じゃねえだろうな?」
「まさか。お姫様はキャリーフレームの操縦できないでしょ?」
「できない事はないが素人ではあるな。まぁ、あいつも経験不足のまま戦場に出てくるほどバカじゃあ――」
「――悪かったわねぇ。どうせあたしは経験不足のまま戦場に出てくるバカですよ~だ」
通信モニターに表示された不機嫌な表情のエリィの顔を見て、思わず冷や汗を垂らす裕太。
苦笑いを浮かべながら恐る恐る「き、聞いてた?」とエリィ尋ねると、彼女は頬を膨らませながら「ええ、しっかりとね」と返された。
「そ、それはそうと銀川。お前大丈夫なのか?」
「ええ。あたしは〈ザンク・スナイパーカスタム〉に乗って甲板にへばりついているだけだから。それよりも、さっき〈エルフィスMk-Ⅱ〉に乗って誰か出たみたいだけど、誰かしら?」
「誰かって……他に残っているやつなんてふたりしか」
「いよーう裕太にレーナちゃん! 救いのヒーロー天才進次郎さまが救援に駆けつけたぞ」
今まさに言おうとした答え本人が、緊張感のない調子のいい声で通信を送りつけてきたので、裕太は呆気にとられてしまいズッコケそうになった。
その間にも攻撃してくる無人キャリーフレームにジェイバルカンとショックライフルを打ち込んで機能停止させながら、声の主に対して怒声を返す。
「おい進次郎、お前なんで戦場に出てきてるんだよ!」
「そうよそうよぉ! あたしなんて甲板に乗ってるだけなのにー!」
「あーん進次郎さま! わたしのことを助けに来てくれたんですねっ!」
「貴様らいっぺんに通信を送るんじゃない! いくら天才の僕でも聖徳太子みたいなマネはできないぞ!」
怒りながら戦場に乱入してきた進次郎が乗る〈エルフィスMk-Ⅱ〉。
進次郎が現れた途端、あれほど厄介だった無人キャリーフレームの再生が止まり、それどころか破壊された機体がみるみると分解されるように消えていった。
「……進次郎、お前どんな手品を使ったんだ?」
「僕じゃない、サツキちゃんだよ。どうもこのキャリーフレームどもは水金族らしくてな。破壊した状態でサツキちゃんが説得すれば消えてくれるらしい」
「つまり、ボコボコ落としちゃえばいいってことね進次郎さま!」
言うが早いかバーニアを吹かせ、幅広のビームセイバーであるビームブロードを抜き無人キャリーフレームへと斬りかかるレーナ。
「レーナちゃん、分かってるのかな。もう地球が近いって……」
「え? 地球?」
『ゆ、裕太! 下を見るんだ!』
「下……うわっ!?」
足元を映すモニターに目を移し驚愕する裕太。
戦いに夢中で気が付かなかったが、いつの間にかかなり地球に近づいてしまっていた。
足元に広がる青い星に、軌道エレベーターでの一幕を思い出して手を震わせる。
「もう重力に引っ張られて死にかけるのはゴメンだぜ……!」
「裕太、もうすぐここを〈ネメシス〉が通過する。それまでに片付けて乗り込まないと大気圏スカイダイビングをするハメになるぞ」
「わかったよ、やりゃあ良いんだろうが! 進次郎は無理すんなよ!」
「ああ、僕はそれほど無茶でも愚かでもないからな」
「つま先焼かれておいてよく言うぜ」
裕太はペダルを力強く踏み、向かってくる無人キャリーフレームに対してビームセイバーですれ違いざまに斬りつけた。
切断された断面から爆発を起こし跡形もなく消滅するキャリーフレーム。
どうやら再生することも無さそうで、裕太はホッと胸をなでおろしながら次の目標へと向かった。
───Gパートへ続く




