第10話「フルメタル・ガール」【Cパート ニュース】
【3】
「やっぱりさっきの道は右だったんじゃないか!」
『ええい、この地図間違っているのではないか!?』
一方、ジェイカイザーとともに同人ショップを目指す進次郎は、電気街の細い路地の中で携帯電話の画面と周囲の風景を見比べながら顔をこわばらせていた。
端的にいうと、彼らは道に迷っているのである。
ジェイカイザーが自信満々にナビゲートするのでそれに従っていたら、あれよあれよと目的地から離れていっていたのだった。
「ええい、AIだから間違いはないと思っていたが……貴様なんぞより僕の天才的な頭脳のほうが上のようだな。地図すら読めんとは、このポンコツめ」
『なにを! 進次郎どのまでこの私をポンコツというのか! 北と南を間違えただけではないか!』
「大問題だバカモノめ! くそっ、時間もそんなに余裕が無いっていうのに! えーとこっちの道を行けば曲がり角があって……」
※ ※ ※
「次のニュースです、廃品置き場にて気絶しているところを発見された二人組は、テロ集団『愛国社』の組員だということが判明しました。二人組のうち女性の方は着用していた灰色のジャケットと青いジーンズを奪われていたため、強盗事件として警察は捜査していましたが──」
2脚バイクで横断歩道の前に止まり信号待ちをしていると、近くにそびえ立つ巨大なビルに設置された大型モニターから、ニュース映像とともにアナウンサーがニュースを読み上げる声が聞こえてきた。
「笠本くん、聞いた? 愛国社がこの街にいるんですって」
「反ヘルヴァニア集団のあいつらか」
反ヘルヴァニア集団『愛国社』──数年前まで世界規模で反ヘルヴァニア人運動を行っていた過激派組織で、ヘルヴァニア人を狙ったテロ行為が問題になっていた。
しかし、ここ数年はそういった活動も聞かなくなり、自然消滅したと思われていたのだが、裕太が重機動免許の試験中に襲い掛かってきた連中を皮切りに、またポツポツと活動を再開しているようだ……と修学旅行の出発前に大田原が言っていたことを裕太は思い出した。
「いやぁん、あたし怖ぁい! 襲われちゃったらどうしよう!」
緊張感のない声色でそう言うエリィの背中に、裕太はため息をぶつける。
「あーはいはい、守ってやる守ってやる」
「何よぉ、あたしが襲われてもいいっていうの?」
「少なくともさっきのニュースじゃ愛国社は被害者だ。連中が襲われる側なうちは大丈夫なんじゃねえのか?」
「大丈夫ですよエリィさん! もし洋服を取られても私が出してあげますから!」
「洋服を取られたのは愛国社の人でしょ! そういう問題じゃないのぉ!」
頬を膨らませてわざとらしく怒るエリィの背中を、裕太はそっと擦った。
するとエリィの背中がぷるぷると震え、彼女の口から艶めかしい声が小さく漏れる。
以前じゃれ合ってた時に見つけた、エリィの弱点であった。
「あひぃん! んもう、そこ弱いんだからぁ……あ、ここのビルよ!」
そう言いながらエリィはハンドルを切り、ビルの脇にある人気のない裏路地に2脚バイクを止めて降りる。
サツキが2脚バイクの姿からいつもの人間の姿に戻るのを確認した後路地から出て、一行はビルの中へと足を踏み入れた。
───Dパートへ続く




