表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/398

第7話「奈落の大気圏」【Fパート 急転直下】

「こちらヨハン、1つ撃墜しましたよ隊長!」

「でかした! よーし、もうすぐデブリ帯は越える! 今日はデブリの機嫌が悪いから各機、最後まで気を抜くなよ!」

「「はっ!」」


 突然携帯電話から聞こえてくる自慢げなヨハンの声と、彼に応答する男たちの音声。

 

「な、何だ?」

『裕太、彼らの通信を傍受することに成功したぞ!』

「ジェイカイザー、お前何やってるんだ!」

『いや、裕太があのマシーンが何をやっているか知りたがってたように思えたのでな……』


 ジェイカイザーの勝手な行動に、裕太は額に手を当ててため息を吐く。

 ふと、裕太は不思議そうに携帯電話を覗き込む内宮の視線に気づいた。


「今の声、誰や?」

「あ、ああ。えっと、対話型プログラムみたいなものだよ」

「ほーん……最近はそないなもんもあるんやなぁ」


 適当な嘘でごまかされたことに気づいてないのか、内宮は再び窓の外へと視線を戻す。

 ジェイカイザーについて説明すると長くなるので、気づかれた場合はこうやってごまかしている。

 深く聞かれたら面倒であったが、すんなり納得してくれたので裕太はホッと胸をなでおろした。


 そうこうしている内にガード達によるスペースデブリの処理も一段落したようで、通信の声も撤収ムードに入っていた。


 その時、窓の外がピカッと一瞬光り、同時に爆発音のような音が鳴り響く。

 爆発音を聞いてか、通信の声も慌ただしくなった。


「何の騒ぎだ!?」

「隊長、遠方よりビーム攻撃です!」

「宇宙海賊か!?」

「こちらを狙ったものではなく、どうやら戦闘の流れ弾のようです!」

「宇宙海賊の小競り合いか……!? 総員、撤収作業を急げ! エレベーターはバリアーで守られているが、ビーム弾が〈ザンク〉に直撃したらひとたまりもないぞ!」

「「「了解!」」」


 窓の外の〈ザンク〉が慌てた様子で次々と上の格納庫の方へと戻っていく。

 遠くでは、地球に隠れるようにしてビームの線が乱れ飛ぶ光が見える。

 ヨハンが言っていたのもあるが、宇宙は治安が悪いという話は以前より聞いていた。

 なにせ、宇宙という空間は広大すぎて人の手で見回るのはあまりにも無理があるからである。

 それ故に無数の宇宙海賊が横行している、と裕太は軽部先生から以前聞いたのを思い出す。


 通信の話が本当なら車両に流れ弾が飛んできても大丈夫だとはいうが、やはり怖いなと裕太が思っていると、窓のすぐ近くを1機の〈ザンク〉が落下していった。

 同時に、通信越しに聞き覚えのある声の悲鳴が携帯電話から聞こえてきた。


「うわぁぁぁっ!?」

「何が起こった!? 状況を報告しろ!」

「隊長、ヨハン機が背部に流れ弾を被弾! 落下していきました!」

「何だと!?」

「た、隊長! 減速できません! 助けて!!」


 携帯電話から発せられるヨハンの悲痛な叫び。

 裕太は窓に張り付いて落ちていったヨハンの〈ザンク〉を見ようとしたが、既に遙か下へと落ちていったのか目視することはできなかった。


「隊長! 助けに行きます!」

「ダメだ! 我々の〈ザンク〉には大気圏を突破する性能は無い! ミイラ取りがミイラになるだけだ!」

「そんな、じゃあヨハンは……!」

「残念なのだが……!」


 通信越しに聞こえる会話を聞き、いてもたってもいられなくなった裕太は無言で格納庫へ続く階段の方へと足を向けた。

 しかし、歩き出そうとした矢先に裕太の肩を内宮が掴み止め、エリィが前に立ちはだかる。


「どこ行くねんや笠本はん! あんさんが行ったところでどうしようもないやろ!」

「内宮さんの言うとおりよ! 助けに行ったとしても、大気圏で燃え尽きてしまうだけだわ!」

「何言ってんだよ! たしかにヨハンはムカつくやつだったが、目の前で死にかけているのを見捨てる訳にはいかないだろ!」


 裕太の真剣な表情に気圧されたのか、肩を掴む手を緩める内宮。

 その隙に裕太は彼女の腕を振り切り、階段を駆け上がりながら首の後にぶら下がっているヘルメットを被った。


「おい貴様、ここで何をしている!」


 既に格納庫に戻ったガード隊員のひとりが裕太を止めようとしたが、裕太は真剣な眼差しで隊員を睨みつけ、そして叫んだ。


「あいつを……ヨハンを助けに行くんだ! 来いっ! ジェイカイザー!!」


 裕太が携帯電話を振り上げて叫ぶと、格納庫の床に魔法陣が現れジェイカイザーの本体が出現した。

 突然出現したジェイカイザーに隊員があっけに取られている隙に裕太はコックピットへと乗り込み、エアロックへと歩かせた。

 ジェイカイザーの手でエアロックを操作し、宇宙へと通じる扉を開き、一歩踏み出す。

 人生初の宇宙への出撃。

 だが、祐太は落下していくヨハンを助けたい一心で、恐怖は感じていなかった。


『本当に行くのか?』

「早くしないと、あいつが死んじまう。行くぞ!」


 裕太はペダルを思いっきり踏み込み、ジェイカイザーを飛び降りさせた。




    ───Gパートへ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 嫌な奴、と言っていたヨハンを救おうとする裕太くんは流石主人公だなぁと感じました。そういうとこかっこいいぞ。 危険に飛び込もうとしている裕太君を二人の少女、エリィちゃんと内宮さんが止めに入る…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ