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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第1話「ジェイカイザー起動!」【Eパート 逃飛行】

 【3】


 操縦席の左右にある外を映すモニターには、高架を走る列車の窓の外のように風景が走っていた。

 裕太は操作盤コンソールに写った地図を見ながら、ジェイカイザーの飛ぶ方向を調整する。

 移動手段が空路の場合、曲がり道や交差点などを考慮する必要が無いため、目的地の方向にまっすぐ進むだけで良い。

 なので裕太は進行方向の調節を終えると、ジェイカイザーの操縦系を調べることにした。

 オートバランサーの設定画面、操縦レバーの感度調整、GPSリンク機能……そして。


「こいつ、火器管制ファイアコントロールまであるって、まさか軍用か……?」

『ヘルヴァニア帝国と戦うために作られたマシン戦士なのだ!』


 裕太の呟きに対し、コックピット内のスピーカーを通してジェイカイザーが自慢げに返事をした。

 エリィは、人が乗らずに動き・喋るジェイカイザーを改めて見てか、不思議そうな表情を浮かべる。


「……しかしよく喋るわねぇ。最新の対話型AIだって、こんなに会話ができるものは聞いたこと無いわよぉ」

『どうだ、すごいだろう!』


 エリィに褒められたと思ったのか、ジェイカイザーは得意げな声で返した。

 顔は見えないが、おそらくとてもいいドヤ顔をしていることだろう。

 裕太は、なんだかムカついたので事実を突きつけて表情を曇らせてやろうと、いたずら心が芽生えた。


「ま、戦う相手はもういないけどな……」

『ぐぅっ……。しかしだ、私には無尽蔵にエネルギーを生み出す動力炉も搭載されている! これは素晴らしい機能ではなかろうか!』

「確かに、それが本当ならすごいな。だけどさ、飛行用のバーニアの燃料表示がガンガン減っていってるんだが?」

『そ、それは……バーニアだけはエネルギーのみで動かすことが出来ず、別途で化石燃料をだな……』

「それって、不完全じゃないのぉ?」


 予想外だったのだろうか。エリィからも放たれたツッコミに、ジェイカイザーの声色から段々自信が無くなっていく。


『おぐぁっ……。私にはジェイバルカンを始めとした火器もあって……』

「それのせいで今飛んで逃げてるんだがなぁ? だいたいこの平和の世の中で武器持ってる方が迷惑だっつーの」

『ごふっ……』


 いい加減いじめすぎたのか、ふたりから立て続けに口撃を受けたジェイカイザーは黙り込んでしまった。



「ねぇ笠元くん、今どこに向かってるのぉ?」


 文字通りぐぅの音もでず押し黙ったジェイカイザーを無視し、エリィは裕太に問いかけた。

 裕太は指でのタッチ操作で操作盤コンソールに表示された地図をスライドさせ、目的地を画面の中心に写し出す。


寺沢てらさわ山。あそこならこいつが隠せそうな背の高い森があるし、俺も銀川も歩いて帰れるだろ」

「そうだけども……このロボット、隠してどうするのぉ?」

「そうだな……完品のキャリーフレームなら高値で売れるし、査定に出して売っちまおう」

『なにっ!?』


 自身を売ろうと裕太たちの算段に、静かになっていたジェイカイザーも声を上げる。

 そんな抗議の声をスルーしつつ、エリィは自分の携帯電話スマートフォンを取り出し、買取査定サイトで計算を始めた。


「そうねぇ、飛行可能なバーニアに新品同様のコックピット、軽く見積もって1000万円はくだらないわよぉ!」

「決まりだな。その金で今度寿司でも食いに行こうぜ。100円回転寿司」

「ケチねぇ、大金はいるんだから高級店にしなさいよぉ」

『待て待て!! この私を売るなどさせないぞ!』

「こっちはお前のせいで警察に追われそうになったんだ。少しは還元しろよ! ……っと」


 必死に止めようとするジェイカイザーを無視し、裕太は携帯電話スマートフォンをポケットから取り出して時間を確認する。

 その画面には、22時38分と表示されていた。


「あーあ、遅くなっちまったなぁ」

「ごめんねぇ、あたしの問題に巻き込んじゃって……。ありがとう」

「不良に無理やり連れて行かれそうな銀川を見て、見過ごせるわけないだろ。それに、お前から珍しく感謝の言葉が聞けたしボロ儲けだ」

「失礼ねぇ、二度と言ってあげないわよぉ」


 頬を膨らませてプイとそっぽを向くエリィを、裕太はハハハと乾いた笑いで軽く流した。


『……わかったぞ!』

「ん?」


 ふたりの話に入れず放置気味だったジェイカイザーが突然叫んだと思ったら、裕太の携帯電話スマートフォンが一瞬震えたと同時に、何かのデータを受信し始めた。


「ちょっと待て、何か変なアプリが勝手にインストールされてるんだが!?」

『無線通信を使わせてもらった。ふむ、これが今の地球の情報端末か、なかなかの居心地だな!』


 突然、コックピット内のスピーカーからではなく、自分の携帯電話スマートフォンからジェイカイザーの声が響いてきたので、裕太は椅子の上でひっくり返りそうになった。


「ちょっ!? なんでお前の声が携帯から!?」

『フハハハ! この端末は私が掌握した! ふむふむ、君は笠本裕太というのか!』

「勝手に個人情報を見るな! ったく、そんな機能まであるのかこいつは……!」

『このマシーンは私が認証しないと動かないぞ! 動かなければ売ることも出来まい!』


 携帯電話を乗っ取られ、慌てふためく裕太を見てか、エリィは腹を抱えて笑い始める。


「うふふ! 携帯に住みつかれちゃったんだ! 面白いわぁ!」

「笑うなよ、俺は笑えないよ! この携帯、最近買い替えたばっかりなのに!」



    ───Fパートへ続く

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