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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第6話「死闘! 海中決戦」【Gパート 炸裂ジェイアンカー!】

 水中を8の字を描くように動き回り、突進攻撃を繰り返す〈カブロ〉に苦戦する裕太。

 バーニアの推進力で無理やり動くことはできるが、水の抵抗を考慮されていないジェイカイザーの形状はただでさえ部品が旧式故に高くない運動性能を著しく低下させる。

 反撃の糸口が見えないまま、いたずらに疲弊していく裕太に、携帯電話越しにエリィが声をかける。


「笠本くん! 思い出したんだけど〈カブロ〉は旋回能力が低いわよぉ!」

「だからって、どうすりゃいいんだよ!」

『裕太、ジェイアンカーを使え!』

「え? そんな武器お前にあったっけ……?」

『画面だ、画面を見ろ!』


 聞き慣れない武器名にぽかんとしながらジェイカイザーの言うとおりに正面の画面を見ると、右下に「搭乗回数10回記念:ジェイアンカー解放」という小さなポップアップが浮かび上がっていた。


「携帯ゲームのログインボーナスかよ!?」

『早くしろ、裕太!』

「どんな武器かしらねえが、ダメもとだ! 行けぇ!」

『喰らえ、ジェイアンカー!!』


 ジェイカイザーの叫びとともに右手の甲から、Cの字のような形をした有線式アンカーが勢い良く射出された。

 アンカーは後部についたバーニアから海中に気泡の線を噴出し、速度を上げて直進する。

 正面から放たれた攻撃に、〈カブロ〉は機首を上げて直撃を避けようとするが、追うように軌道を変えたアンカーを受け、オレンジ色の装甲を凹ませる。


「……新武器のくせに大して効いてねぇな。ある程度は思った通りに動いてくれるみたいだが」


 ぼやく裕太をよそに、機首を上げた〈カブロ〉はジェイカイザーの真上を通り過ぎ、旋回して再び突進コースへと戻っていく。


『どうする、裕太!? このまま海の藻屑にされるのは嫌だぞ!』

「俺だって嫌だよ! くそっ……水中じゃなければ!」


 みたび突進攻撃を行おうとする〈カブロ〉を前に、裕太は思考を巡らせる。

 必死に考える横でわたわたするジェイカイザーの声を聞き、さきほどジェイアンカーと交わした会話を思い出した。


 ──人間は水の生き物じゃないから、海で身体を動かしてると陸の何倍も疲れるんだよ。

 ──では陸上で遊べばいいのではないか?


「これだ! ジェイカイザー、奴を砂浜にあげてやるぞ!」

『そうか、水中用のマシーンなら、陸ではあまり動けない! ……だが、どうやるのだ?』

「こうするんだよ!」


 裕太は接近する〈カブロ〉に向かって、再びジェイアンカーを射出した。

 放たれたジェイアンカーは〈カブロ〉からは大きく外れ、その下を潜り込むように進んでいく。


『おい、当たらないじゃないか!』

「黙ってろ、ジェイカイザー! ……今だ!」


 裕太はアンカーが〈カブロ〉の真下に来た瞬間に操縦レバーを力強く引っ張った。

 するとアンカーが〈カブロ〉の底を殴り抜けるように真上に進路を変え、その機首を斜め上に押し上げる。

 機首を上に向けられた〈カブロ〉はブレーキも旋回もままならず、トビウオの如く水面へと飛び出した結果、砂浜に先端から突き刺さるように落下した。


 水揚げされ身動きの取れない〈カブロ〉を追って、ジェイカイザーも海面に水柱をあげながらバーニアを吹かせた大ジャンプで海水浴場へと着地する。

 虚しく舵が空をあおぎ、推進用のスクリューを空回りさせる水中用キャリーフレームを見下ろし、裕太はジェイカイザーに警棒を持たせて振りかぶる。


「はい、おしまいっと!」


 淡々と〈カブロ〉の動力部に警棒を突き刺すと、機体全体にスパークが走り小さな爆発を2,3度起こしてグッタリとするように動かなくなった。


『裕太! もっと格好良くとどめを刺せないのか!』

「この状態でどうかっこよく決めればいいんだよ!」



 ※ ※ ※



 動かなくなった〈カブロ〉の中で、内宮は悔しそうに下唇を噛んでコンソールを殴りつける。

 今回は楽に勝てる戦いのはずだった。

 相手の苦手な環境に誘い込み、一方的に攻撃できていたはずなのに。


「……新兵器なんて反則や!」


 キーザには負けてもいいとは言われていたが、やはり負けるというのは悔しいものである。

 内宮は歯ぎしりを鳴らしながら自爆装置のスイッチをグッと押し込みながら、力いっぱい叫んだ。


「……跳躍!」



 ※ ※ ※



『裕太! マシーンから生体反応が消失したぞ!』

「なんだって!?」


 ジェイカイザーの慌てた様子の声を聞き、裕太の脳裏によぎるドラマ撮影の時に襲ってきた〈ドゥワウフ〉の末路。

 消える生体反応、コックピットから聞こえるカウントダウン、そして大爆発。

 大田原は搭乗者が消え自爆する機体群を『グール』と呼び注意を促していた。

 となれば、この〈カブロ〉も数秒後には爆発する可能性が高い。

 浜辺には、まだエリィや照瀬たちが残っているのでこのままほうっておくわけにもいかない。


 裕太は海岸に背を向けたままジェイカイザーに〈カブロ〉の胴体を掴ませ、力の限りレバーを引っ張った。

 無人となった〈カブロ〉の装甲にジェイカイザーの指が食い込んでいき、徐々に持ち上がって砂から離れていく。


「こンのぉぉぉ……ヤロォォォ!」


 叫びながら、身体全体ごと後ろへと逸らしレバーを引っ張りぬく裕太。

 その動きに呼応するように、ジェイカイザーが〈カブロ〉を掴んだまま後方へと倒れ、その勢いで遠くへと巴投げの要領で海へと放り投げた。

 先程戦っていた辺りの沖に水柱が上がり、やがて轟音と共に大爆発が起こった。


「二度も……同じ手を喰らうかよ……!」


 巻き上げられた海水が雨のように降り注ぐ中、逆さになったジェイカイザーのコックピット内で裕太は足と尻を上に向けたまま呟いた。



   ───Hパートへ続く

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