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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第1話「ジェイカイザー起動!」【Dパート パトカーの呼び声】

「では、あそこを飛んでいる無人戦闘機は何だ!」


 そう言いながら、ジェイカイザーはかねてより補足していたヘルヴァニア軍の無人戦闘機を指差しながら裕太たちに問いかけた。

 裕太は額に手のひらを横に立てて遠くを見渡すポーズをし、ジェイカイザーの指差したものを目を細めて確認する。


 黒く塗られた空を、のんびりと浮遊する黒い物体。

 遠すぎてよく見えないが、あの形状とかすかに見える企業のロゴマーク。


 確か2ヶ月くらい前にネットニュースで話題になったものじゃないか、と裕太は思った。


「……あれって、アワゾン通販のドローンだよな?」


 同じようなポーズで浮遊物体を見ているエリィに確認をする。


「ええ。小回りが効いて配達に便利だから、武装を外した戦闘機を使ってるのよぉ」

「深夜に注文しても数時間で届くから便利な時代になったもんだ」


 ジェイカイザーの顔つきが、徐々に無表情となってゆく。

 ドローンが飛行するなんとも言えない音が、静かに響き渡った。


「……本当に、戦争は終わったのか?」


 うんうんと頷きながらまったりと会話をする二人の様子を見て、ジェイカイザーは徐々に自信を失いつつあるようだった。


「開戦から半年で地球側が勝ったのよぉ。今はヘルヴァニア人も、多くがコロニーや地球でのんびり暮らしてるわぁ。あたしなんてぇ戦争の後に生まれた、ヘルヴァニア人と地球人のハーフだしぃ」


「ハーフ……」


 戦争の終わりを確信したジェイカイザーはがっくりと肩を落とし、頭部パーツを俯かせながら力なく呟いた。


 そうこうしているうちに、裕太の耳にパトカーのもののようなサイレン音が届いてきた。


「やばっ、警察が来ちまったか……!」


 いつもならばお巡りさんご苦労様としか感じなかったその音も、目の前に広がる惨状を見るとそう思っていられない。


「ちょうどいいじゃない。この勘違いロボットくんを保護してもらいましょうよぉ」

「バカか! さっきこいつ、バルカンぶっ放した挙句バイクを吹き飛ばしたんだぞ! 俺達が発砲の犯人にされて捕まっちまう!」

「た、たしかにロボットが勝手にやりましたって信じてもらえないかもぉ……」


 途端に冷や汗を垂らし慌てるエリィの様子を見てか、ジェイカイザーは自らのコックピットを指差し、2人に向かって叫んだ。


「捕まって困るのなら私に乗れ! ワープは今は無理だが、空を飛ぶことはできるぞ!」


 裕太は一瞬迷ったが、ここは正門か裏門から出る以外に陸路のない学校の敷地内。

 正門から出ようとすれば、まっすぐここを目指しているであろうパトカーと蜂合うのは目に見えている。

 裏門から走って逃げたとしても、このロボットが警察に向かって何を言い出すかわかったものではない。

 裕太は数秒考えて、この場所から逃げ出すにはこの珍妙で饒舌なロボットに乗る他ないと考えた。


「……しょうがない。銀川、乗るぞ」

「え、ええ」


 2人は、前方へ倒れ階段タラップとなったジェイカイザーのコックピットハッチを登り、ジェイカイザーの操縦席へと入り込んだ。

 裕太はパイロットシートへと腰を下ろし、エリィは座る場所がなかったため仕方なくシート脇の空間に立つ。


「ちょっと……狭いわねぇ……」

「1人用の席なんだから我慢しろよ」


 隣で身をよじらせながら愚痴を言うエリィにそう返しながら、裕太はシートの前に設置されている操作盤コンソールに指を乗せる。

 淡いブルーの光が操作盤コンソールのモニターいっぱいに広がり、起動のためのプロセスを進めるようボタンのようなアイコンが浮かび上がった。

 そのボタンを軽く指でタッチすると、階段タラップになっていたコックピットハッチが持ち上がるように閉じ、コックピットの内側を覆う壁面すべてが外の風景を映し出す。


「……操作系統は少し古めだがよくある国際規格か。これなら俺でも動かせそうだな」

「こんな狭い所で男と女がふたりっきり……なんにも起きないはず無く……うふふっ♥」

「何にも起きねーよ。おいロボット、早く飛んでくれ!」

『ロボットではない、私の名はジェイカイザーだ! それと、すまないがコックピットに人がいる間は私が機体を動かすことが出来ないようだ』

「なんでそんな面倒くさい仕組なんだ……」

『少年よ、そこの操縦レバーを使って私を操縦してくれないか?』


 ジェイカイザーの言葉を聞いて、エリィが心配そうに裕太の顔を覗きこむ。


「できる?」


 裕太は自分の左右にある、トンネル状のカバーに覆われた操縦レバーを握りしめると、指先にピリッとした感触が走った。

 レバーが神経とシンクロするその感覚で、裕太の頭に操縦のイメージが浮かんでいく。


「ガキん頃、母さんに叩き込まれたからな……。バーニアの制御はこれか」


 裕太は左手でレバーを倒し、ペダルを軽く踏み込む。

 するとジェイカイザーの背部に装備されている推進装置バーニアが青い炎を吹き、ジェイカイザーの巨大な身体が宙へと浮かび上がった。


「行くぞ銀川、しっかり掴まってろよ」

「え、ええ!」


 エリィがパイロットシートの端をしっかり握っていることを確認した裕太は、ペダルを力いっぱい踏み込んだ。

 するとその動作に呼応するように、ジェイカイザーはより一層バーニアの炎を大きくし、砂埃を地上に巻き上げながら漆黒の空へと翔び立っていった。



 ※ ※ ※



 ジェイカイザーが飛び去った直後、裕太が聞いていたサイレンを鳴らしていたパトカーが校庭に止まり、運転席の窓から1人の警察官が顔を出す。


「なんだぁ、ありゃあ……?」


 警察官は飛び去るジェイカイザーを見上げながら、ぽかんとした表情のまま、懐から取り出した特濃トマトジュースのストローを口に咥えた。



    ───Eパートへ続く

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