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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第6話「死闘! 海中決戦」【Dパート 海岸の警察官】

 【4】


「つ、疲れた……」


 祐太は砂浜にあぐらをかいたジェイカイザーが作り出す影で涼みながら、レジャーシートに横たわりぐったりとした声で呻いた。


『若者がほんの数時間で疲れるんじゃない!』

「人間は水の生き物じゃないから、海で身体を動かしてると陸の何倍も疲れるんだよ」

『では陸上で遊べばいいのではないか?』

「……お前な、海水浴の意味わかってるか?」


 寝っ転がったままジェイカイザーと珍妙な問答をしていると、両手にひとつずつかき氷を持ったエリィがパタパタと海の家の方から小走りで戻ってきた。

 一秒でも早く届けたかったのか、息を切らせながらパラソルの陰に入ったエリィは前かがみになって呼吸を整え、裕太にかき氷を差し出した。


「お疲れ様ぁ。はい、カキ氷買ってきたわよぉ」

「おっ、サンキュ」


 上半身を起こしてかき氷を受け取った裕太の横に並ぶように腰掛けるエリィ。

 そして裕太の顔を覗き込んで微笑んだあと、かき氷に刺さっているスプーン状のストローを口に運んだ。


「あーおいしぃー! ……ねえ笠元くん。ちっちゃい金海さんは?」

「俺が荷物番代わるから進次郎のところに行かせた。なんでもふたりで沖まで遊びに行くんだと。あうう、頭がキーン……」

「あはは! 急いで食べるからよぉ! ……あら?」


 かき氷の甘く冷たい味に舌鼓を打っていたエリィは、浜辺の向こうから見知った顔の男がふたり並んで歩いてきたことに気づいた。

 男のうちの片方が、片手を上げながら裕太たちに声をかける。


「よう! お前ら!」

「軽部先生! ……と照瀬巡査?」

「妙な組み合わせのコンビねぇ」

「軽部とは昔のバイトの先輩後輩でな」


 警察の制服を裾まくり腕まくりした清涼感ある格好の照瀬と、海パン一丁にアロハシャツ姿の軽部を見比べ、エリィは眉をひそめる。


「どうせ軽部先生はビーチで水着美女との出会いを期待してるんでしょぉ?」

「悪いか! こら! 積極的に動かないと出会えるものも出会えないんだよ!」

「ってことは照瀬巡査も?」

「軽部と一緒にするな! 俺は仕事だ! 連休で混み合ってるこういうところは事件が多いからな」


 照瀬が口を大きく開いて反論し、ジェイカイザーの影に入りながら海水浴客で賑わう海岸を額に手を当てて見渡した。

 確かにその言い分は最もだが、照瀬の来た方向から歩いてくる〈クロドーベル〉を見て、海岸の警備にしては大げさすぎやしないかと裕太は疑念を抱いた。

 やがてジェイカイザーの隣に並ぶように〈クロドーベル〉が停止すると、照瀬は複雑な表情の裕太に気づいたのか〈クロドーベル〉を見上げて口を開く。


「なぜキャリーフレームが必要かという顔をしているな? まあ、抑止力ってやつだ。キャリーフレームを見せておけば下手な犯罪はやろうとは思わんだろう。なぁ、富永?」

「はいであります!」


 元気のいい返事とともにクロドーベルのコックピットから飛び降りた富永は、競泳水着のようなものに身を包んでいた。

 しかもご丁寧に潜水ゴーグルを額につけ、さらに浮き輪まで手に持っている。

 そんな富永の姿を見て、キリキリと目を吊り上げる照瀬。


「富永ぁ! なんだその格好は! お前遊ぶ気満々じゃねぇか!」

「いえ、これは周囲に溶け込む偽装工作であります!」

「適当な嘘を付くんじゃない!」

「嘘じゃないであります! ほら、見てください照瀬さん!」


 そう言いながら富永が指差した先から、5,6人ほどの子供たちの集団が「キャリーフレームだー!」とはしゃぎ声を出しながら〈クロドーベル〉に群がってきた。


「このキャリーフレーム、お姉ちゃんの?」

「そうでありますよ! すごいでありましょう!」

「「すげーすげー!」」


 飛び跳ねながらペタペタと〈クロドーベル〉を触る子供たちに微笑ましい笑顔を送る富永の姿は、警察官というよりは教育番組のお姉さんにも見える。

 そうこうしている内に子供たちのひとりが、あぐらをかいているジェイカイザーに気づいたのか、裕太に話しかけた。


「このキャリーフレーム、なんだかオヤジ臭いね」

「……中の奴がおっさんみたいなやつだからなあ」

『おい裕太、今のは聞き捨てならないぞ!』

「わー! 怒ったー!」


 ジェイカイザーの怒声にサーッと蜘蛛の子を散らすように逃げていく子供たち。

 まだ〈クロドーベル〉にくっついていた子供も、照瀬が怖い顔をして離れるように告げると笑いながら帰っていった。


「何も怒ることないじゃありませんか」

「遊んでばかりいられないんだよ俺達は! 富永、お前もさっさとクロドーベルの中で制服に着替えておけ!」

「あうううう……、酷いであります!」


 渋々といったふうに回れ右し、クロドーベルのコックピットへと消えていく富永。

 照瀬はそんな富永を見て額の汗を手で拭いながらハァ、と大きなため息を吐いた。


「……ったく。で、お前たちはどうしてここに?」

「この間のドラマ撮影の協力のお礼にって井之頭さんから1泊2日の旅行券が届いたのよぉ」

「この海岸近くの旅館に泊まる家族用チケットだったんで、一人暮らし連中で遊びに来たわけですよ」

「ほう、そりゃあ良かったな。……軽部、お前なに落ち込んでんだ?」

「ちくしょう、いい青春してやがるぜ……! 俺が学生の頃は……うおーーー!」


 がっくりと項垂れたまま空気になっていた軽部は、そう叫ぶとビーチのへと突進し、やがて人混みの中に消えて見えなくなった。


「……何がしたいんだ、あいつは?」

「さぁ……?」



   ───Eパートへ続く

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