最終話 「大地に還る」【Bパート リーダー・ハント】
【2】
激しい閃光が後方で巻き起こった。
援護砲撃をしていた〈タウラス級〉の一隻が、緑色の光線を受けて爆炎に包まれる。
ビームシールドを前面に構え艦を守ろうとする〈ジエル〉達も、敵の数の多さに防戦一方を迫られていた。
「クソッ! 何だと言うのだコイツラはッ!」
マリーヴェルは素早く操縦レバーを動かし、振り下ろされた剣をビームセイバーで受け止めた。
そのまま頭部バルカンを浴びせて怯ませ、蹴り飛ばして距離を離す。
同時にビームライフルへと武器を持ち替え、発射。
しかし光弾は緑色に輝く結晶のようなフィールドに阻まれ、敵機の離脱を許してしまう。
祝勝ムードに水を差す勢いで現れた謎の機体群。
先に交わされた通信の中から、このジェイカイザーに似たマシーンが〈エビルカイザー〉という名称であることは分かった。
けれどもその勢力も、目的もわからないまま、部隊が激しい攻撃にさらされ消耗していく。
ただでさえ、メタモスとの一大決戦を終えた直後。
決して軽くない損害を被ったサジタリウス艦隊は、無限かと思うほど溢れてくるこの軍勢に対し、無力に等しかった。
ひとつ、またひとつと味方の機体反応がレーダーから消えていく。
全滅も時間の問題かと思い始めたあたりで、光明が文字通り戦場に現れた。
『うおぉぉぉっ!!』
戦場外から放たれたビームが、敵機のひとつを貫いた。
同時にバーニアを噴射し、こちらへと突撃する派手派手しくも勇ましい機体。
「その機体は……岸辺進次郎くんか?」
「いやいや、笠本裕太ですよ! 確かにさっきまで乗ってなかったですけれど!」
『実は裕太が正パイロットなのだ! 大元帥どの!』
「そうか。この敵たち、名称からして諸君らが関係する機体だと思われるが、どうか?」
「……お恥ずかしながら、おそらくその通りです。あの〈エビルカイザー〉達を仕掛けているのは、十中八九デフラグ・ストレイジという男です」
『やはりか……』
少年の相棒とも思える機体のAIから、意味深な低い声が漏れる。
マリーヴェルは、その意図に触れられるように「デフラグとは?」と尋ねた。
「こいつの……ジェイカイザーの生みの親です。ヘルヴァニアを強く憎んでて、ヘルヴァニアを受け入れた地球を浄化すると考えている……らしいです」
「浄化か。その言葉の意図するところは、この現状を見るに地球への攻撃……あるいはヘルヴァニア人の粛清か。どちらにせよ、この先へと通すのは危険だな」
「ええ。ですが、この数ともなると止められるかどうか……くっ!」
緑色に輝く結晶をまとわせた剣を振り上げた〈エビルカイザー〉が、頭上から襲いかかった。
その剣撃をビームセイバーで受け止めたジェイカイザーが、返す刀で敵の胴体を切り裂く。
胴体に大きな傷を受けた敵機へと、マリーヴェルは冷静にビームライフルを打ち込み、爆散させた。
「倒せなくはないようだが、数で攻められては埒が明かない。何か手はないか?」
「手と言われても……」
「笠本はん、 IDOLAやこいつら!」
Ν-ネメシスの方角から、ビーム・スラスターを噴射した〈エルフィスS〉がジェイカイザーの近くで静止した。
瞬時にビーム・スラスターを射撃モードへ移行させ、こちらを狙う〈エビルカイザー〉を数機、次々と撃ち抜いた。
「あ、ども。大元帥はん、うち内宮千秋いいます~」
「呑気に自己紹介している場合かよ! イドラって何だっけ?」
「もう忘れたんかいな! うちがメビウス社で収集したデータから作られた戦闘用AIや! せやけどな、あのAIは完全自律型やのうて、近くに指揮官代わりとなる人間が必要になるんや!」
「つまり、〈エビルカイザー〉にはそのIDOLAという人工知能が搭載されており、指揮官機を落とせば止まるのか?」
「アッはい。そないな感じです大元帥はん」
「内宮、指揮官機を見分ける方法は?」
「この状況やったら、有人機がイコールで指揮官機や。人間臭い動きする敵機を見つけたら、優先的に攻撃したらええ」
「なるほど……それなら話が早い!」
マリーヴェルは手早くコンソールを操作し、サジタリウス艦隊全機へと繋がる回線を開く。
そして、これまでに無いくらい声を張り上げ、指示を飛ばした。
「全機聞こえるか、敵の大半はAI操縦の無人機である! 機械的に無駄のない動きをするやつは置いて、人間が操縦していると思われる機体を狙え! 苦しい状況だが、連中を一匹たりとも地球へと通すな!」
※ ※ ※
「人間臭い動きってよ、ナイン?」
「ゼロセブン。見分けがつかないなら、片っ端から撃ち落とせばいいだろう」
「あーんっ、もう一回ナナ姉って呼んでよー!」
「断る! 戦いに集中しろ!」
「ちぇーっ!」
マリーヴェルからの通信を聞いたレーナは、シートにエリィのぬくもりが残る〈ブランクエルフィス〉の中で操縦レバーに力を込めた。
正面から仕掛けてくる〈エビルカイザー〉へと、ビームライフルを連射。
同時に放出したガンドローンのビームを照射することでフォトンの防壁を破壊し、本体へと光弾が突き刺さる。
「……見えたぞ! あの奥に陣取っている機体が指揮官機だ!」
「どうしてわかったの?」
「僅かにではあるが、あの機体から恐怖の念を感じた。であるならばっ!」
ナインの〈クイントリア〉がスラスターを咆哮させた。
剣を銃のように構え、フォトン光弾で応戦する〈エビルカイザー〉の間をすり抜け、指揮官機と見定めた機体へと肉薄するナイン。
ビームセイバーで格闘戦に持ち込むも、向こうもフォトンの剣でその攻撃を受け止め、鍔迫り合いが起こる。
その背後からナインを攻撃しようとする〈エビルカイザー〉。
レーナはガンドローンで各敵機へと牽制射撃をし、〈クイントリア〉を狙う敵の注意をこちらへと向かせて援護をする。
当然、レーナの方へと注意が向いた敵機から激しい光弾の応酬が飛来するも、巧みにバーニアを噴射し最小限の動きで回避をしていく。
多数の敵から一斉に狙われることなど、普段の宇宙海賊業で慣れている。
「捉えた、沈めッ!」
通信越しの勇ましい妹の声が発せられると同時に、ナインが張り付いていた〈エビルカイザー〉の上半身が爆炎に飲み込まれた。
そして指揮官機を失ったことで、その周囲の敵機が次々と動きを鈍らせ、糸の切れた人形のように宇宙空間に静止する。
「本当に止まっちゃった」
「なるほど、全機を相手にするよりは遥かに楽だな!」
次の獲物を探すように、激戦区へ飛び込むナイン。
レーナはその妹の背中を追うように、ペダルに乗せた足に力を込めた。
───Cパートへ続く




