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第48話「光を動かすもの」【Cパート 歩み寄る『絶望』】

 【3】


 裕太は、〈エルフィスMk-Ⅱ(マークツー)〉のコックピットの中で息を呑んでいた。

 今まで友人として一緒に過ごし、助け合い、共に冒険していた一人の少女。

 その本気の戦いぶりに、驚愕をし続けるしかできなかった。


「あれが、金海さんの本気……」

「あたしたちがあんなに苦労したメタモスを……」

「あんな簡単にいなしてまうんやなぁ……」


 通信越しに聞こえる、エリィと内宮の呟き。

 彼女たちも、サツキの戦闘能力に戦慄しているのであろう。


 思えばこの作戦は、サツキを取り戻すことで状況が好転するというマザーの言葉を信じて行ったことである。

 それがよもや、このような形で宇宙怪獣めいたメタモス相手に無双する少女を見ることになるとは、露とも思っていなかった。


「……少年少女、聞こえるか?」


 不意に入ってきた通信。

 コンソールに写ったマリーヴェル大元帥の顔を見て、裕太はポカンとしていた表情を気持ち引き締めて対応する。


「聞こえてます、大元帥」

「フ……まさかこのような形で逆転できるとはな。思ってもみなかった」

「そうですね……」

「だが、少女ひとりに任せて傍観していたのではアーミィの名折れだ。そちらも、このままあの子一人に任せきりにするきはあるまい?」


 大元帥の問いに、大きな頷きで返す裕太。

 確かに、人智を超えた力で戦うサツキは頼もしい。

 しかし、そうであってもあの子の内面はか弱い少女そのものなのだ。

 一人で戦うことに不安を感じているかもしれない。

 助けを求めているかもしれない。

 だからこそ裕太は、可能な限りサツキと共に戦うことにためらいはなかった。

 その心はエリィと内宮も変わらないらしく、後に続いて首を縦に振る。


 3人の意志を汲み取った大元帥はサムズアップを返し、通信を全体域にしてから声を張り上げた。


「この場にいる全隊員に告ぐ! この隙に一度、それぞれの母艦へと帰投せよ! 母艦がすでに戦線を離れている場合は、最寄りの艦へと帰投。補給、修理を手早く済ませ再出撃せよ!」

「だ、だ……大元帥閣下!!」

「何事だ!!」


 マリーヴェルの通達を遮るように入った通信。

 その声の震えからただ事ではないと感じ取ったのか、強い語気で大元帥が問いかける。


「て、敵メタモスの一団が外縁部にて集結! 融合しているのか人型となり巨大化を繰り返しています!!」

「巨大化だと? まとが大きくなってくれて結構。現在の敵メタモスの全長、大雑把で良いので報告しろ!」

「融合メタモスの全長、1000……5000……1万……まだ巨大化しています!!」

「1万メートルを超えただと!? 奴らめ、デカければいいなどと思って──」

「巨大化止まりました!! その全長約……い、1万5000……キロメートルですっ!!!!」

「なっ!!?」


 報告とともに送られる映像。

 そこには確かに、遥か遠くの空間に浮かぶ巨大な金色の巨人が映し出されていた。

 胴体や関節などは立方体や8面体などのシンプルな立体で構成されているが、報告を聞く限りはその一つひとつの時点でスペースコロニーを超える巨大さであろう。


「き、キロメートルだとっ!? バカなッ!! 地球の直径を超えているではないか!!」

「敵超巨大メタモス、移動を開始しました! 目標は……こちらではありません! 敵の進路は……地球です!!」


 彼方に見える巨人が、距離を詰めるに連れ僅かではあるが少しずつ大きくなっていく。

 地球をも超える大きさの怪物を前にし、これまであらゆる困難にも勇敢に立ち向かっていた裕太たちでさえも、頭を抱え言葉を失うしかなかった。



 ※ ※ ※



『地球を超える体躯の巨人だと!? ええい、ダブルフォトンランチャーを使えば……!』

『無駄ですね。計算してみましたが最大出力で直撃させたとしても、敵の外装を数キロメートルほどくぼませることしかできませんね』

「じゃ、じゃあどうすればいいの!? ねえ、進次郎さま!?」

「わからない……。サツキちゃん、何か策があるのか……?」


 一歩一歩、まるで宇宙空間に虚空の大地が存在するように歩き、近づいてくるメタモスの巨人。

 その動きはまるでスーパースローカメラで捉えた映像のごとく鈍重で、非常にゆっくりとしたものである。

 しかし、その巨体を鑑みればそれでも速すぎるくらいであろう。

 なにせ、地球を超える大きさの怪物である。

 その細長く伸ばされた8面体で形作られた足先が、いったい時速どれほどで空間を払っているかなど、考えたくもなかった。


「……進次郎さん!」

「サツキちゃん!?」


 突然聞こえてきた愛する少女の声。

 いつの間にか、サツキが何のためかは不明だが、ハイパージェイカイザーの前へと戻ってきていたのだ。

 彼女の、未だ絶望を知らない逞しい表情は、今の進次郎にとって救いであった。


「サツキちゃん、どうするんだ!? 地球以上の大きさの巨人だって!?」

「安心してください! 相手が大きいのであれば、私も大きくなれば良いんです!」

「サツキちゃんが大きく? それってどういう……?」


 進次郎の問いに答えが帰ってくる前に、サツキは飛翔した。

 急いでコンソールに映ったサツキをカメラで追いかけ、彼女の動向に注目する。


「進次郎さま、あの子……何って?」

「わからない。けれど、大きくなればいいって」

「まさか……?」


 進次郎達はただ、サツキを見守ることしかできなかった。

 彼女を信じることしか、できなかったのだ。




    ───Dパートへ続く

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