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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第5話「裕太 VS エリィ」【Fパート 愛する者との戦い】

「……こ、これは!?」


 その様子を見た崎口が口をあんぐりと開けて驚き固まる。

 大田原は懐から取り出した特濃トマトジュースにストローを刺しながらハハハと笑う。


「今警察で研究している転送システムですよ。驚いたでしょう?」


 大田原のあからさまな嘘を信じたか信じてないか、崎口は「すごいですね」と月並みな相槌を打った。

 一方、火の付いてないタバコを咥えながらくつろいでいた照瀬は、横で訓馬が目を見開いてジェイカイザーを凝視していることに気づいた。


「これは、まさか兄上の……?」

「どうかしましたか、訓馬さん?」

「ああ、いや。亡き兄上が好きそうなデザインのキャリーフレームだと思いましてな」


 慌てて取り繕う訓馬の様子に、照瀬は怪しいなと思いつつ目を細めた。

 しかし、横から無邪気に富永が訓馬に質問を投げかけた。


「兄上さんはキャリーフレームが大好きだったでありますか?」

「ええ。私も兄上も大好きですよ。好きでなければ、このような仕事は務まりませんからな、ハハハ……」


 富永に作り笑いを浮かべる訓馬を、照瀬は流し目で睨みつけた。



 ※ ※ ※



『私のほうが優秀であるということを証明するぞ、裕太!』

「銀川ーやめるなら今のうちだぞー」


 ジェイカイザーに乗った裕太から、携帯電話越しに最終通告が来たが、エリィは「冗談!」と一蹴する。

 せっかくの腕試しのチャンスをそんな言葉で諦めていたら、この先やっていけないだろう。


「ねぇっ笠本くん! これで負けた方は一つ勝った方のお願いをなんでも聞くってどーお?」

「……いいだろう。後で無かったは無しだぞ! 銀川!」



 ※ ※ ※



 今にも戦いが始まりそうな2機を見て、沸き立つ休憩スペースの大田原達。

 特濃ジュースをズゾゾと音を立てて飲みながら、大田原がメモ紙とペンを懐から取り出した。


「さあて、どっちに賭ける?」

「そりゃあジェイカイザーでしょう」と照瀬。

「いえ、うちの〈ヴェクター〉が勝ちますよ」と崎口が言ったところで、富永が頬を膨らませて大田原のメモ紙を取り上げた。 

「不謹慎ではありませんか! 賭け事は禁止でありますよ!」

「冗談が通じねえなあ……」

 大田原は富永からメモ紙を取り返し、渋々と懐へと仕舞い入れた。



 ※ ※ ※



『行け、裕太!』

「おう!」


 裕太はジェイカイザーを〈ヴェクター〉へと接近させ、武器を持たないまま数発のパンチを放った。

 しかし、エリィの操縦する〈ヴェクター〉は最低限の動作でそのパンチをひょいひょいとかわしていく。


「おいおい……銀川の操縦でこのスピードかよ!?」

「お返しよぉ!」


 カウンターとばかりに放たれた〈ヴェクター〉の回し蹴りをジェイカイザーはとっさに両腕をクロスさせガードするが、受けきれずに後ろへと後ずさる。


『裕太、押されているぞ!』

「わかっている! こうなりゃ本気で行くぞ!」


 裕太がそう言い、ジェイカイザーの脚から警棒を取り出そうとする。

 しかし、その隙をついてエリィは〈ヴェクター〉の腰部に仕舞った鉄製の棒を抜き、ジェイカイザーの警棒を握られる前に弾き飛ばした。


「……っ!」

「もらったわぁ!」


 エリィの叫びとともに、棒を振り上げジェイカイザーに飛びかかる〈ヴェクター〉。


「舐めるなぁっ!」


 裕太はとっさにジェイカイザーの左腕を斜めに突き出し、振り下ろされる棒の動きをガードしつつ逸らす。

 そして勢いのまま斜め横にすれ違う〈ヴェクター〉の片腕を掴み、そのまま体重をかけて一瞬で組み伏せた。

 床に倒されうつ伏せの格好で押さえつけられた〈ヴェクター〉は必死にもがくものの、重量を使って動きを封じるジェイカイザーから抜け出すことはできなかった。


「ギブ、ギブアップ! 笠本くん、あたしの負けよぉ!」


 エリィの必死の敗北宣言を聞いて、裕太はふぅとため息をついて〈ヴェクター〉を引っ張るようにして立ち上がらせた。



 ※ ※ ※



『これで、私のほうが優秀だと証明できたな裕太!』


 休憩室に戻ってジュースを飲むふたりをよそに、ジェイカイザーが携帯電話の中から得意げに声を張り上げた。


「パワーでは負けてたけどな」

『スペックで負けていても、勝てば良かろうなのだ!』

「ほんと、ジェイカイザーはポジティブねぇ」

「銀川も、あんだけ動かせるなんて大したもんだ」


 裕太に褒められ、思わず頬を赤らめて照れるエリィ。


「え、えへへ。そーお? ありがとう!」


 エリィは笑顔で喜びながらも内心、ホッとしていた。

 裕太に戦いを仕掛けたのは何もヤケになったわけではない。

 裕太が困ったときに自分が力になれるかどうか試したかったのだ。

 今は〈ヴェクター〉のシステムに頼って互角くらいだが、そのうちシステムに頼らなくても裕太を助けられるように頑張ろう。

 エリィは心の内でそう強く決意を抱いた。


 自慢の〈ヴェクター〉が負けて、やや悔しそうな顔をしている崎口の肩を大田原がポンと叩いた。


「崎口さん、俺はこの〈ヴェクター〉に危険性と可能性を感じたよ」

「……といいますと?」


 崎口に問いかけられ、大田原は窓越しに〈ヴェクター〉を見上げながら。


「操縦が初めての嬢ちゃんであれだけの動きができた。これは素晴らしいことだ。なにせキャリーフレームの操縦に必要な訓練が減らせるからな。即戦力を作りやすいのは警察にとってかなりプラスだ」

「それが可能性ですか。では危険性とは?」

「確かにソフトウェアの進化によって操縦が簡単になり、素人でも動かせるっていうのは素晴らしいことだ。だが、キャリーフレームっていうのは人間と違って巨大な物体だ。腕を振り回そうとして家屋にぶつけちまうかもしれないし、バランスを取ろうとして車を蹴飛ばしちまうかもしれない。そういった事故を防ぐような安全面の部分でも、調整が必要なんじゃねえかなと思うぜ俺は」

「安全面ですか……」


 そう言いながら、崎口は大田原と同じように〈ヴェクター〉を静かに見上げた。



    ───Gパートへ続く

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