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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第5話「裕太 VS エリィ」【Dパート 波乱の新型ロボテスト】

 10分ほど操縦して、裕太は〈ヴェクター〉から降りて休憩スペースの扉を開いた。


「俺は終わりました。次、富永さんどうぞ」

「はいであります!」


 裕太に言われて富永が休憩スペースを出ていくと同時に、エリィはあらかじめ紙コップに入れていたジュースを裕太に手渡した。


「お疲れ様ぁ」

「お、サンキュ」


 裕太はジュースを一気に飲み干し、紙コップをテーブルに置いて一息ついた。

 不満げな表情をする裕太に大田原がニヤつきながら「どうだったか?」と聞くと、ため息をつきながら。


「何だか……気持ち悪かったですね」

「おや? 慣性制御システムが故障していましたか?」

「崎口さん、別に乗り物酔いしたわけじゃありません……銀川、エチケット袋はいらんいらん。なんというか、反応が良すぎるというか。……機体に心を読まれているような感じがしたというか」


 裕太がたどたどしく感想を言い終わると、休憩スペースの端に座っていた訓馬がハハハと笑いながら立ち上がった。


「それこそが、弊社へいしゃの開発した新型ソフトウェアの効果なのですよ」


 自信たっぷりな訓馬の発言に裕太が首を傾げながら「と言いますと?」と返すと、それまでコンピューターの画面に向かっていた崎口が手を止めて立ち上がり、訓馬の代わりに口を開いた。


「皆さんは、キャリーフレームの操縦が、どのようにして行われているかご存知ですか?」


 学校の先生が生徒に質問するように崎口が問いかけると、エリィもまた授業中のような態度で手を上げ、発言した。


「えっと、指先の神経系から操縦レバーを通してパイロットの思考を読み取って、その思考と手足の動きからOSが動作を決定してキャリーフレームに反映させるんですよねぇ」

「その通りです。キャリーフレームはパイロットが歩くことを考えながらペダルを踏むと歩き、走ることを考えながらペダルを踏めば速く走ります」

「弊社のソフトウェアは思考の更に先にある無意識を解析することで、パイロットが操作をする前に初期動作に入ることができるのです」


 訓馬がそう言うと、説明を聞きながら考え込んでいた大田原が納得したように頷く。


「なるほど、人間の『考えるより先に体が動く』を利用したわけか」


 大田原の回答に訓馬が大きく頷くと、ドタドタと騒がしい足音を立てながら興奮した様子で富永が休憩スペースに戻って叫んだ。


「新型の操縦感すごいですよ照瀬さん! 照瀬さんも操縦してみてください!」

「富永、騒ぎすぎだ! 多少操縦性が違うからってそんなに変わるはずが……」



 ※ ※ ※



「本当にすごいな!」

「手のひらを返すのが早すぎませんか!?」


 態度を180度変えて戻ってきた照瀬に、裕太が思わずツッコミを入れる。

 一方、崎口は休憩スペースのプリンターから吐き出された書類に目を通し、うんうんとひとりで頷き立ち上がった。


「これで現役パイロットが全員試乗しましたね。そうだ、大田原さんもいかがです? 確かあなたも昔はパイロットだったと聞いていますよ?」

「そうしたいのは山々だが、この歳になるとなぁ……」


 そう言いながら渋い顔をする大田原をからかうように肘で小突く。


「大田原さん、腰にくるとか言うんじゃないですよね?」

「いや、揺れでたんぶちまけてコックピットが地獄絵図になる」

「汚いし、それ歳関係なくなぁい!?」

「ハハハ。そうだ嬢ちゃん、お前がやってみたらどうだ?」

「え、あたしぃ!? あたし、2脚バイクの免許くらいしか持ってないわよぉ!」


 思いがけず急に大田原に話を振られ、エリィは手をバタバタとさせてうろたえる。

 確かにエリィは大好きなキャリーフレームに一度は乗ってみたいと思っていた。

 しかし、免許の取得にかかる費用や手間の問題があって未だに取得できないでいたのだった。

 エリィの発言を聞いてか、壁に寄りかかってくつろいでいた照瀬が口を開く。


「公道で動かさない限りは免許は不要だぞ」

「えっ、照瀬さんそれ本当?」

「……ですよね、隊長」

「免許ってのは公道とか外で動かすための許可証だからな。ここだったら私有地扱いでセーフになるだろうぜ。ゲホゲホッ……。な、良いだろ崎口さんよ」


 大田原がそう尋ねると、崎口は手に持った書類をクリアファイルに入れながらいい笑顔で頷いた。


「不慣れな方が操縦するというのも良いデータが取れそうですし、構いませんよ」



    ───Eパートへ続く

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