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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第5話「裕太 VS エリィ」【Bパート ときめき工場見学】

 【3】


「よし、ここだここ」


 裕太が門につけられたプレートを指差しながら門を通る。

 プレートに視線を向けると、『江草えぐさ重工』と読みにくい達筆の字体で刻まれていた。


 ──江草えぐさ重工。

 たしか6年ほど前にキャリーフレーム業界に参入した企業であり、目立った傑作機は未だ無いものの堅実な設計の機体が徐々に評価を高めつつある……ということくらいしかエリィも知らない。

 一応、〈アストロ〉という江草重工製の汎用キャリーフレームを東目芽ひがしめが高校のキャリーフレーム部が使っているのだが。

 エリィは工場見学でもするのかなと思いつつ裕太の後を歩いていると、ひときわ大きい建物の前に見知った顔を見つけた。


「よぉ坊主と嬢ちゃん。久しぶりだな」


 大田原・照瀬・富永といういつもの警察三人組が、待っていて暇を持て余していたという風な体勢からピシッと姿勢を正した。

 思いもよらない警察組との合流にエリィは首を傾げつつ。


「大田原さんたちはどうしてここにぃ?」

「そいつはな……」

「それは、今日集まった目的が次期警察用キャリーフレームの開発機試乗だからであります!」

「えっ、それって未発表の新型フレームが見られるってこと!?」


 大田原の発言を遮るように放たれた富永の発言を聞き、途端に目を輝かせるエリィ。

 照瀬が「そういうことになるな」と相槌を打つとエリィはピョンピョン飛び跳ねて喜びだした。


「笠元くん、そうならそうと最初から言ってくれればよかったのにぃ!」

「そう言われても、こういう場合は行き先を伏せておけってジェイカイザーがだな……」

『私が遊んだ恋愛ゲームではこれで成功したのだが』

「……もうお前のアドバイスには頼らねえ」


 ジェイカイザーの必死の言い訳に、裕太は頭を抱えて大きくため息を吐いた。


『ま、まあエリィ殿が喜んでいるので良いではないか! それはそうと裕太、現行の警察のマシーンはたしか七菱製ではなかったか?』


 唐突に話を切り変えたジェイカイザーの質問に、エリィはやれやれといったポーズをとってから人差し指を上に向けて説明をした。


「今が七菱だからってずっとその会社が独占するわけじゃないのよぉ。昨今のキャリーフレーム産業はメーカー毎に操縦性が変わらないようにって、コックピット構造は社を問わず、国際規格に統一されているの。だから純粋なスペック目当てで他社の機体に乗り換えっていうのも今じゃ当たり前なのよぉ」

「つまり、もしもこの江草えぐさ重工の機体が良ければ、警察は七菱から乗り換えってわけだ」


 照瀬がそう言いながらタバコの箱を懐から取り出すと、富永がムッとした表情でその手を掴んで止めた。


「……少しくらいいいじゃないか」

「良くないであります! 敷地内禁煙であります!」


 渋々タバコの箱を仕舞う照瀬を一瞥いちべつし、富永は説明の続きをする。


「現行のクロドーベルは我々の代多よた署のようにキャリーフレームによる開発が盛んな地域にしか配備されてないであります。けれど近い将来、全国の警察署に警察用のフレームが配備されるようになるのであります!」

「そん時に覇権を握っていた企業は大量発注でウハウハってわけだ……ゲホゲホッ」

『まさか、これから乗る新型のキャリーフレームが良かったら私を捨てて乗り換えるつもりか、裕太!?』


 一連の説明を聞いて、ジェイカイザーが深刻そうに訴える。


「んなわけあるか! 新型のキャリーフレーム買う金がどこにあるんだよ!」

『金があったら乗り捨てるというのか!?』

「あら怖いわぁ! あたしもいつか乗り換えられちゃうのかしらぁ♥」

「…張り倒すぞお前ら」

「いやん♥」


 裕太とエリィが夫婦漫才をしていると、不意に建物の自動ドアが開き眼鏡を掛けた細身の男が姿を表した。


「みなさん、遠いところからよく来てくださいました」

「崎口さん、お久しぶりです」


 丁寧に頭を下げて挨拶をする男──崎口に裕太が軽い会釈〈えしゃく〉をすると、崎口は少し驚いたような表情で裕太の顔を見つめる。


「君は笠元さんところの! 大田原警部補が連れてくる有望な若者って君でしたか」


「まあそうですね」と照れ隠しをする裕太を見て、エリィは呆気にとられるように口をぽかんと開けた。


「笠本くんって顔が広いのねぇ」

「……大抵は親のつながりだよ」


 エリィは裕太と仲がいいが、互いについては実はあまりよく知らなかった。

 裕太がエリィの親類を誰ひとりとして知らないように、エリィもまた裕太の親類関係を全く知らないのである。

 いつか裕太に秘密を全て明かし、共有したいと思っているエリィであるが、まだ勇気が湧かずに踏み込めないでいる。

 裕太の家族関係に少し触れられただけでも来た甲斐はあったかも、とエリィは心の中で小さくガッツポーズをした。

 裕太と談笑していた崎口がエリィの姿に気づき、不思議そうな顔で裕太に問いかけた。


「そのもテストパイロット候補の?」

「いや、俺の……その、ツレだ。キャリーフレーム好きなんだ」

「ははあ、なるほどなるほど……!」


 何かを察したように口元をニヤつかせる崎口の仕草に、エリィは気恥ずかしくなって思わず顔を赤らめた。




    ───Cパートへ続く

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