表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
299/398

第39話「男たちの決意」【Fパート 喰らいつく牙】

【5】


「相手が普通の武装だけなのが幸いだな」

『ああ、ガンドローンなどを出されたらたまったものでは……あっ!』


 まるで会話に応えるかのように、裕太の目の前で1機の〈ザンドール〉が背部からガンドローンを放出した。

 宙に浮き上がった4つの小型ビーム砲が、素早くその銃口をこちらへと向ける。


 やられる! と思った瞬間、上空から飛来した弾丸がガンドローンをすべて撃ち落とした。

 裕太を援護した攻撃の射線を追うように上空を見上げると、そこには緑色の装甲が眩しい〈ヘリオン〉の姿が陽の光を反射する姿。


「オッサン!?」

「助太刀するぜぇ、ガキンチョ! さっさとこいつら締め上げて白状させねえといけねからな!」


 上空から打ち込まれるレールガンの巨大な弾頭が、ジェイカイザーと1機の〈ザンドール〉を離すようにうちこまれ、そこにキャリーフレーム形態へと変形した〈ヘリオン〉が着地する。

 裕太とカーティスが背中合わせになり、それぞれ1機ずつ敵を正面に捉える格好となった。


「さっきの発言、どういうことだ?」

「話は後だ。とりあえず黙らせっぞ! そろそろ撃たれた傷が痛くてかなわんぜ」

「同感、こっちも足がそろそろ我慢の限界だ。だが、1対1になればこっちのもんだ!!」


 裕太は叫ぶと同時にビームセイバーを抜き、痛む足でペダルに力を込め距離を詰める。

 敵の〈ザンドール〉は距離を維持するように後方へと下がりつつガンドローンを放出、ビームの雨をジェイカイザーに向かって放射する。

 しかしガンドローンの対処など、今の裕太では朝飯前。

 的確に飛来する光弾をガンドローンへ打ち返し、1機ずつ自らのビームで自壊させる。


 裕太の腕前に驚いたのか、ガンドローンの放出をやめビームライフルによる射撃に切り替える敵機。

 足を止め射撃する〈ザンドール〉を前に、前進を止めること無く、打ち込まれるビームをビームシールドで受け止める。


 ガンドローンにビーム兵器、並のパイロットならば苦戦する相手であろうが、裕太は数日前に完全上位互換の相手を、今より貧弱な機体で倒したばかりである。


「お前は……レーナよりも格段に弱いッ!」


 ExG能力は、言ってしまえば超人的な反射神経に他ならない。

 しかし並のパイロットであれば、反応は出来ても対応が間に合わないはず。

 ここまでの戦いで、裕太には相手の技量が見えていた。


 接近戦にとビームアックスを取り出した〈ザンドール〉が構える前に、足元を狙うようにビームセイバーを回転させつつ投擲。

 回避しようと敵機が上方へ飛び退いた瞬間、電磁警棒を構えたジェイカイザーが大地を蹴る。


「間に合せの回避で飛び退いた速度が、分かっていたとしてもこっちの全力に……かなうわけねぇだろ!!」


 咄嗟の飛び退きと、明確な前進を伴った跳躍。

 その速度の差は火を見るよりも明らかであり、行動の裏に秘めた意志の差がそのまま結果へと繋がる。

 ジェイカイザーの手が〈ザンドール〉の肩部へと食い込み、振り上げた電磁警棒が真っ直ぐに急所へと食らいつく。

 あらゆる機械類をその放出される電気エネルギーによって食いちぎる鎮圧の牙が、暴徒へと突き刺さった瞬間。

 全身から火花を散らせ、配線を焦がしながら痙攣する〈ザンドール〉に、もはや反撃の猶予は残されていなかった。


 ズゥン、と鈍く低い音を立てて崩れ落ちる敵。

 ジェイカイザーの手に握られた電磁警棒がシュピンと指先で回転し、元あった収容部へと収められる。

 少年の、勝利であった。



 ※ ※ ※



 カーティス前方の〈ザンドール〉が、こちらを遠距離砲撃機と見越してかビームアックスを抜き接近する。

 近接戦の距離に至る前に、カーティスはミサイルランチャーから弾頭を発射。

 向かい来る火の粉を払うように、ミサイルの信管を的確に切り離しつつ接近する〈ザンドール〉。


 カーティスはニヤリと後端を上げながらサングラスを装着し、もう一度ミサイルの雨を敵へと放つ。

 先ほどと同様に正確な斬撃がミサイル群を切り裂くも、同時に弾頭が炸裂。

 眩い閃光がほとばしり、周囲を激しい光で白に染め上げた。

 肉眼で感知することのできる視界がすべて単色で潰れ、キャリーフレームのメインセンサーが許容を超えた光量にノイズを走らせる。


「へっ! てめぇら能力者っていっても、ただ目がいいだけに過ぎねえ! だったら、こうやって閃光弾で何も見えなくなれば、反応も何もできねえってわけだ! だがよ……」


 コックピット外面に映る白塗りの風景には目もくれず、レーダーに映る光点だけを頼りに大型レールガンの射角を調整する。

 信ずるものは己の感覚と経験、そして頼るものは内から湧き出るわずかな勘と大いなる確信。


「こちとら、方向さえあってりゃ実質無限長の射程だ! くたばりやがれぇっ!!」


 操縦レバーのトリガーがカチリと音を立てると同時に、レールガンに空色の稲妻が走り、帯電した巨大な鉄塊が撃ち出される。

 光の霧を突き破り、相手の奪われた視覚の外から飛来したその驚異をかわす手立てはもはやなく、重厚な金属同士がぶつかり合う鈍く低い音を周囲に伝搬する。

 数秒の後に、大地が振動。

 白の暗幕が払われた後に残っていたのは、雄々しく立ち続ける〈ヘリオン〉と、地に背をつけて敗北を晒す〈ザンドール〉だった。



    ───Gパートへ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ