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第38話「束の間の安息」【Fパート 震える戦場】

 【7】


「寺原、横溝は後方から援護。敵中衛を足止めしたれ!」

「「了解!」」

「平石は回り込んで敵後衛を黙らせや!」

「おう!」


 内宮の鋭い指示が飛び、命令を受けたチームメイトが各々の役割に向けて動き出す。

 裕太たち前衛の仕事は、敵前衛・レーナを大局が制するまで抑えることだ。

 障害物として配置されている巨岩を盾に、相手の出方を伺う。


「いくら〈ブランクエルフィス〉を持ち込んだからって、まさか……」

「か、笠本はん! 上や!」

「なっ!?」


 頭上から照射されたビームが、裕太の足元の岩盤に赤い線を描く。

 立て続けに様々な方向から乱れ飛ぶ光線。

 咄嗟に後方に下がりながらその攻撃を回避していく。


「こらぁ、レーナァ! ガンドローンを使うなんて卑怯だぞ!」

「あら50点。ルールにはそんなこと書いてなかったわよ?」

「ふつう、ガンドローンの維持費は馬鹿にならねえから、企業からそれを使える機体は出し渋られるんだよ!!」


 裕太は素早くレバーを倒し〈アストロⅡ〉にビームセイバーを握らせ光の剣を振るう。

 その刃は的確にガンドローンから放射される光弾を捉え、打ち返し、2機のガンドローンを返り討ちにする。


「へぇ、やるじゃない」

「対策用にシミュレーターで死ぬほどガンドローン対策は練習したからな」

「でも、あなたのお供はそうは行かないわよね?」


「「「ぐわあっ!!?」」」


 通信越しに響く仲間の悲鳴。

 それは裕太たちの後方で援護していた機体がビームに貫かれたことを意味していた。


「お前なー! これじゃあ練習試合にならねーじゃねえか!」

「わたしに言い渡されたのはひとつ、“東目芽高校をぶっつぶせ”だけよ。こっちの顧問、よっぽどそっちに恨みあるみたい。さあて、残りは千秋と50点だけ。葵、常磐ときわ、あいつに一斉攻撃──」

「そうは問屋がおろさへんでぇぇぇ!!」


 レーナの〈ブランクエルフィス〉の後方で、爆炎が登る。

 レーダーの反応を見る限り、いつの間にか敵中枢に飛び込んだ内宮が、一瞬で敵機体を3機落としたらしい。

 背後の事象を機敏に感じ取ったガンドローンが、一斉に内宮の元へと飛んでいく。


「千秋ぃぃぃっ!!」

「取ったでぇ!!」


 内宮の〈アストロⅡ〉が、ビームセイバーを最後に残った敵の砲撃機へと突き刺しながらビームを浴び、爆散する。

 後には時間停止膜クロノス・フィールドに守られた球体のコックピットだけが、ゴロンと転がっていた。


「へぇ……面白いじゃない。これで1対1よ、イーブンってところね」

「そっちは乗り慣れた軍用機、こっちは競技用の機体……。何がイーブンなもんかよ!」



 ※ ※ ※



「あーあー……メチャクチャよぉ」


 観客席から眼前に広がる、およそ競技とはかけ離れた悲惨な戦場にエリィは思わず額を抑えた。

 周辺に座る知り合いたちは普段は見られない激しすぎる戦闘模様にワァァと歓声を上げている。


「エリィさん、状況はどう?」

「あら、楓さん。状況も何も、相手側がガチ軍用機出しちゃって……ご覧のありさまよぉ」


 隣の空席に座った軽部先生の恋人、楓に双眼鏡を手渡す。

 彼女がふむふむと言いながら戦場を眺めていると反対側の席にロゼと、その隣にカーティスが腰を下ろした。


「ひでぇもんだな。生き残りはガキンチョだけか」

「けれど、裕太くんだったら大丈夫だと思います」

「そういえば、笠本くんったらもしかしたらこれが初めてのレーナとの戦いじゃないかしらぁ」

「先は読めねえってことか。俺はガキンチョに賭けるぜ」

「素直に応援しなさいよぉ、もうっ!」


 呆れながら、ペットボトルの中のジュースを喉に通す。

 遠目に裕太とレーナの機体が、それぞれ間合いを保ちながら睨み合っていた。


「動いたっ!」

「えっ! 楓さん貸してっ!」


 半ば奪い取るように双眼鏡を取り返し、覗き込むエリィ。

 それはちょうど、裕太の搭乗する〈アストロⅡ〉がハンドレールガンを手に持ったところだった。




    ───Gパートへ続く

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