第36話「刻まれたゼロナイン」【Gパート 共鳴】
【7】
「だからね、そのとき進次郎さまが言ってくれたの。“君のような美しい娘を、放っておける訳ないだろう”って!」
「言ってない……僕そんなこと言ってないよ……」
「レーナって、面白いね」
「せやな、ハハハ……」
食堂で昼食を取りながら、内宮はレーナたちの談笑をのんびりと眺めていた。
バァンと、唐突に大きな音を立てて扉が開く。
一斉に扉の方へと視線が集まる。そこに立っていたのは、エリィともうひとり。
制服を着た見知らぬ女の子だった。
「よう、隣いいか?」
「あ、べつにええけど……あんさん、誰や?」
「内宮、俺だよ俺……」
「オレオレ詐欺?」
「違う違う、説明は面倒だけど……裕太だよ」
「えーーーーっ!!?」
※ ※ ※
「はえ~~~声や格好だけやと思ったけど、ホンマに女の子になっとる」
「胸を揉むな胸を。やたらとスースーして、ただでさえ気味が悪いんだ」
「スースーどころか……笠本はんの大事なところも無くなっとるで?」
「スカートをめくってどこ見てんだよどこを! って、それ俺大丈夫なのか……!?」
「大丈夫です! 部分的な空間圧縮を織り交ぜた水金族流の変装術ですから、消えてるように見える部分は空間ごと縮めてるだけです!」
「金海さんは身体から喋るのやめてくれ~~」
内宮に身体をまさぐられながら、嘆きの声を上げる裕太。
ナインは裕太の姿に驚きこそすれ、拒絶するような反応は見られないから当初の目的は達成できている。
が、こんどは身内に次々とおもちゃにされるという問題が発生していた。
「50点……って言えないわねえ。顔が可愛すぎて文句が言えない……90点ね」
『私としても最高だと思います』
「そうだな。天才の僕としても、中身が裕太じゃないと知らなければアプローチしたくなる」
『まさに美少女といった感じだな。皮モノTSFみたいなシチュエーション……憧れるぞ!』
「ちなみに、顔の部分だけは裕太さんの素顔そのままですよ!」
「笠本くんってば、もとから顔はかわいかったからねぇ」
「えーい、どいつもこいつも! 俺の男としてのアイデンティティをないがしろにしやがって~~!!」
キーーーーーーーーーン!!!
突如、耳の奥をえぐるような高音が脳の奥に突き刺さった。
咄嗟に両手で耳を塞ぐも、その音は止まらない。
バタリと、内宮がその場に崩れ落ちた。
後を追うように、エリィが、進次郎が、レーナが次々と床へと伏せていく。
「何だ、一体何が……!?」
「呼んでる……」
うつろな目をしたナインが、ポツリと呟いた。
焦点の合っていない目を見開き、食堂の外へと消えていく。
「おい、待てよ! 何が起こったんだ……?」
『わかりません、ご主人様。センサー類も何も……』
「うっ……90点、あんたは……大丈夫なの……?」
額を手で抑えたレーナが、よろめきつつも立ち上がる。
青ざめた顔をしながらも、その瞳には光が灯っていた。
「俺は平気だけど……おい、無理するなよレーナ」
「脳みその奥に直接、指ツッコまれるような不快感が満ち足りてる……。だけど」
ダン! とレーナの靴が力強く床を踏みしめた。
「ナインを、追わなきゃ!!」
───Hパートへ続く




