第34話「シット・イン・マインド」【Fパート ザンドールの牙】
【7】
発射された光弾が道路をえぐり、コンクリートを融解させる。
赤熱した地面に冷や汗をかきながら、付近のビルの陰へと照瀬は機体を寄せた。
「隊長、ありゃあなんですか!?」
「JIOの新型軍用キャリーフレーム〈ザンドール〉だそうだ」
「何で連中が……そりゃあ今朝とかも軍用機は使ってましたが旧式ばかりでした。それが、新型を……ビーム兵器をどうして連中が使えるんです!?」
「事情を考えるのは後だ。笠本のボウズが居ない今、あのビームぶっ放す軍用機を俺たちだけで止めにゃあならん」
「自衛隊を呼べば良いでしょう! 富永の頭もふっとばされて、俺たちの手には余り過ぎます!」
「富永の首が飛んだ風に言うんじゃねえよ。上層部は自衛隊なんぞの手を借りては警察の名折れだとかほざいてる。帰してもらえるのはお前の首もふっ飛ばされてからだな」
面子にこだわるのはこの組織の悪い癖である。
前線に立たされる末端は、命がけだということを理解していない。
しかし、配られたカードがこれだけだとしても、やるしか無いのが職業人の辛い所でもある。
「照瀬、ちょいと横にズレとけ」
「え? ええ……のわっ!?」
言われたとおりに機体を横にズラした途端、隠れていたビルを貫いてビーム弾が隣を通り抜けた。
赤熱した風穴を明けたビルの奥から、〈ザンドール〉が赤いカメラアイを鈍く光らせる。
気合を入れてペダルを踏み抜く勢いで押し込み、飛び出した瞬間に狙いをつけてスタンリボルバーを連射。
しかし〈ザンドール〉はその場から動きもせず、左腕に装着したビームシールドを展開し、粗末な鉄の弾を受け止めその熱量で蒸発させる。
反撃とばかりに放たれたビームを銃口の動きから予測し、前もって回避しつつ接近。
迎え撃つためにとビームセイバーに手持ち武器を持ち替えた敵機が、素早い縦の一撃を〈ハクローベル〉へと放つ。
あわや両断といった瞬間に重心を横にずらし、横転しつつ素早く回り込む照瀬機。
側面から電磁警棒の一撃を食らわせようと武器を持ち替えた瞬間、細いビームが天から眼前へと降った。
「ガンドローンだとっ!?」
咄嗟に飛び退き、浮遊する小型砲台が放つ光線を回避。
しかし、その間に〈ザンドール〉は体勢を立て直し間合いを延ばしていた。
せっかく懐に潜り込めたというのに、もうこの手は使えない。
それどころか単発のライフルはともかく、ガンドローンまで使われては単機では勝ち目がない。
(せめてあの浮遊砲台が無ければ……)
照瀬のその思いが届いたかのように、背後から飛来した何かがガンドローンへと突き刺さった。
それは一瞬だったが、光り輝く手裏剣の様な何か。
「光魔手裏剣!!」
上空から照瀬の前に着地した〈ショーゾック〉が手から無数の手裏剣を放つ。
光の弾幕をビームシールドで受け止める〈ザンドール〉だったが、シールドに守られていないガンドローンが次々と爆散していく。
「お前は……!?」
「照瀬さんを助けるために推参しました」
「その声、さっきのカエデとかいう……!」
「もしもこれが違法行為なら、せめてこの戦いの間だけはお許しください! カトンソード!!」
再び〈ショーゾック〉が跳躍。
空中で炎の刃を持った忍者刀を取り出し、〈ザンドール〉へと斬りかかる。
しかし不意打ちでもない真正面からのジャンプ斬りに狼狽えもせず、敵機は後方へと飛び退き同時にビームライフルを数発発射。
素早いステップで軽快にビームをかわすカエデの〈ショーゾック〉だが、回避の方向を誤ったのか背の低い建物に足を取られてしまう。
その隙を見逃さず突き刺さる光の弾丸。
直撃とまでは行かなかったが、〈ショーゾック〉の右腕が肩の部分から焼き切れ吹き飛ばされてしまった。
「おい! もういい! 下がれ!」
「軽部さんが来るまでは……私が!」
何が彼女をそこまで駆り立てるのか。
片腕を失った形の機体で、なおも戦おうと立ち上がる。
しかし、動力系がやられたのか動きの鈍い〈ショーゾック〉。
手負いの忍者を、ビームライフルの銃口が捉える。
今にもビームが放たれるその時、ビームライフルの銃口に何かがぶつかり爆発を起こした。
「待たせたな、カエデちゃん!」
「軽部さん!」
照瀬のモニターに映ったのは、ピストル型の武器を構えた汎用キャリーフレーム〈アストロ〉に乗る軽部の姿だった。
…………Gパートへ続く




