第33話「降臨祭の決戦」 【Fパート 再会の一撃】
球体のガンドローン・インベーダーの全方位攻撃を紙一重で回避し続け、反撃を試み続けた。
そのどれもがどちらにも致命傷を与えず、しかしハイパージェイカイザーには確実にダメージを蓄積させていた。
初めて敵対する、殺意を持って攻撃してくるExG能力者の強さに、裕太は無力であった。
「くっ! まるで先を読まれてるみたいだ!」
「無能力者の身でここまでやるとは思わなかったが……これ以上の抵抗は無意味だ」
根比べになれば不利なのはこちら。
何か手はないかと頭を巡らせる。
コロニー内ゆえに、広範囲を破壊する大技は打てない。
下手をすれば、この国そのものを滅ぼしかねないからだ。
宇宙という生命を拒む空間と内側を隔てる壁は厚く頑丈で、様々な危機に対応する仕掛けが無数に施されている。
しかし、ハイパージェイカイザーの全力はそれをも貫き、スペースコロニーという建造物を再生不可能なまでに破壊する危険性があるのだ。
(待てよ、ExG能力って……)
かつて、エリィが言っていた説明を思い出す。
ExG能力とは、決して未来予知を可能とする超能力ではない。
相手の僅かな動き、空気の流れや音などの情報から起こりうる事象を一瞬で正確に想像することができる情報処理能力。
そしてそれを生かした効率化された並列思考こそがExG能力の正体であること。
つまり、相手の想定外・あるいは認識の外から攻撃を仕掛ければ。
裕太の足りない頭がオーバーヒート思想になりながらも導き出した推論。
しかし、それを実行するには文字通り手が足りなかった。
────笠本くん!
エリィのことを思い出し、幻聴が聞こえてきたのかと裕太は思った。
そうでなければ、自分以外はジュンナとジェイカイザーしかいない機体内で彼女の声が聞こえるはずがないのだから。
────笠本くん!
『どうしたのだ、裕太!?』
「いや、あまりのピンチに銀川の声が聞こえたような気がしてな」
『ご主人さま。それ、多分幻聴じゃありませんよ』
「え?」
『ドアトゥ粒子を検知。跳躍完了まで2……1……』
「笠本くん!!!」
「銀川!? どあっ!!?」
目の前に、エリィが降ってきた。
そうとしか言えなかった。
再会の喜びか、膝の上から力いっぱい抱きついてくるエリィをよそに、裕太は現状の打開策を思いついた。
「本当に無事だったのね!! あたし、あたし……」
「銀川! 喜ぶのは後だ、後ろのシートに座れ!」
「え、ええ!!」
エリィが裕太の膝の上から飛び退き、流れるような動きでサブパイロットシートへと滑り込む。
そうこうしている内に、正面からビームセイバーの一突きをコックピットめがけて放つ〈クイントリア〉が接近してきていた。
「来るわよ、笠本くん!!」
「銀川、分離するぞ!」
「え!?」
『分離シーケンス作動』
『オープンカイザァァァァッ!』
剣先がまさにコックピットを貫くその瞬間。
ハイパージェイカイザーが上下に分かれ、一瞬でジェイカイザーとブラックジェイカイザーへと分離する。
空中で変形を解き、合体前の状態へと推移する2機。
初めて、ゼロナイン相手に虚を突いた瞬間だった。
「銀川、あれをやるぞ!!」
「ええ、わかったわ!」
裕太は一人になったコックピット内でコンソールを叩き、地面へ向かってジェイアンカーを射出させた。
草原を湛える豊かな土にアンカーが突き刺さり、ワイヤーを巻き取ることでジェイカイザーの機体が高速で着地する。
一方、ブラックジェイカイザーは戦闘機形態へと変形し、〈クイントリア〉の上空へと高速で移動し変形を解く。
攻撃の後隙を晒す格好となった敵機を、上下で挟む位置取りとなったところで同時にジェイブレードを抜く。
「行くぞ!!」
バーニアを全開に、上下から〈クイントリア〉への距離を詰める。
その間にもウェポンブースターでジェイブレードを強化し、そのフォトンの刃を活性化させていく。
「『「『必殺!!』」』」
「強化同時斬!」
『ジェイカイザーダブルスラッシュだぁぁ!』
「ハイパーコンビネーションアタックよぉ!」
『ツインクロスブレイド!』
2つの刃が交差し、衝撃が走った。
コンビネーション攻撃を受けた〈クイントリア〉の黒い装甲から塗料が剥離し、地の深緑色がむき出しとなる。
同時に、攻撃の中心となった右肩部が格納していたインベーダーごと爆散した。
「直撃……とはいかなかったか!」
『だが、あの手負いの状態では満足に戦えないはずだ!』
「くっ……!」
ゼロナインが悔しさの感情を声としてこぼすと同時に、〈クイントリア〉が舞台の方へ向かって加速する。
裕太たちもそれを追って、ペダルを思いっきり踏み込んだ。
…………Gパートへ続く




