第33話「降臨祭の決戦」 【Eパート 守りたくて】
「笠本はんが苦戦しとる……! 応援に行きたいんやけど、こいつらぁっ!!」
振るったビームセイバーが空を切り、回避行動の勢いを乗せた〈ザイキック〉の蹴りを受けてしまう。
運動性のために軽量化された〈キネジス〉は物理的な衝撃に弱く、後方へとふっ飛ばされてしまう。
バーニアを全開にして踏みとどまるも、立て続けに放たれたビームを回避しようとして体制を崩してしまう。
その隙を逃さず接近したもう1機の〈ザイキック〉が、ビームセイバーを振り上げる。
「こん……にゃろぉっ!!」
一瞬でガンドローンを放出し、正面の敵機へとビームの集中砲火。
頭部を貫かれた〈ザイキック〉が振るった刃が内宮の脇を通り抜け、そのまま機体が地面へと落下する。
「ぜぇ……ぜぇ……」
体制を立て直し、残った1機の〈ザイキック〉へと向き直る。
しかし、最初に撃墜した機体のコックピットハッチが開いていたことに気づいたのはかなり後のことだった。
【8】
降臨祭の儀式もいよいよ最後の段階。
女帝リンファによる静かな祈りと、舞台を見守る観衆達による黙祷。
静寂に包まれる会場の中、遠方から聞こえる機械人形戦の音にシェンは舞台袖で不安を募らせていた。
「神像様、もう少しだけ連中を抑えてください……!」
呟きながら、神に祈る。
しかし、その願いは届かなかった。
乾いた銃声と兵士の断末魔。
舞台の後方から聞こえたその音は、敵が侵入したという事実に他ならなかった。
護身用にと置かれていた銃身の長い自動小銃を手に、シェンは音のする方へと駆けた。
(母上様は……わらわが守らねば……!)
通路へと飛び出した時だった。
銃声とともに自動小銃が弾かれ、シェンの手を離れ音を立てて地面に落ちる。
正面には短機関銃を構えたヤンロンの姿。
「ヤンロン! 貴様、どうやってここへ!?」
「バカ正直に歩いてくると思ったか? だからてめえらは甘いんだよ! 機械人形ン中に潜んで、落とされてから抜け出てくるだけの簡単な作戦だったぜ!」
完全な失念だった。
無人操縦の機械人形の中に人が居ないという固定観念を、2日前の襲撃で植え付けられていたのだ。
そうでなければ、機能停止した機械人形の中から出てくる敵を、裕太たちが見逃すはずがない。
「姫巫女さんよ、てめえを殺すつもりはねえ。生きてもらわねえとバカな民衆共に嫌われちまうからな。さ、道を開けな」
「わらわがおとなしく通すと思うたか! 命に変えても、母上様は守る!」
「チッ……2,3発ブチ込んで動けなくされてえみてえだな!」
シェンへと向けられる銃口。
引き金を引こうと動くヤンロンの指。
傷つく恐怖が、シェンの目を閉じる。
発砲とともに、鮮血が舞った。
…………Fパートへ続く




