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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第4話「ドラマの中の戦争」【Eパート ビームセイバーの驚異】

「い、井之頭さんよぉ……こいつは撮影用じゃあ……!?」

『前方の機体から敵意を感じる! 気をつけろ、裕太!』


 謎のキャリーフレームが腕の収納スペースから筒状の物体を取り出すと、その物体から光の刃がブォンという発振音とともに飛び出した。


「……ビームセイバーか!?」

『避けろ、裕太!』


 突然放たれたビームセイバーの斬撃をジェイカイザーが後ろ飛びで回避した。

 脇に立っていた照明用の鉄柱が切断面を赤熱させて倒れるのを見て、裕太は背筋を凍らせた。

 ──ビーム兵器。

 それは超高温の発光粒子を射出することで対象を熱で融解させる、核兵器を除けば地球最強クラスの兵器群である。

 その有無で数で劣る地球軍がヘルヴァニア軍を圧倒できるほどの性能をもつそれは、本来ならば米軍やコロニーの駐留軍など限られた場所でしか見られないはず……なのだが。


「ほ、本物じゃねーか……!?」


 とっさに裕太は目の前のキャリーフレームから距離を取った。

 トマスら警察の整備班から聞いた話では、ジェイカイザーの表面には耐ビームコーティング他、特殊な処置は一切されていなかったという。

 となれば、ジェイカイザーの装甲はただの分厚い金属板に他ならず、ビーム兵器への抵抗力は一切ないということである。

 ジェイカイザーの予備パーツはもといた地下研究所にあるため、多少ダメージを受けるぶんには修復が利くだろう。

 しかし、もしもコックピットにビームが直撃しようものなら、裕太の身体は瞬く間にミンチより酷い何かへと変貌する他はない。


「笠元くん! 大丈夫!?」


 いつの間にか通話モードに入っていた携帯電話からエリィの声が聞こえ、裕太はハッと我に返った。


「銀川! このキャリーフレームは何なんだ!?」

「クレッセント社製の〈ドゥワウフ〉、旧型だけども米軍で制式採用されてた正真正銘の軍用機よぉ!」

「なんでそんな物騒なのが日本にあるんだよっ!?」

『裕太、来るぞ! 前だ!』


 エリィと話していて意識がそれていたため、正面からビームセイバーを横なぎしようとする〈ドゥワウフ〉の動きに裕太は反応が遅れてしまう。

 とっさにジェイカイザーの左腕に持っているシールドを構えつつ後方へと回避行動をとる。

 しかし、かわしきれずにビームセイバーの先端がシールドを切り裂いた。

 断面を赤く光らせながら切り離されたシールドの下半分は地面でバウンドし、エリィ達のいる場所へと回転しながら落下しようとしていた。


「しまっ……っ!?」


 その時、進次郎の後ろにいたサツキが前に飛び出し、片手を払うように横にぶんと振った。

 するとシールド片は金属同士がぶつかるような音とともに横へと吹っ飛び、川の中央へと大きな水柱をあげて突き刺さった。


「皆さん、大丈夫ですか?」


 鉄骨と化していた腕を元に戻しながらサツキが微笑むと、井之頭が怪しげな笑みを浮かべた。


「よーし、カメラを回せっ! あの戦いを撮るんだよ!」


 そう言われ井之頭が無事かどうか確認しに来たスタッフたちがギョッとした表情をする。


「そんなマンガみたいなことするんッスか!?」

「マンガみたいな状況だから撮るんだろうが! あ、君たちは危険だから坂の上で待っていなさい!」


 井之頭にそう言われ、エリィたちは渋々河川敷の坂を上り裕太とジェイカイザーの戦いを見守り始めた。


『裕太、聞いたか! この戦いが撮影されているぞ!』


 携帯電話越しに会話を聞いていたジェイカイザーが現在の状況を忘れたかのように弾んだ声を出した。


「言ってる場合か! こっちは命がけなんだぞ! のわっ!?」


 突如〈ドゥワウフ〉が飛びかかって来たのでとっさに手に持っていた模造刀で受け止めようとするも、ビームの刃はまるで豆腐に刃を入れる包丁のように模造刀の刀身を切断しながら素通りした。


「……流石に模造刀じゃチャンバラは無理か。ならこいつでどうだ!」


 自分にツッコミを入れつつ裕太は操縦レバーを捻り模造刀を放り捨て、背中にマウントしていたショックライフルを手に取り、後方へと下がりながらドゥワウフへ向けて発射した。

 光弾が命中すると思った刹那ドゥワウフはビームセイバーで切り払い、光弾はドゥワウフの斜め後方にあったテレビ局の中継車へと直撃した。


「あーっ! うちの中継車がーっ!」

「放っておけ! この映像が撮れれば5台は返ってくる!」


 携帯電話から響く井之頭たちの叫びに呆れつつ、裕太はめげることなくショックライフルを連射する。

 しかし、ドゥワウフはビームセイバーを握る手を手首ごと高速回転させ即席のビームの壁を作り、打ち込まれる光弾をことごとく弾いて接近してくる。

 この時、裕太は相手のパイロットがただのチンピラや犯罪者でないことを感じ取った。

 遠距離兵装に対して手首を回転させ相手の盾を作り出す戦法は、フレームファイトで取られる戦術の中でもかなり高度な技術である。

 なぜなら手に持った武器がひとつ使えなくなる上に反射の角度を間違えれば逸らしが足りずに被弾する可能性もある。


『何だ……相手は怪物か!?』

「このままじゃジリ貧だ! 銀川、〈ドゥワウフ〉ってのはなにか弱点はないのか!?」

「えっとぉ……〈ドゥワウフ〉は構造上の問題で主要な動力パイプが頭部を通ってるからぁ、頭を潰せば行けるはずよぉ! って笠本くん、前! 前!」

「んな無茶な! どわっ!?」


 エリィに意識を向けていた隙に〈ドゥワウフ〉に接近され、至近距離から袈裟斬りを放たれる。

 間一髪ジェイカイザーの身体を傾けて回避したものの、ショックライフルが銃身を切断され爆発を起こした。


「どわぁぁぁっ!?」


 爆発の衝撃でジェイカイザーが後方へとふっとばされ、川の中へと仰向けで倒れてしまう。

 一方〈ドゥワウフ〉はバックステップで爆発を避けていた。


『大丈夫か、裕太!?』

「俺は無事だが、武器がもう警棒しか残っちゃいないぞ!」


 ジェイカイザーを立ち上がらせながら裕太は必死に思考を巡らせる。

 相手は軍用故に動きが素早く、目立った隙も見られない。

 一度でもビームセイバーを受け止められればカウンターが可能なのだが、警棒ではそれも無謀である。

 万事休すか。と思ったその時、携帯電話から進次郎の声が聞こえてきた。




    ───Fパートへ続く

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