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第31話「光国の風」【Bパート 突然の襲撃】

 【2】


 ひときわ岩が密集している一帯を抜けたところで、それは視界に入ってきた。

 宇宙ではおなじみの円筒形コロニー。

 しかし、自然の太陽光を取り込む窓が閉じられ、薄暗いグレーの筒という印象のほうが強かった。


『妙ですね……』

「ジュンナ、何がだ?」

『私の調べたところによりますと、この辺りにスペースコロニーは存在しないことになっています』

「なんや、怖いこと言うなぁ……。幽霊船ならぬ幽霊コロニーだなんてこと、あらへんよな?」

『オカルト分野には精通しておりませんのでなんとも言えませんが、油断しないようにお願いします。ほら、ジェイカイザーそろそろ出番ですよ』

『んあぁぁ……おはよう裕太! 私の居ない間にやましいことはしてないだろうな!』

「うるせー。とにかく戦闘準備をしながら接近するぞ」


 言いつつ、コンソールに目配せする。

 フォトンエネルギーの残量は24%。

 戦うにしても主武器は汎用兵器のみだ。


 謎のコロニーの、通常であれば宇宙港へとつながっているであろう場所へと着地する。

 OSを介して港の操作パネルにアクセスし、大きなシャッターを開き、中にはいって閉じる。

 エアロック構造になっている空間に、空気が満ちていく音がする。

 裕太は息を呑み、内部へと通じる扉を開いた。


 目の前に広がるのは、緑の広がる草原。

 円筒の芯の部分にあたる人工太陽の光が空を青く染め、白い雲が漂っている。

 しかし、その風景を楽しむ暇は与えられなかった。


「笠本はん、正面! ビームや!」

「このっ!!」


 ハイパージェイカイザーの腕がすばやくビームセイバーを引き抜き、一閃で飛んできた光弾を弾く。

 弾いたビームが草原の一角に焦げ目をつけたと同時に、小型の浮遊ビーム砲がハイパージェイカイザーの側面へと回り込む。


「ガンドローンか!」

『右だけじゃない、上も左も前にもいるぞ!』

『位置特定、画面に表示します』

「うちもやるで! バルカン砲、照準セット!」


 ビームセイバーが弧を描き、頭部機関砲が吠える。

 刃が走り弾丸が飛び、一瞬にして取り囲んだガンドローンをすべて撃墜する。

 通常では不可能である芸当も、ふたりと2機が連携し、かつ非凡でない腕前を持っていれば可能となるのだ。


 ガンドローンによる攻撃が通用しないと感じたのか、はたまた武功を焦ったのか、一斉に岩陰から飛び出す2機のキャリーフレーム。

 見たことのない型ではあるが、その目立つ紫色の装甲を持つ機体は裕太にとって敵ではない。


「何で俺たちを襲うんだよっ! このっ!」


 振り下ろされたビームセイバーを左腕から放出したフォトンフィールドで一瞬受けとめる。

 動きが鈍った相手にヒザ蹴りを喰らわせて浮かせ、一瞬の間に電磁警棒を抜いて接近するもう1機へと投げつける。

 喉元の駆動系に突き刺さりスパークする警棒を尻目に、受け止めた敵機の腕をビームセイバーで切り落とし胴体に回し蹴りを放つ。


 片腕をやられふっ飛ばされた敵機が、草原をえぐりながら倒れる。

 しかしその機体が片腕をついて立ち上がり、背部からガンドローンを放出する。


「笠本はん、まだやるつもりやで!」

「くっ!」


「そなたらでは敵わぬ。ここはわらわに任されよ」


 通信越しに聞こえた、幼くも凛々しい女の声。

 その声が響くと共に、先程までやる気満々だった敵機体がその場にひざまずくように屈んだ。

 そして上空から舞い降りるような優雅さを醸し出しつつ、赤を基調としたキャリーフレームが姿を表した。


「やいやい! どうして俺たちを攻撃するんだよ!」

「反政府軍が寝言を。あまつさえ神像を真似た機械人形をるなど、我々への最大限の侮辱と見る!」


 コックピット内に響く凛とした声に、裕太は首を傾げる。

 どういう事だと聞き返す前に、向こうが剣を抜いた。


「我はシェン。姫巫女としての命を受け光国グァングージャを護るつるぎなり! 平穏を脅かす魔の者よ、この〈キネジス〉により成敗する!」


 バーニアの噴射とともに一気に距離をつめられ、鋭い突きが放たれる。

 間一髪で身体を反らし回避するも、続けて〈キネジス〉より放たれたガンドローンが逃げ道を塞ぐようにビームを放つ。

 狙われた箇所を守るようにフォトンフィールドを展開、ビームセイバーで反撃。

 しかしその瞬間、ガンドローンが撃ったビームがビームセイバーの発振器へと突き刺さり、インパクトの瞬間だけ刃が途切れ敵は無傷だった。


「にぃっ!?」


 剣による鋭い一閃がフォトンフィールドへと突き刺さり、弾いた勢いでハイパージェイカイザーが後ずさる。

 飛び上がり、鋭利な構造の脚を向けて蹴りかかってくる〈キネジス〉。

 回避しようとし、裕太は重大な事実に気づいた。


「……悪い、内宮」

「どしたんや!? はよ避けへんと!」

「エネルギーが切れたぁぁ!」


 直後、鋭い蹴りが突き刺さり倒れるハイパージェイカイザー。

 モニターが沈黙し、真っ暗となったコックピットの中で裕太の声がこだました。




  …………Cパートへ続く

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