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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第4話「ドラマの中の戦争」【Cパート 暗躍のメビウス】

 【3】


 それから数日後。

 内宮はパーカーにミニスカートとラフな服装で『メビウス電子』と石のプレートに掘られた門を軽い足取りでくぐっていた。

 そのまま正面に見える白く立派な高層ビルの中へと足を踏み入れる。


「ようこそ、メビウス電子へ。失礼ですが、ビルをお間違えではございませんか?」


 受付の女性が内宮の背格好を見て優しく諭すようにそう言うと、内宮は眉間にシワを寄せながら肩肘を受付テーブルに乗せた。


「アポなら取っとるで。キーザっちゅう男に内宮が来たて言うてみ」

「キーザ課長ですか? ……少々お待ちください」


 受付が固定電話のダイヤルをポチポチと押し始めたのを見て、内宮は近くにあった豪華な椅子に座り込んだ。

 思ったよりもフカフカで尻が沈んだためバランスを崩し、一瞬後ろのめりになる。


「うおう、フカフカにも程があるやろ」


 小声でぼやきながら上体を起こし、キョロキョロとあたりを見回し受付周辺の空間を観察する内宮。

 一面大理石でできた白い床、見るからに高級そうな調度品、名のある画家が描いたであろう抽象的な絵画が自らの価値を主張するように光り輝いて見えた。


「怪しゅう呼び込みやないかと若干思うとったが、中々ぎょーさん稼いどる会社みたいやのー……」


 ぼんやりとした表情でそう呟くと、背後から何者かが近づき肩をポンと叩いてきた。

 内宮が立ち上がり振り向くと、そこには首から『キーザ・ナヤッチャー』と名前の書かれたプレートを下げたスーツ姿の男が立っていた。


「キーザはん、結構待たされたで」

「たかだか数分じゃないか、気が短いな。まあいい、早速仕事の話に入ろう。付いて来たまえ」


 キーザがそう言ってエレベーターホールの方へと歩き始めたので、内宮も急いで後を追いかける。

 他のスーツ姿の社員が使うものとは違う、貨物用のエレベーターのボタンをキーザが押すとすぐに扉が開き、ふたりは早足で乗り込んだ。


「なあなあ、キーザはん。このエレベーター、地下にしかいけへんようやけど?」

「問題ない。例のものは地下に隠してあるからな」


 ガクンとエレベーター内が揺れ、ブゥーンと駆動音だけが静かに響く。

 まだつかないのか、と内宮が思うくらいの秒数時間がすぎると、小気味良い到着音とともに扉が開き、薄暗く細い廊下が現れた。

 廊下を先へと進むキーザの後を、小走りで追いかける内宮は、やがて真っ暗な広い部屋へとたどり着く。

 キーザが入り口脇のスイッチを押すとカンカンと軽い音を鳴らしながら古ぼけた蛍光灯が点灯し、部屋の中央に鎮座してあったキャリーフレームを照らし出した。

 迷彩を思わせる深緑のボディに力強さを感じさせる太い手足。

 民間用のキャリーフレームとは比べ物にならないほど分厚い装甲を見て、内宮は思わず口笛をヒューと吹いた。


「気に入ってもらえたかな?」

「……このキャリーフレームを使えっちゅーことやな?」

「そうだ、この機体に相応しい相手はすでに決めている。いいな?」

「ま、こちとら命張るんや。ギャラは高うしてもらうで」


 内宮は口端をにやりと吊り上げ、目の前のキャリーフレームに乗り込んだ。




 【4】


 同日同時刻。

 暇な午前中を進次郎との買い物で潰した裕太は、撮影場所である河川敷近くのバス停でエリィ達を待っていた。

 暖かな日差しから目を守るように額に手を当てながら、バスが来るであろう道路の先と撮影準備が進められている河川敷を交互に見やる。

 まだ地理に詳しくないサツキと一緒にエリィがバスでここに来る算段であるのだが。


「……遅いな」

『もう約束の時間から10分も経っているではないか!』


 憤るジェイカイザーの声を軽く聞き流す裕太はバス停のベンチに腰掛け、気だるそうに上体を後ろへと垂らした。


「なあ裕太。あのふたり、まさか別の行き先に乗ったとか無いだろうな?」

「あり得るな。銀川の奴、あれで結構抜けてるところあるから。この間なんて……」

「誰が間が抜けてるですってぇ?」


 ギョッとして横を向くと、目の座った私服のエリィがぴっちりと脚に張り付いたジーンズに包まれた脚を少し開き、仁王立ちしていた。


「そ、その春っぽいコート似合ってるよ」

「取ってつけたような褒め言葉でごまかすんじゃないのよぉ。事故で渋滞しててバスが動かなくなったから途中で降りてきたのよぉ」


 ムスッとした顔で裕太から視線を反らし拗ねるエリィに、辺りを見回しながら進次郎が問いかける。


「銀川、サツキちゃんは?」

「私ならここですよ~」


 そう声が聞こえたかと思うと、エリィの背後に停まっていた2脚バイクがグネグネと形を変え、フリフリのついた可愛らしい服装に身を包んだサツキの姿へと変化した。


「……いつ見てもこの変身はギョッとするな」

「変身じゃありませんよ。擬態ですよ~」


 にこやかに進次郎の発言を訂正するサツキは、手の先からエリィが持っているのと同じ形状のバッグを形成して握った。


「バッグまで擬態で作れるのねぇ」

「えへへ、すごいでしょう!」


 楽しそうにバッグを見比べるエリィの顔を見て、薄っすらと色白くなっていることに気がついた。


「あれ、銀川……化粧してる?」

「し、してないわよぉ?」


 照れながら誤魔化そうとするエリィの反応を見て、裕太と進次郎は内心「してるな」と勘付いた。



    ───Dパートへ続く

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