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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第4話「ドラマの中の戦争」【Bパート テレビデビューの誘い】

 ふぅ、とひとつため息をついた裕太は進次郎達が驚いたような顔で固まっていることに気づき、声をかける。


「……どうした?」

「笠元くん、顔……怖いわよぉ」


 そう言われ、慌てて作り笑いを浮かべる裕太。

 自分の中でも5年前のあの事件をまだ引きずっているのかと、裕太は自分が嫌になった。


「裕太、お前……」

「おうてめぇら! 席につきやがれ!」


 弾けるような軽部先生の声によって、進次郎の言葉がかき消される。

 何を言おうとしていたかわからないまま、そそくさと自分の席へと戻っていく3人を見て、裕太はまたひとつ大きなため息をついた。


『何を落ち込んでいるのだ?』

「おいジェイカイザー、あまり大きな声を出すな」

『先程の裕太の主張に私は感動した! 裕太はその力を娯楽の為ではなく、正義のために振るうまことの戦士だと確信したぞ!』


 相変わらずの的はずれな評論だが、裕太は少し気が楽になった。

 どういった経緯や内容であれ、人は褒められると嬉しくなるものだ。

 ふとエリィの方へ顔を向けると、裕太の表情がもとに戻ったからか、笑顔で微笑んでいた。


「笠元と銀川! お前らなんだ、アイコンタクトか? 夫婦の阿吽の呼吸かぁ!?」


 軽部先生にその様子を指摘され、周りの生徒に笑われて、裕太とエリィは同時に顔を赤くした。




 【2】


「夫婦だなんて、あたしたちにはまだ早いわよねぇ」


 空が赤焼ける夕暮れ時。

 進次郎たちいつもの4人で校門へと向かっていると、エリィが唐突に朝に先生が言った発言をぶり返してきた。


『結婚可能な年齢は18歳以上だぞ、裕太!』

「ジェイカイザー、そういう問題じゃねえぞ……ん?」


 裕太は校門の脇に、丸メガネをかけたひとりの男が立っていることに気づいた。

 男は裕太の顔と手に持った紙を見比べると、うんうんと頷いて歩み寄り、丁寧にお辞儀をしながら名刺を差し出し。


「突然ですが失礼。私はペタテレビディレクターの井之頭と申します。あなたがこの間の……」

「テレビディレクター!? ああっ、ついにあたしをスカウトしに来たのね! あたしほどの美貌があればいつかとは思っていたけど今日だなんて! 待ってまだ心の準備が……ちょっと笠本くん、押さないでああっ!」


 勝手な勘違いをしながらずいっと前に躍り出たエリィを、裕太は横へ押しやりサツキに抑えさせた。


「えっと、要件は何です?」

「コホン……あなたがこの間のハイアーム事件の時の少年ですね?」


 井之頭と名乗った男はそう言って、ジェイカイザーから降りる裕太を写した写真を見せた。


「そうですが、何か……?」


 不審の眉を寄せながら、裕太は井之頭の名刺とその写真を受け取る。


「実は私、あの場に居合わせてて、あなたの活躍見てました! それでですね、うちのドラマ『スパート!!』にあなたの乗っていたキャリーフレームを出していただきたく」

「ジェイカイザーを?」

「なによぉ、女優のスカウトじゃないのぉ!? もごご……」


 懲りずに前に出ようとするエリィが、サツキに口を手で塞がれて後ろへ引っ張られていった。


「あのドラマ、たしかホームドラマ系のやつじゃ?」

「まあそうなんですが、劇中劇として子供が見ている番組の映像に、そのジェイカイザーを使いたいんですよ」

「小道具ってことか」

「もちろん、報酬は弾みますよ。お友達の方々も、見学がてらエキストラとして出演してもらっても構いません」


 それまで眉間に皺を寄せながら話を聞いていた裕太だが、報酬という言葉を聞いた途端に目を見開き、井之頭に笑顔を向けた。


「わかりました、やりましょう!」


 ※ ※ ※


『見損なったぞ、裕太!』


 井之頭から撮影の日時と場所を聞き別れた後、ジェイカイザーがブーブーと不満そうな声をあげた。


「何怒ってるんだよジェイカイザー」

『裕太はもっと誠実な人間だと思っていたのだが。金や道楽のために私を使うなんて……』

「ジェイカイザーさんはドラマに出たくないんですか?」


 サツキが裕太の携帯電話の画面を横から覗き込みながらそう聞くと、より一層ジェイカイザーは声を張り上げて。


『私は正義の為に戦うマシン戦士だぞ! そのような遊びに付き合うつもりはない!』

「そうは言っても、もう承諾しちまったんだし今更断れないぞ」


 片手で頭をポリポリとかきながら裕太はどう説得したものかと頭を悩ませる。

 するとエリィが目を見開いて、何かを思いついたように進次郎に話しかけた。


「ねぇ岸辺くん。『スパート!!』って大人気なドラマなのよねぇ?」

「そうだな。僕が以前調べたところによると平均総合視聴率25%越えの絶賛大ヒットホームドラマ。天才の僕でも毎週録画は欠かしていないぞ」

「だからぁ、ジェイカイザーも劇中劇とはいえ有名なドラマに出れるのよぉ。そうしたら、たくさんの女の子がジェイカイザーのファンになるかも?」

『な……!?』


 そういえばジェイカイザーはここ最近、社会勉強と称してエリィから様々なゲームや電子書籍を与えられていたということを裕太は思い出した。

 しかもその内容はギャルゲやエロゲ、あるいはハーレム系マンガなどそういう系のものに偏っている。

 そのようなものを与えられ続けたジェイカイザーが人間の女に夢を抱き、女好きになるのはムリもない話だった。


『よし! 撮影に臨むぞ、裕太!』

「俺が言うのも何だが、チョロすぎだろお前」


 手のひらを返し意気込むジェイカイザーに、裕太は呆れる他なかった。



    ───Cパートへ続く

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