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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第3話「金色の転校生」【Fパート 少女の秘密は黄金色】

 【6】


「見つけた、あそこよぉ!」


 進次郎が言っていたという自然公園に着いたふたりは急いでサツキと進次郎のもとへと走り寄った。


「裕太、来たか……って何だその顔色は?」

「進次郎、2脚バイクって慣性制御システム積んでないのか……?」

「あるわけ無いだろう。ともかく、金海さんだ」


 そう言われ、サツキの方に向き直るとサツキは深刻そうな面持ちでうつむいて黙っていた。


「金海さん。君を責めているわけじゃないんだ。ただ、本当に大丈夫なのかが知りたいだけなのだよ」


 進次郎が優しくそう問いかけると、サツキは顔を上げて、静かに口を開いた。


「……わかりました。私の秘密を明かします。あなた達のようないい人に、嘘をつき続けるのは辛いですから」


 そう言うと、突然サツキの身体が肌や服まで金色になり、やがて溶けるように形を失った。

 その姿は、例えるなら黄金のスライムみたいだ。


「「「……!?」」」


 突然の現象に、この場にいる三人は思わず息を呑み言葉を失う。

 サツキだった金色の物体は人のような形状へと変化し、やがてサツキがトラックから助けた子供の姿へと変わった。


「金海さん、なのか……?」

「はい。私は金海サツキです」


 子供の口からサツキの声が発せられたことで、裕太達は目の前にいる存在がサツキであることを再認識する。


「私は……人間ではありません。私たちは遠い銀河からやって来た液体金属生命体……地球語であらわすと『水金族』という存在です」

「水金族……」

「私たちは星々を旅し、訪れた先で様々な知識を学び、母なる存在へと情報を送ることを目的としています。現在、私達は人間社会の中で様々な感情を学ぶために地球人へと擬態して活動しています」

「けど、金海さんって感情がないようには思えないけれど……」

「まだ全ての感情を学べたわけではありませんが、喜びや怒りなどの感情は既に他の個体によって学べているんです」


 子供の姿がまた金色のスライムへと変化し、再び制服を着たサツキの姿へと戻った。


「私達は粒子レベルの擬態能力を持っています。人間の姿は、私達の取る姿の一つでしかありません」


 それを聞いて、裕太は昼休みにサツキが狭い隙間に落ちた小銭を拾ったことを思い出した。

 あの時は手が小さいなら入るかと思っていたが、よくよく考えれば手の厚み的にあの隙間に入るのは無理がある。

 恐らくだが、この擬態能力によって手の厚みを変えたのだろう。


「じゃあ、トラックに脚が挟まれても平気だったのも……」


 エリィがそう聞くと、サツキはうつむきながら裕太たちに背を向けた。


「……私は怪物と言われても仕方のない存在です。あなた達に迷惑をかけるわけにはいきません。私はあなた達の前から去ります」

「どうして去る必要があるのだ?」


 この場から去ろうと足を踏み出したサツキの手を進次郎が掴むと、サツキは驚いたような表情をしながら振り向いた。


「確かに金海さん、君は地球人ではないかもしれない。だが、ここにいる銀川さんは地球人とヘルヴァニア人のハーフ。さらに言えば裕太の携帯電話の中には素性不明のヘンテコロボットが住み着いている」

『ヘンテコロボットとは失礼な!』

「……ジェイカイザー、黙ってろ」


 裕太がジェイカイザーを制すると、進次郎はコホンとひとつ咳払いをして続けた。


「僕が言いたいのは、この世界は不思議なことがいくらでも起こり得るということだ。だから僕は金海さんを化物だなんて思わないし、裕太たちもきっと同じことを考えているだろう」

「し、進次郎さん……」


 ポロポロと、サツキの目から雫が垂れ落ちる。

 その涙を見て、進次郎は少し慌てながらも言葉を続けた。


「えーっとだな、だから、然るにだな……。金海さん、去るだなんて言わないでくれないか? 僕は天才として、金海さんについてより深く知りたくなったよ」

「ありがとう……ありがとうございます……!!」


 サツキは涙を流しながらも、自己紹介をした時のような飛び切りの笑顔で進次郎にお礼を言った。

 裕太は進次郎らしくない臭いセリフだなと思いながらも、空気を読んで黙っておくことにした。

 進次郎は今頃になって自分の言ったことの恥ずかしさに気づいたのか、顔を赤くして照れくさそうに視線を背ける。


「改めて、よろしくねぇ金海さん!」


 そう言ってエリィが手を差し出すと、サツキは嬉しそうな顔でその手を握った。


「それにしても、擬態ってよくできてるのねぇ。肌触りも違和感ないし、温かいしぃ」

「はい。私達の擬態は外見だけでなく、骨格・臓器に至るまで元の生命体を忠実に再現していますから。例えば……」


 そう言って唐突にサツキは自らブラウスを脱いで下着を露わにした。

 そのまま下着も取ろうとするので、エリィが慌ててサツキの手を止める。


「ななな、何やってるのよぉ!」

「え? 私は肉体構造の再現度の証明をしようと……」

「……もう、先に羞恥心の感情を学んだほうが良いわよぉ!」


 脱いだ制服を元に戻そうとするエリィの後ろで、進次郎が舌打ちをしたのを裕太は聞き逃さなかった。


「……コホン。とにかく金海さん、これからもよろしくな」


 咳払いでごまかしながら、改めて進次郎はサツキと握手をした。

 気のせいか、進次郎に手を握られてサツキの顔が赤くなっているようにも見える。


『裕太! どうやってここから帰るのだ! まさか歩くのか!?』


 ジェイカイザーに言われて、裕太はここが通学路から遠く離れた地であることを思い出した。

 2脚バイクはふたり乗りだし、誰かふたりは徒歩で帰らなければならない。

 戦闘に加えさっきのガクガクで、裕太は疲れ切っていた。

 裕太がどうしようかと頭を悩ませていると、サツキが進次郎の2脚バイクに顔を近づけじっと見始めた。


「金海さん、どうしたんだ?」

「……わかりました!」


 サツキはそう言うと姿を変化させ、進次郎のものと全く同じ外見の2脚バイクになった。


「こうすれば、みんなで乗って帰れますよ!」


 2脚バイクから響くサツキの声に、何度か変身を見た裕太たちも目を丸くする。


「機械にも変身できるのねぇ……」

「進次郎、乗ってやれよ!」


 茶化すように裕太が言うと、進次郎はそっぽを向いて自分の2脚バイクに乗り込んだ。


「い、いや僕は自分のに乗る! 金海さんにはふたりが乗りたまえ!」

「やーい、照れてやがんの」

「照れてなどいない!!」


 顔を赤らめているのを誤魔化すように進次郎は怒鳴り、ねたような表情でアクセルを入れる。


「もう日も遅い、さっさと帰るぞ!」


 進次郎が足早に2脚バイクを走らせ始めたので、裕太たちもサツキが変身した2脚バイクに乗り、後を追いかけるように発進させた。



 ※ ※ ※



 オレンジ色の夕日に照らされながら来た道を戻っていると、サツキが裕太たちに小声で話しかけてきた。


「私、決めました。私は進次郎さんのもとで目的の感情を学ぶことにします」

「進次郎と?」

「あの方は私を受け入れてくれました。私の能力を初めて認めてもらえたので嬉しくなったんです。あの方となら、私の求めている感情が学べると感じました」

 嬉しそうな声でそう言うサツキに、エリィがニヤニヤとした表情をする。

「そうなのぉ、よかったわねぇ! それで、あなたの求める感情って何かしらぁ?」

「はい、私の学びたい感情は……『愛』です!」


  ……続く


─────────────────────────────────────────────────

登場マシン紹介No.3

【ハイアーム】

全高:7.8メートル

重量:8.0トン


 主に建設現場で運用されているJIO社製の工事用キャリーフレーム。

 1万2000馬力を誇る蛇腹構造の長い腕を持ち、束ねた鉄骨を軽々と持ち上げることができるパワーを持つ。

 作業のじゃまにならないように極力出っ張りが出ないよう丸みを帯びた形状をしており、茶褐色の本体色も相まって遠目からは巨大な生物にみえることも。

 脚部は形状こそ2脚であるが、基本は足裏のキャタピラで移動を行う。

 外見がとあるロボットアニメに登場する水陸両用ロボットに似ているが、そのロボットがモノアイ構造に対してハイアームのメインカメラはゴーグル状となっている。

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― 新着の感想 ―
[良い点] サツキちゃん可愛いですね…本当に可愛い…。 進次郎とサツキちゃんの今後の関係が気になりまくりです。 真面目そうな進次郎がラストでラッキースケベ逃がして舌打ちするのとても可愛いですね 戦闘パ…
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