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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第1話「ジェイカイザー起動!」【Bパート ピンチに登場 勇者系ロボ!】

 【1】


 ──それから20年の月日が流れた。


 日本のとある地下に存在する無人の研究所。

 暗く沈黙した格納庫の中で、突如警報が鳴り響いた。

 壁に張り付いたパトランプのような回転灯が、すすけたカバー越しに危機的状況を赤い光で主張する。

 格納庫を照らすように点灯した年季の入ったモニターには、住宅街の上空を横切って飛行する、黒光りしたヘルヴァニアの戦闘機が映っていた。


『警戒警報、警戒警報。ヘルヴァニア軍無人戦闘機、フラフォーを捕捉。距離5000』


 無機質な機械音声のアナウンスが格納庫の中に響き渡り、その音声に呼応して格納庫に立っていた9メートルはあろう巨大な人型ロボットの目が光る。


「デフラグ博士、私は行くぞ……!」


 あたかも感情のある人間のようにそう呟いたロボットは、生みの親であるデフラグ博士の生前の言葉を思い返していた。


(ジェイカイザーよ、この青く美しい地球を、お前がヘルヴァニア銀河帝国の手から守るのだ……!)


 巨大ロボット──否、ジェイカイザーは、覚悟を決めるかのごとく、自らの機械の拳をギュッと握りしめた。


『ドアトゥ粒子充填! ワープ座標固定完了!』


 アナウンスが淡々とジェイカイザーの発進シークエンスの状況を述べていく。

 天井の装置よりキラキラと光る粒子状の物質がジェイカイザーの頭上から振りかけられる。

 それによりジェイカイザーの身体ボディが激しく発光し始め──。


『3……2……1……ワープ開始!』


 ──アナウンスのカウントダウンが終わると同時に、ジェイカイザーは格納庫から姿を消した。




 【2】


 月と街灯に照らされた、緑と桃色の混じりあった桜の木の間を、笠元かさもと裕太ゆうた銀川ぎんかわエリィの手を引いて走っていた。

 手を引かれるエリィは、黒いカチューシャで留められた銀色の長い髪を振り乱しながら、赤いチェック柄の短いスカートがひらひらと揺れるのもいとわず必死に足を動かしている。

 普段通っている東目芽ひがしめが高校の校舎を横切り、追っ手から逃れるために右へ左へと道を曲がる。


「どっちに行きやがった!」

「兄貴ぃ、あっちみたいですよ!」


 背後から聞こえてくる追っ手の声に、とっさに物陰へと身体を隠し息を潜めるふたり。

 タイヤの代わりに2本の脚で走る2脚バイクがライトで正面を照らしながら、ガッシャガッシャと独特の走行音を鳴らしながら近づいてくる。

 2脚バイクには、ガラの悪そうな格好をした男が2人──1人はハンドルを握り、もう1人は荷台に腰掛ける形で──乗っている。


 ここまでしつこく追ってくるなんて、と裕太は小声で呟いた。

 無理やり連れて行かれそうになっていたエリィを助けるために、体当たりをかましたのがそんなに痛かったのだろうか。

 しかし、あのまま放っておけば彼女はあのガラの悪いふたり組に何をされるかわかったものではない。

 裕太は、目の前で危機にひんしている知り合いを放って置けるほど、無情ではなかった。


「銀川、グラウンドに逃げ込もう。裏門から出るぞ」

「わ、わかったわ笠元くん」


 裕太は足音を立てないよう、エリィの手を引いてグラウンドの方へと駆け出す。

 グラウンドの奥には、裏口があったはず。

 そこから抜け出せば、連中を撒くことができるかもしれない。



 ※ ※ ※



 街頭だけが照らす暗闇の中、あと一歩でグラウンドというところで裕太たちの背中をライトが照らし出した。

 広いグラウンドに自らの影が伸びると同時に、背後から聞こえる威圧的な怒声。


「見つけたぞてめえら! 待ちやがれ!」

「ちょっと、追いつかれちゃったわよぉ!」

「くそっ、しょうがねえ……!」


 バイク相手に徒歩で逃げるのは無理があると裕太は判断し、男たちの要求通りに足を止め、追っ手の男たちの方を向き睨みつけた。

 今ここで無駄に走って体力を減らすより、逃げ出せる隙が出来たときのために温存しておいた方が良いと考えていた。

 裕太の陰に隠れるように、エリィは裕太の背中をギュッと掴んで。


「しつっこいわねぇ! ……きっとアイツらあたしを暗がりに連れ込んで、この綺麗な身体をめちゃくちゃに穢すつもりなのよぉっ!」

「おい銀川、そんなこと言ってる場合かよ!」


 頬を赤らめながら素っ頓狂な被害妄想をするエリィに、裕太は思わずツッコミを入れる。


「そうッスよ! 俺たちゃそんなひどいことしねえッスよ!」


 裕太に同調するように、小太りの男がエリィの妄想に反論しつつ二脚バイクの荷台から飛び降りた。

 続けて、バイクを運転していた細身の男もバイクを降り、ポケットに手を突っ込みながら前かがみで威圧する。


「おとなしくしてりゃあケガはさせねえんだよ!」


 ガラの悪い2人の男は、ニタニタした嫌らしい笑みを浮かべながら、裕太とエリィに向かって1歩、また1歩と近づいて来た。

 男たちの表情が、この場を照らす街灯の絶妙な角度によって、悪鬼のような不気味さを醸し出している。

 裕太たちもまた、男たちとの間隔を保つようにジリジリと後ろへ下がっていった。


「!」


 そのとき、突然裕太たちの背後の校庭の地面が、淡く光りだした。

 光は円を描くように広がり、やがてその内側に六芒星ろくぼうせいえがき出す。


「笠本くん、何これ!?」

「何か出て来る……!」


 裕太とエリィ、そしておそらくは追っ手の男達も、光によって校庭に描かれた、上から見れば魔法陣のような模様になっているであろうそれに視線が釘付けになっていた。

 固唾を呑んで魔法陣を見つめていると、やがてその魔法陣の中心から、まるで地中から出てくるように何か巨大な物体がせり上がってくる。

 カクカクした人の顔のようなものがついた頭部、白い装甲に覆われた肩と腕、赤と青と黄色が織り交ざった鮮やかな色使いの胴体と脚部。


 魔法陣から出現したそれは、まるでアニメに出てくるヒーローロボットが、現実に現れたかのような物体だった。

 そのロボットは、あたかも初めからそこにあったかのように、9メートルほどの高さから裕太たちを見下ろし佇んでいる。


「きゃ、キャリーフレーム……!?」

「いえ、見たことがないマシンよぉ……!」


 見たことのないロボットを前にして、裕太とエリィは思わず狼狽した。

 何しろ、普段から工事現場や建設現場などで人型ロボット(キャリーフレーム)は見慣れているが、そういったキャリーフレームは実用性重視の無骨な外見である。

 今、目の前に出現したような、言ってしまえば趣味に走ったようなデザインの物は、この17年弱の人生の中で、一度も見たことがなかった。


 趣味の塊のようなロボットは突然、その巨大な両足を横に開き腕を振り上げ、角ばった口を開いて叫んだ。


「ジェイッ! カイッ! ザァー!」

「「喋った!?」」



    ───Cパートへ続く

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