第26話「出発! 伝説の宝島へ!」【Eパート あっけなく】
【5】
「かーっ! うちもあの合体一緒にやりたいわー。っと、そこっ!!」
レバーのトリガーを引くと同時に〈エルフィスMk-Ⅱ〉が手に持つライフルが火を吹き、〈ラノド〉の胴体に風穴を開ける。
顔に走る線が薄ぼんやりと光る感覚に頬をなでながら、内宮はレーダーに写った敵影に目を向ける。
裕太一行の中でも腕利きということで機体を貸し与えられ、半ばノリで戦場へと出た内宮。
一番戦闘経験があるであろうカーティスがサボりに徹したのもあるが、あの英雄機エルフィスの系列機を与えると言われ、やる気にならないキャリーフレーム乗りもいない。
修学旅行の宇宙怪虫事件からエルフィスに乗る回数が増えている内宮は、物語の主人公気分で鼻歌混じりに戦っていた。
空に開いた穴から大量に飛来する翼竜型兵器。
周囲の宇宙海賊機たちと連携し、一つ一つ的確に撃ち落としていく。
向こうから放たれたミサイル群はライフルで撃ち落とし、ビームセイバーで切り落とす。
「やるなあ、あの娘」
「レーナお嬢といい勝負じゃないか?」
「いや、お嬢より丁寧な戦いで品がある」
「とても民間人とは思えん」
周囲の〈ザンク〉たちから通信機越しに響く、内宮を褒め称える声に気合が入りつつも(これで笠本はんと一緒に戦えてたらな)と状況に満足はしきれていなかった。
戦艦ネメシスを挟んで反対側を守る想い人を考えながら、再び襲いかかる翼竜に向けてトリガーを握りしめる。
※ ※ ※
『カイザーフィールドッ!』
機械魔獣リバイA3が巨大な口から放った極太のエネルギー光線を、ハイパージェイカイザーが手のひらから発するフィールドで受け止める。
翠水晶の障壁に阻まれたエネルギー波がその輝きを失い、糸のように細くなり消滅する。
「ちょっとぉ、そのバリアってフォトンフィールドじゃなかった?」
グッとガッツポーズで決めたジェイカイザーの横腹を、エリィの指摘がつつく。
『私のログにも初発動時にそのように言い放った記録が残っています。それからフィールドの出し方も違いますね』
「ったく、カッコつけるんなら徹底しろよな」
『うるさーい! かっこいいからいいのだ! こういうのは見た目が良ければテキトーでも……』
緊張感のないコックピット内で2人と2機が言い合う中、敵のミサイルを示す無数の光点がレーダーに映りだした。
迎撃しようと構える前に、周囲で次々とミサイルが爆散しレーダーが静かになる。
「50点、周りの雑魚はわたしたちで片付けるからボスは頼んだわよ。ほらエルフィス星人、行くわよ!」
「私はエルフィス星人ではなく魔法騎士エルフィスなのだが……」
ハイパージェイカイザーの両隣から、ふたりが離れる。
あの二人ならば心配はいらないだろう。
正面の海水を割り、飛び上がる機械魔獣を見据えて構えを取る。
「さーて、いきなり必殺技を決めてやるか?」
『待て裕太! まずはギリギリになるまで通常兵装で相手をするのだ! 尺が余る!』
「シャクって何よぉ、テレビ番組じゃあないのよ!」
『番組の終わり際を気にする必要はありません。ご主人様、フォトンエネルギーの準備は万端です』
『あっ、ジュンナちゃん! 私に断りもなく……』
ハイパージェイカイザーの両腕が展開し、フォトンの水晶が溢れんばかりに広がってゆく。
操縦レバーを握りしめ、両手で一本づつジェイブレードを抜く。
二本の剣の柄を重ね合わせ、接続。
薙刀めいた形状となった武器の上下から、フォトンで形作られた巨大な刃が出現した。
装填されるエネルギー量に喉を鳴らしながら、裕太はペダルをこれでもかと踏み抜く。
跳躍するハイパージェイカイザー。
振り下ろされる巨大な剣。
「必!」
「殺!」
「ダブルジェイブレード!!」
「ハイパーフォトン斬りよぉ!」
『二刀両斬剣!!』
『わー』
緑色の一閃が振り下ろされる刃と共に走り、機械魔獣ごと海を切り裂いた。
金切り声のような断末魔と共に、巨大な筒状の怪獣の身体が裂け、その断面から光が漏れ出す。
そして巨体が大爆発を起こし、激しい衝撃波で高い津波が巻き起こった。
主力の機械魔獣がやられたからか、残る翼竜型の〈ラノド〉が出てきた穴へ戻るように帰っていく。
そして、一帯が静かになると空の大穴も閉じて無くなった。
「やっぱ合体のパワーが有ると一撃で終わるから楽だな」
「ああん。でもあたし、もっと笠本くんと一緒に戦いたいなぁ♥」
「はいはい……ん?」
波が落ち着き穏やかになった海面に、何かが浮いているのが裕太の目に入った。
バーニアを調節しながら高度を落とし、ジェイカイザーの手で浮いている“それ”をすくい上げた。
「笠本くん、それなぁに?」
「これは……人間だ!」
……Fパートへ続く