第25話「奇跡のハイパー合体!」【Gパート 新たな始まり】
【8】
「あーあー、ゴーワンの奴あっさりやられちゃった」
まるで贔屓の選手がスポーツで負けたのを見たかのように、他人事のような悔しがりをするフィクサ。
グレイは彼の振る舞いに何かアクションを起こすこともせず、ただ映像に映るハイパージェイカイザーを見据えていた。
(再び笠本裕太とやりあう時があれば、俺はアイツと戦えるのか……!)
身体にみなぎる興奮を抑えながらも、握った拳を震わせる。
好敵手が遂げた格段のパワーアップに、どこか高揚感にも似た喜びを隠しきれないグレイ。
しかしその気持ちも、ジェイカイザーの周辺の廃墟と化した街の風景を見ると、震えを抑えられる程度には少し冷静に近づいた。
「あれほど派手に暴れてしまっては、今後の活動に支障が出るのではないか?」
「構いやしないよ。どの道ぼくらはこの国……日本だっけ? ここから離れるからね」
「どこへ行くんだ?」
グレイの問い掛けに、フィクサは指をパキンと鳴らすことで答える。
音を聞きつけた、相変わらずペストマスクで顔を覆っているペスターがいそいそとリモコンのような小さな装置を操作。
ジェイカイザーが写っていたモニターに地図が描き出される。
「僕らの次の目標は──!」
※ ※ ※
「いやぁ、見せてもらったぜ。ボウズの底力」
警察に回収されるハイパージェイカイザーを背に、大田原が特濃トマトジュースを吸いながら裕太の肩にポンと手を乗せる。
「しかし、最強技に腕が耐えられねぇとはな。訓馬の爺さんに改良してもらわなきゃならんな」
「大田原さん。この街はどうなるんですかね」
激しい戦いの中で破壊され、瓦礫の山となったビル街だった風景を指差し尋ねる裕太。
人並みの心を持つ裕太には、破壊された街の風景がとても重く感じていた。
大田原はストローをズゾゾと鳴らし、空になったジュースのパックを握りつぶす。
「ボウズは気にする必要ねぇよ。こうなったのは俺達の体たらくのせい。ボウズはこれ以上ひどい破壊から街を守ったヒーローなんだぜ?」
懐から取り出した新しいジュースにストローを刺す大田原に、頭をとんとんと軽く叩かれる。
「ヒーローか、よりらしくなっちまったな」
この前までは重圧だったヒーローという言葉は、今の裕太には少し心地のいいセリフになっていた。
まるでアニメの主人公のように、合体するマシンで怪獣をやっつける。
叶えようと思って叶えられるものではない非日常の体験をした少年は、自分の立場を誇れる程度に余裕を生み出せていた。
「あ、じゃあ大田原さん。訓馬の爺さんに合体パーツの開発が次に必要になるまでに済ませといてって言ってくれます?」
「おうよ、伝えとくぜ」
「笠本くーーん! さっきの必殺技の名前についてジェイカイザーが話があるってーー!」
「今行くよ銀川。それじゃあとは頼みます」
手を振り、銀川のもとへ走る裕太。
沈みゆく夕日の光だけが、彼の影を伸ばしていった。
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登場マシン紹介No.25
【ハイパージェイカイザー】
全高:14.7メートル
重量:24.3トン
ジェイカイザーとブラックジェイカイザーウィングネオカスタムが合体した形態。
もとの2機をあわせたより質量が増えているが、合体時に接続パーツが付与されるためである。
動力であるフォトンリアクターが2基直列しており、双方のフォトンエネルギーで互いに増幅しあっているため出力は2倍以上となっている。
また、ジェイブレードも2機のものを両方持っているため二刀流、合わせて強力な一本にするといった使い分けが可能。
守備面も厚く、フォトンエネルギーをバリアーにすることで攻撃を防ぐ障壁を生み出すことができる。
フォトンエネルギーのコントロールにも優れており、コブシにエネルギーを纏わせ擬似的なロケットパンチとして撃ち出すといった技が使える。
キャリーフレームを凌駕するパワーを持ったスーパー機体であるが、まだ見ぬ問題点も多数はらんでいる。
【次回予告】
借金返済の予定がだいぶ遅れていることに焦る裕太。
一攫千金の夢を求めて南国にある宝島を目指す彼らの前に、宇宙海賊が現れる。
そして襲い来る黒竜王軍。その時、彼らは……!
次回、ロボもの世界の人々26話「出発! 伝説の宝島へ!」
「進次郎さま、わたしとこの子とどっちが良いの!?」
「私ですよね! 進次郎さん!」
「えー、えーっと……」
「バカだらけね、ここ」