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第25話「奇跡のハイパー合体!」【Eパート ハイパー合体】

 【6】


「グハッハッハッハ! 進め、蹴散らせ、ぶっ壊せ! 機械魔獣ラノザールT09(ティーゼロナイン)!」


 発狂したように笑いながら、血走った目で機械魔獣の操縦をしながらゴーワンが叫ぶ。

 開発途中の機械魔獣を強引に持ち出し、その巨体をもって憎きルアリ界の街を蹂躪じゅうりんする。

 その破壊行為の醸し出す快楽の中で、かつて狡猾さで売っていた黒竜王軍幹部の姿はもはや無かった。


 機械魔獣の中に格納された魔術巨神によって操縦するその構造は、例えるならマトリョーシカのような二重構造となっている。

 機械の中の機械内の閉鎖空間で、外の風景を映し出す魔鏡に囲まれながら、ゴーワンは操縦桿代わりの水晶を握りしめる。

 あれだけ苦労した光の勇者が、圧倒的な力の前でもがき、たじろぎ、後退りする。


 破壊行為という原初の快感に包まれているゴーワンの頭からは、完全に当初の目的は失われていた。



 ※ ※ ※



 怪獣の口から放たれた光線が、コンクリートで固められた道路をえぐり、巻き込まれた無人の乗用車が爆発を起こす。

 崩れかかったビルから剥がれ落ちる破片で、ジェイカイザーの頭部に細かい傷がついてゆく。


 考えつくすべての攻撃を叩き込んでもなお、ダメージひとつ負った様子のない怪獣。

 成すすべのない状況に、裕太は歯ぎしりする。


『大田原どのから入電! あと三十分以内に怪獣を倒せない場合は自衛隊が出る……だ!』

「わかっちゃあいるけどよ……!」


 自分の無力さに苛立ちながら、コンソールをコブシで叩く。

 やれるだけはやった。

 わかっていても、退けなかった。


 自分の無力さを体感するのは、これで何度目だろうか。

 しかし今までと違うのは、足りないのが腕ではなく、火力であること。

 いくら不意をつこうとも、相手の鋼鉄のような表皮を貫けるだけの火力が足りなかった。


「笠本くん……」

『マスター、そんな声を出してはご主人様が不安になります』

「でもぉ……」


 元気のないエリィの声が、通信越しに響く。

 何か、何か手はないか。


 ふと、応接間で訓場が口にした言葉を思い出した。


「そういえばジェイカイザー。爺さんが言ってた、解放された新機能ってなんだ?」

『うむ、それがだな……私とブラックジェイカイザーによる合体機構のことなのだが』

「それを早く言えぇぇぇ!!」


 ────合体。


 それは誰もが思い描くロボットのパワーアップ要素である。

 異なる複数の機体が合わさり、何倍もの出力を得る。

 アニメやマンガに登場するヒーローロボットに、不可欠と言っていいほどのギミックだ。

 その力を使えるのなら、活路は開けるはず。


『私だって言いたかったのだ! しかしな……』

「何だよ」

『ご主人様、ここは私が。私がジェイカイザーと合体するのが嫌なのもありますが、実は合体機構に必要な接続パーツがまだ完成していないのです』

「接続パーツ?」

『合体の際に2機が重なる部分です。もともとジェイカイザーとブラックジェイカイザーウイングネオカスタムは別々に作られた機体ですので、合体するのに緩衝材となるパーツが必要なんですよ。パーツの設計図自体は完成しているんですけど……』


 合体できるが、部品が足りない。練習が必要とか、合体成功率とか以前のあまりにも致命的な欠陥である。

 今から作ってもらうには時間がかかりすぎる。


 今、そう今すぐに必要なのだ。


「じゃあ、私に設計図を見せてください!」


 モニターに写ったのは、携帯電話の自撮りカメラで撮ったようなアングルのサツキ。

 ジェイカイザーの足元を見ると、いつものような朗らかな笑顔を浮かべてサツキが携帯電話を持った腕を前に突き出していた。


「金海さん、設計図を見てどうするのぉ?」

「私達がそのパーツに変身するんです!」

『変身といっても、パーツの質量はサツキちゃんよりずっと大きいんだぞ!』

「大丈夫です! 建材に擬態していた仲間が今ここにいっぱいいますから!」


 サツキがそう言った途端、あたりに散らばるビルの残骸が淡く発光を始めた。

 つくづく、水金族が敵性種族じゃなくてよかったと裕太は思いつつ。


「ジェイカイザー、その設計図を金海さんの携帯に送ってやれ!」

『わ、わかった!』


 コンソールに図面が次々と映し出され、送信状況を知らせるバーが満タンになっては消えていく。

 そうしている内にサツキも携帯電話を見ながらウンウンと頷き、片手を天高く振り上げた。


 地面に転がるコンクリートの破片が金色に光り輝き、融解。

 黄金の液体となったそれらが宙に浮き、混ざり、図面で見た形状へと形づくられていく。

 コンソールに表示される『ハイパー合体』の文字。

 裕太は、今ここで自分がやるべきことを理解した。


「行くぞ、みんな! ジェイカイザー、ハイパー合体!!」


『おう!』

「ええ!」

『はい?』


 てんで一体感のない応答と同時に、2機のジェイカイザーが飛翔した。


 エリィの乗るブラックジェイカイザーの四肢が分離し、巨大な手足へと変形する。

 水金族が擬態したパーツがジェイカイザーの足を火花を上げながら包み、そこに変形したブラックジェイカイザーの脚が合体。

 今度は合体パーツがジェイカイザーの腕を通し、一体化。

 足のときと同じようにブラックジェイカイザーの変形した腕が装着される。

 エネルギーが通り光のラインを浮かび上がらせる腕から、金色に光る手が伸び力強く宙を握る。


 残されたブラックジェイカイザーの胴体が上下に分離し、上半分が仮面をかぶせるようにジェイカイザーの頭部を包み込む。

 水金族が擬態した残りのパーツが次々と舞い上がり、ジェイカイザーの胴体を覆っていく。

 最後に残されたブラックジェイカイザーの胴体がコックピットハッチを守るように装着され、胸に輝くエンブレムが現れた。

 そして、仕上げとばかりにジェイカイザーの口元が鋼鉄のマスクで覆われる。


「すげぇ、本当に合体してる!」

「やだ、ちょっと笠本くん振り向かないでぇ!」

「え? のわっ!?」


 背後から聞こえたエリィの声に振り向いた裕太の目に、彼女の足の間にある白い布が飛び込み赤面する。

 いつの間にかコックピット後方に現れた一段高い椅子に座っているエリィの位置は、裕太が振り向けばすぐに彼女のスカートの中が見えてしまう高さだった。


『おい! 私の中でラブコメをするんじゃない! リア充爆発しろ!』

「俺たちが爆発したら、燃え上がるのはお前の中だぞ」

『それはいかん!』

 

 恐らくは同性、それも男同士のパイロットを想定していたのか、あるいは設計者がラッキースケベを狙ったのか。

 まんまと赤面してしまった裕太は自分の両頬を両手で軽く叩き、気合を入れ直す。


「笠本くん、合体終わったみたいよぉ?」

「わっ、本当だ。えーとこう言うときはなんて言おうか……」

『ご主人様、ジェイカイザー参上とかいかがです?』

「うーむ、それじゃあ不良みたいじゃないか……?」

『ならば私に任せろ!!』


 気合十分なジェイカイザーが、自ら合体した機体でポーズを取り、大きく息を吸ったような音を出す。


『正義の力をこの手に握り! 悪を滅する光と成す! 輝光勇者ハイパージェイカイザー! 悪を倒しにただいま見参っ!!』


「悪を滅する、と悪を倒しに、が被ってないか?」

『ご主人様の言うとおり、片方は別の言葉に変えたほうが無難かと』

「合体したからハイパーつけるのって安直じゃなぁい?」

『ええいうるさいな! せっかく私が夜も眠らずに考えた決めゼリフにケチを付けるんじゃあない!!』



  …………Fパートへ続く

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