第24話「新世代」【Gパート 新たなる修羅場】
【10】
裕太が目を開けると、そこはジェイカイザーのコックピットだった。
目の前にある〈エルフィスGD〉のコックピットを覆うフォトン結晶が砕け、ハッチが開く。
パイロットシートの上でぐったりとしている内宮の身体をジェイカイザーで掴み、引っ張り出した。
内宮が着ているパイロットスーツに繋がれていた様々なケーブルが音を立てて引きちぎれ、離れていく。
最後の一本が切れると、赤い光を放っていた〈エルフィスGD〉のカメラアイが黒く沈み、動かなくなった。
「……ふぅ。なんとかなったわね」
「ああ。助かったよグレイ、ありがとな……ってあれ?」
礼を言おうと〈ハクローベル〉の方を見ると、すでにコックピットは空だった。
指名手配されてる身だから引き際が早いのだなと裕太は自己完結し、操縦レバーを操作してそっと内宮を地面に下ろす。
裕太もエリィを連れてジェイカイザーから降り、眠る内宮の元へと走り寄った。
「ここは……うちは……」
もともと細い目を、薄っすらと開き覚醒する内宮。
覗き込んでいた裕太の目と内宮の目が合うと、内宮は頬を赤く染めて目を逸らした。
(精神世界での件は、なかったことにはならないよな……)
冷や汗をかきつつ内宮を抱き起こす裕太。
すると、内宮の顔の表面にぼうっと線のような光が走った。
「今のは……」
「アカン……うち身体を弄くられてもうて、なんや気持ちが高ぶると光るみたいなんや。なんか変やろ? 恥ずいわ……」
「変じゃないさ。内宮が無事ならそれでよかった」
「ホンマか……? 笠本はん、うちは不束者やけど今後も……」
「ちょーっっと待ったぁ!!」
見つめ合う内宮と裕太の間に突如、エリィがこわばった顔で割り込んで叫んだ。
「あのね内宮さん。チャンスがあるとは言ったけれど、あたしは引き下がる気ゼロだからね!」
「ほーん! うちのほうが先に告白したんや! 笠本はん、な! な!」
「笠本くんとは最初にあたしのほうが仲良しになったのよ! 笠本くん、何か言ってよ!」
『羨ましいぞ裕太! 二人の女子高生に言い寄られるなんて! 私とそこを変わってもらおうか!』
「…………はぁ」
ふたりと1機にまくしたてられ、裕太はため息をついた。
それは、無事に内宮を救い出せた安心感と今後への不安が入り混じった、それはそれは複雑なため息だった。
※ ※ ※
「ゴーワン」
「はっ……!」
暗い部屋の中、名前を呼ばれて震え上がるワニ男の姿にグレイは呆れていた。
実父を手にかけたに等しい男がこのような小物だと、復讐をする気さえ失せていた。
ちら、と横に目をやる。
グレイの隣、ひときわ豪華な椅子に座っているのは黒竜王軍のニューリーダー。
その座はグレイにとペスターが言っていたが、グレイが断ったため繰り上がった男。
「貴様に最後のチャンスをやろう。命に変えても、あの光の勇者を始末せよ。もしも失敗すれば……わかるな?」
「ぐっ……わかった……」
冷や汗でぼたぼたと床を汚しながら部屋を後にするゴーワンを見て、この組織における実力主義を感じ取る。
血筋や経歴にとらわれずに成り上がることが、グレイの目下の目標であった。
ゴーワンが立ち去ったのを確認すると、ニューリーダーは手に持ったカップの中身をわざとらしく飲み干す。
「これであの世界に巣食っていた古い世代の一掃が完了する」
「……その言い方、まるでタズム界出身ではないように感じるな」
「フッ……。黒竜王軍も英傑たちのように、異世界から人員を調達していたということさ」
「なるほどな。それで、お前はどこから来たんだ?」
「私はな……」
おもむろに立ち上がり、部屋に闇を満たしていたカーテンを勢いよく開けて言った。
「私はフィクサ・グー。偉大なるヘルヴァニアの支配者グロゥマ・グーの血を引く者だ」
「ああ、そう」
「ああそうじゃない! もっと何か反応があるだろ!」
「いや、ヘルヴァニアに俺は興味ないしな」
うなだれて椅子の肘置きを殴りつけるフィクサを見ながら、グレイは天井を見上げた。
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登場マシン紹介No.24
【エルフィスGD】
全高:8.0メートル
重量:7.8トン
エルフィスに拡張バックパック「ガンドローンパック」を装着した姿。
劇中に出てきた型は黒竜王軍による改造を施されているが、スペック状の搭載ガンドローン数は背面パックに8機、両肩にそれぞれ4機ずつの計12機である。
エクスジェネレーション能力者の搭乗を想定してはいるものの、エルフィスが実戦投入された半年戦争当時にはExG能力の研究は中途半端にしか進んでおらず、このパックは戦後に記念として作られたもの。
ちなみに、エルフィスの拡張バックパックには頭部のメインセンサー機能の増設のためパックごとに異なるフェイスマスクが用意されており、ガンドローンパックのフェイスマスクは「鬼」をモチーフとしたものとなっている。
【次回予告】
内宮を救出し一息ついた裕太たちの前に、後のないゴーワンが呼び出した機械魔獣が姿を現す。
体格差により苦戦を強いられる裕太たち。そこに訓馬から届くひとつのコード。
そして、ついにジェイカイザーに隠された機能が解放される!
次回、ロボもの世界の人々25話「奇跡のハイパー合体!」
『誕生! ハイパージェイカイザーブラックウィングネオカスタム!!』
「長ぇよ!!」