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第24話「新世代」【Dパート 敵は味方 味方は敵】

「内宮千秋どの……でござるか?」

「声門認識に引っかかったであります。笠本裕太くんから捜索願い出されてましたのでインプットしていたのであります」


 富永は動けなくなった〈ハクローベル〉から這い出ながらガイに説明した。

 内宮という人物が裕太の友人であったこと、知らずに何度も交戦していたこと。

 黒竜王軍の攻撃から裕太を守る形で爆発の中に消えたこと、そのショックで裕太が心に傷を負ったこと。


「そのような人物を勇者殿にぶつけるとは卑怯千万! 黒竜王軍め許すまじでござるな」

「であります! それでガイどの、〈赤竜丸〉はまだ帰せないのでありますか?」

「先の演習の疲労もあって〈赤竜丸〉もバテバテだござるからな……よし、ゆっくり休めよ〈赤竜丸〉」


 ガイが〈赤竜丸〉から弾き出されるように現れると、彼の愛機は光に包まれて消えていった。

 これで〈ハクローベル〉を動かせる、と富永がハッチに手を伸ばそうとした刹那、誰もいないはずのコックピットハッチが閉じ、〈ハクローベル〉が立ち上がった。


「だ、誰が乗っているでありますか!? いつの間に!?」

「誰だっていいだろう」

「ぬ!?」「え!?」


〈ハクローベル〉から響く男の声に、富永とガイは思わず固まる。


「あのエルフィスの出現は黒竜王軍の意志でもないし、恩人を利用された恨みもある」

「その言い分、黒竜王軍でござるか!? ええい、名を名乗れい!」

「その必要はない。この機体、借りるぞ」


 〈ハクローベル〉に乗った何者かは、そのまま〈エルフィスGD〉の方へと向かっていった。



 【6】


 それがエクスジェネレーション能力によるものかはわからない。

 しかし、エリィは確かに目の前の巨体の中に内宮の存在を感じていた。


「本当に、あれに内宮が乗ってるのか……?」

「声だけじゃ自信なかったけど、絶対!」

「生きていたのは嬉しいが……内宮!!」


 裕太が駆け出し、〈エルフィスGD〉の前に無謀にも飛び出す。

 救えなかったと思っていた友人が生きていたのだ。

 たとえ無謀でも、エリィには裕太を止める気にはなれなかった。


「内宮! 俺がわからないのか!」

「かさもと……はん……」

「内宮!!」


〈エルフィスGD〉が向きを変え、裕太を見下す形でピタリと止まる。

 声が届いた──と思ったのもつかの間、ガンドローンの一機が分離し、砲身を裕太へと真っ直ぐに向けた。


「笠本君! 危ない!!」


 エリィが駆け出すその瞬間、突然まぶしいほどの光がガンドローンへとぶつかり、弾け散った。

 機能を停止したガンドローンは空中で何度か火花を散らし、糸が切れたように落下。

 コンクリートに覆われた地面へと、めり込むように突き刺さった。


「何をしている、笠本裕太! 早く貴様のマシンを呼べ!」


 聞き覚えのある声に振り向くと、さっきまで富永が乗っていたはずの〈ハクローベル〉が手にショックライフルを構えていた。



 ※ ※ ※



「笠本くん、あの声……!」


 エクスジェネレーションの能力を持っていない裕太でも、誰の声なのかは聞いた瞬間にわかっていた。

 しかし、状況にはわからないことの方が多く、答えが期待できなくても問いかけてしまうのは人のさがである。


「グレイ! なぜお前がここに!?」

「話している暇はない! 奴は黒竜王軍に手を加えられている! 救いたいならおとなしく言うことを聞け!」


 グレイが内宮を救おうとする理由には心当たりが無い。

 しかし、味方にするにはこれほど頼もしい相手もいないだろう。

 裕太はこの場をグレイに任せて一旦退き、エリィと共に格納庫の近くへと走った。


「笠本くん、あたしも戦う!」

「いや、今回は相手を倒せばいいいつもの戦いとは違う。銀川は避難しててくれ」


 言葉を選んでいる余裕が無いにせよ、「足手まといだから付いてくるな」という宣告に等しい言葉である。

 しかし、その真意を読み取ってくれたのか、エリィは食い下がることも嘆願することもなく、ただ無言でコクリと頷いてくれた。


 それが能力による予知めいた理解なのか、それとも日頃の付き合いが生んだ阿吽あうんの呼吸なのかはわからない。

 けれど、これで思い切り戦える。

 裕太は格納庫近くの開けた場所で、携帯電話を空高く掲げ、叫んだ。


「来いッ! ジェイカイザァァッ!」


 いつもより力の入った叫びに呼応し、裕太の眼前に魔法陣を描いた立体映像が映し出される。

 その魔法陣は裕太の気合に応えるようにいつもより強く発光し、その中心からジェイカイザーの巨体を力強く出現させた。


 ジェイカイザーが屈み込み、腹部のコックピットハッチが開く。

 斜め下へと降りたハッチは搭乗へのタラップとなり、裕太を操縦席へと導いた。


 パイロットシートに腰を落とし、いつもの場所へと携帯電話を置く裕太。

 操縦レバーを握ると、慣れた刺激が指先を包み込む。

 次々と点灯し、外の風景を映し出すモニター、表示されるコンソール。


『行くぞ裕太! 内宮どのを救い出すのだ!』

「ああ!」


 力いっぱいペダルを踏み込むと、ジェイカイザーが跳躍した。



  ────Eパートへ続く

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