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第24話「新世代」【Bパート 決闘! 新型機!】

【3】


「おや、笠本裕太くんではないかね?」

「あっ、訓馬の爺さん」


 裕太たちがダラダラしていた一室を訪ねた老人に、裕太は軽く手を振った。

 おもむろに、待ってましたという感じで大田原が立ち上がる。


「おう、訓馬。ようやっと準備ができたか」

「ああ、な。これから、かの英傑どの相手に模擬戦だ」

「あっ、わかった! 警察の新型キャリーフレームねぇ!」


 手のひらに拳をポンと乗せ、何の説明もないのに答えにたどり着いたエリィが笑顔を浮かべる。


(これもExG能力の賜物たまものなのか?)


 などと考えている間に、足音を鳴らして部屋を出る訓馬と大田原。

 彼らを追うように走るエリィ。


「銀川、本当にキャリーフレーム好きだよな」


 古ぼけた蛍光灯が頼りなくチカチカと点滅を繰り返すなか、最近は忘れかけていた事を裕太は口に出した。


 黒竜王軍との散発的な戦いが続く中、しばらくは異世界から来た魔術巨神マギデウスばかりを相手にしている。

 魔術巨神マギデウスの存在はエリィの興味を強く惹かなかったようで、彼女が目を輝かせる場面に会うことは前よりも減ってしまった。

 裕太にとっては、未知の敵である黒竜王軍の機体と戦い、その戦闘データを収集することは自分の借金返済に大いに役立つことであるのだが。


「行ってやれ、裕太」

「んあ?」

「裕太さん! 警察の新型ということは、きっと一緒に戦うかもですよ!」

「いやいやサツキちゃん。それよりも銀川さんを追っかけてやれって天才の僕は言いたいわけだよ」


 二人の友人に催促され、その理由にも頷きながら裕太は「わかったよ」と背中越しに返し、小走りでエリィの後を追いかけた。



 ※ ※ ※



 ジリジリと照りつける日差しの下。

 額に汗をにじませながら、作業着姿の男が腰の剣を抜いた。


「出でよ! 赤竜丸!!」


 振り上げたガイの剣から稲妻が走り、彼の背後に浮かんだ本物の魔法陣から赤いマシーンが浮かび上がる。

 周囲から起こる、野次馬をしてる警察署員たちの拍手喝采。

 まるでヒーローショーの主演のように、笑顔で手を振るガイの姿に、裕太はため息をこぼした。


「いつの間に、ここでオヤジによる召喚ショーが恒例化したんだ?」

「あ、笠本くんも来たのね?」


 野次馬に混じってショーを見ていたエリィが手に持つ扇子で顔をあおぎながら振り返る。

 裕太は人混みに割り込むようにして、彼女の横のポジションを陣取った。

 エリィが動かす扇子の流れ風が、火照った身体を気休め程度に冷ます。


「ボウズ、別にあれがメインじゃねぇからな?」

「わかってますよ大田原さん。それで新型はどこに?」

「まあ待ってろ、すぐに出る」


 ガクンと、地面が機械的に揺れた。

 何が起こるのかと理解する前にガイの前方の床が左右に開き、その下から黒と白のパトカーを模したカラーリングの巨体が姿を表す。

 見かけこそ現行機である〈クロドーベル〉とあまり変わりないように見えるが、頭部の形状が鋭角が目立つ形になり、凛々しい顔立ちをしているように見えた。


「あれが、新型キャリーフレーム〈ハクローベル〉だ」

「はくろう?」

「白い狼と書いて白狼ってな。ドーベルから狼にランクアップだとよ」

「へえ」


 取り立てて大差のない外見を見ながら、裕太は空返事を返す。

 冷めた裕太とは対象的に、飛び跳ねて喜びながら携帯電話のカメラで写真を撮るエリィ。


「すごぉい! 脚部がスマートになってるのにバランスがあそこまで安定しているなんて! あれはきっとプラズマシリンダーのパワーでドルフィニウム製の装甲を支えているのねぇ! 腕部なんて……!」


 シャッター音を鳴らしながら早口でまくし立て、構造を推測するエリィ。

 久々に見た彼女のイキイキした姿に、若干引いてしまっても裕太を咎められるものはいないだろう。


「……訓馬の爺さん。もしかしてあれも爺さんが関わっているのか?」

「勘違いをするな。あくまでも私は江草えぐさ重工に口利きしただけだ。私の主業務は、ジェイカイザーとブラックジェイカイザーウィングネオカスタムの整備だからな」

「そりゃあ、ありがたいこって」


「では、これより模擬戦を執り行うッ!!」


 周囲に響くキーンとしたハウリング混じりの大声に、この場にいる大勢の視線が一点に吸い寄せられる。

 向かい合う〈赤竜丸〉と〈ハクローベル〉の間に立つように、拡声器を握った照瀬の姿がそこにあった。


「えー……両者、使用武器は支給された電磁警棒のみとするッ! 勝負は一本! 先に相手を制したほうが勝ちであるっ!」


 場馴れしてないのが丸わかりの照瀬の進行にもかかわらず、歓声に包まれる一帯。

 白い巨体に似つかわしい警棒を持つ〈ハクローベル〉と、警棒が似つかわしくない〈赤竜丸〉が一歩前に出て、深々と一礼を交わす。


「笠本くん! 始まるわよぉ!」

「見てるから耳元で叫ばないでくれ」


「模擬戦、開始ぃっ!!」


 観衆が見守る中、戦いの火蓋が切って落とされた。



 ※ ※ ※



「富永どの! 拙者から行かせてもらうでござるよ!」


 先に動き出したのはガイの操る赤竜丸。

 真正面から素早く接近し、手に持つ警棒を振りかぶった。

 しかし、振り下ろされるよりも前に〈ハクローベル〉が左へと跳躍。

 そのまま横方向に回り込むように弧を描いた動きで転がり、赤竜丸の背後をとる。


「今度はこちらの番であります!」

「ぬうっ!」


 背後から赤竜丸に警棒による鋭い突きを放つ〈ハクローベル〉。

 赤竜丸は素早くふりむきながら、同じく警棒でその一撃を受け止め後方へと飛び退いた。

 戦闘開始の状態へ互いの位置が入れ替わった形で戻り、双方警棒を構え直す。


「やるでござるな! 富永どの!」

「ガイさんこそ、流石であります!」


 警棒同士が打ち合う音が、あたりに何度も響き渡った。


 跳ぶ、避ける、転がる、伏せる。

 一流の格闘家同士による真剣勝負もかくやといった身のこなしで、ふたつの巨体が大地を唸らせる。

 一進一退の攻防──その言葉がよく似合う戦いだった。



 ※ ※ ※



 ガキィン!


 よく響く金属音とともに宙を舞ったのは、〈ハクローベル〉の警棒だった。

 英傑の意地が〈赤竜丸〉に勝利をもたらした結果となったが、誰が見ても決して〈ハクローベル〉が劣っているわけではないことは明白である。

 互いに機体から降り、握手を交わすガイと富永。


 二人を称える歓声と拍手が、警察署の敷地内に広がった。



  ────Cパートへ続く

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