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第22話「出現! ブラックジェイカイザー」【Bパート 消えたエリィ】

 【2】


「なあ、カーティスのおっさん。銀川はこっちに来てないか?」


 眠そうな顔で玄関の扉を開けたカーティスに、裕太は開口一番そう訪ねた。


「んだよ、朝っぱらから……」

「いやいや、朝どころかとっくに午後すぎなんだが」

『わかったぞ、裕太! カーティス殿はアメリカ人だから、時差があるのだ!』

「ふわぁーあ……フォローしてぇってのはありがたいけどよ、アメリカは今深夜だぞ。それで、あの女がどうしたんだ? ケンカ別れでもしたか?」


 ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら詮索するカーティスに、裕太はため息をつきながら首を横に振った。

 これだから、カーティスの家は最後にしたのにと頭を抱える。


 裕太は今、エリィを探していた。

 休日の暇な昼間に食事へと誘おうかと彼女の家を訪ねたのだが不在。

 最初はどこかに出かけたのかと思ったのだが、電話をかけても応答なし。

 進次郎たち友人や知り合いを尋ねても、ひとつの情報も得られなかった。


『ふむ、裕太。振り出しに戻ってしまったな』

「振り出しというかノーヒントというか……」


「裕太さ~~ん!」

「ん? どわっ!?」


 背後から聞こえてきた可愛らしい声に振り向くと、一枚の紙を手に走り寄ってくるサツキ。

 その姿をみて、裕太は思わず後ずさった。


「……どうしたんですか?」

「金海さん……髪も服も泥だらけだぞ!」

「ああ、すみません! 襲われてたの忘れてました!」


 そう言いながら、全身を震わせるサツキ。

 肌や服の表面が波打つように波紋を描いたと思うと、全身から泥が地面にボトボトと音を立てて落ちていく。

 相変わらずの水金族の謎特性にドン引きしながらも、物騒な単語を聞き逃さなかった。


「そうだ、襲われたって何だ!?」

「襲撃とも言いますね。悪意のある何者かが危害を加える目的で他の者へと──」

「いやいや、意味を聞いてるんじゃなくて。何があったんだ?」

「えっとですね。昨日、エリィさんとお買い物に行ったら、人気ひとけのない場所で怖い人に襲われまして。私は頭を殴られて、エリィさんは眠らされて連れさられました!」

「連れ去られました、じゃねぇぇぇよ!! どこだ! どこに連れて行かれた!? 絶対やばいやつだよな!?」

「おいガキンチョ、落ち着け! 俺様を振り回してもなんにもならんぞぉぉぉ!!! ぐおっ!?」


 錯乱した裕太にジャイアントスイングで投げ捨てられ、庭の土に頭を埋めるカーティス。

 そんな彼のマヌケな姿を見て、裕太は正気を取り戻した。


「ハッ、俺は何を……」

『我に返ったか裕太! サツキどのが先程から何か渡したそうにしているぞ』

「渡す?」

「裕太さん、これ……」


 おずおずとサツキが差し出している紙を手に取り、中を見る裕太。

 その紙に書いてある文面に、思わず言葉を失った。


『裕太、紙には何と?』

「……」

『裕太! 裕太!?』

「……光の勇者・笠本裕太よ。お前の女は預かった。返してほしくば町外れの開発地域へと一人で来い。黒竜王軍」


『なっ……!? 黒竜王軍だと!?』

「おいガキンチョ! その黒竜王っての、こないだニュースで米軍にボコられてたやつだろ!? ヘッドがやられたんじゃなかったのか!? おい待て! おい!」


 土だらけの顔で詰め寄るカーティスを無視し、裕太は紙を握りつぶしながら無我夢中で駆け出した。



 ※ ※ ※



「おっ、グレイはん。久しぶりやな」

「お前は……内宮千秋か」


 メビウス電子を出た内宮は、特に用事もなく川沿いを散歩していた。

 そこで、テントを畳んでいるグレイに出会ったのだった。


「なんや、こないなとこで暮らしとったんかいな」

「笠本裕太に負けてからというもの、学校は退学。そして警察に追われる身だからな」


 クールな態度を貫きながら、盛大に腹を鳴らすグレイ。

 そんな彼の姿に同情して、内宮はカバンの中にあったおにぎりを差し出した。


「そ、それは……!」

「オーバーやなぁ、グレイはん。昼飯にと買ったもんやけど、うちからの餞別や」

「フン、ありがたく頂いておこう」

「食わへんのかい」


 懐にサッとおにぎりをしまうグレイにツッコミを入れる内宮。

 この間まで、こういうやり取りを訓馬やキーザ達とともにやっていたのが日常だった。

 しかし、時は少女を待ってはくれない。

 刻一刻と変化する情勢は、彼女の居心地のいい場所を次々と奪っていた。


「む……では、俺は行かせてもらうぞ。笠本裕太が近づいている」

「笠本はんが? なんで分かるんや」

「さあな」


 グレイはテント等の野営道具がパンパンに詰まっているであろうリュックを背負ったまま、小走りに川下の方へと走り去っていった。

 背後から足音に内宮が振り向くと、必至の形相で走る裕太の姿。

 自分の存在にも気づかず走り去るその姿を見て、内宮は言い様のない不安と嫌な予感に包まれた。


(笠本はんまで、いなくなってしもうたら、うちは……!)


 いてもたってもいられず、内宮はメビウス電子の方向へと駆け出した。



  ────Cパートへ続く

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