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第21話「決着!? 黒竜王!」【Eパート 黒竜王の最期】

 【5】


「えーと、騒擾そうじょう、器物破損、傷害・殺人未遂で逮捕であります!」


 金属がこすれるような音とともに、カエデの腕に手錠がかけられた。

 張り切る富永が「さあ、来るであります!」と声を張り上げながら、太田原と一緒にパトカーへとカエデを連行しようとする。

 しかし、カエデは敗北し捕まったというのに肩を震わせ、「フッフッフ」と不敵な笑い声を上げた。


「何がおかしいでありますか?」

「フフフハハハ! 烈火の英傑と光の勇者! あなた達はまんまと罠にかかったのよ!!」

「わ、罠でござるか!?」


 オーバーに驚くガイの横で裕太は「俺は勇者じゃねーけどな」とぼやいてから、「負け惜しみじゃねーの」とツッコンだ。

 しかし、カエデは心の底から笑っていた。

 敗北ではなく、勝利を確信した高笑いをしていた。


「あんたたちが私と戦っている内に、黒竜王さまがこのルアリ界へと降臨なさったのさ! もう間もなく、この世界は暗黒に包まれるのよ! アハハハハ!」

「……爆笑しているところに水挿して悪いんだけどよ」

「アハハハハゲホゲホッ……! あん? 何よ」

「黒竜王って、これのことか?」


 声をかけた太田原を睨みつけるカエデに、太田原はタブレットを取り出して少しばかり指で操作し、その画面を見せた。

 裕太とガイも横からそのタブレットを覗き込むと、そこにはビル街の大きな交差点に横たわる、巨大な黒いドラゴンを映した映像が映っていた。

 その周囲にはアメリカ軍のものとみられるキャリーフレーム〈ヘリオン〉が多数飛び回り、報道ヘリもその中に混じってけたたましい飛行音を鳴らしていた。

 映像を見たカエデの顔色がみるみるうちに青くなり、目の焦点がぶれて唇が震えだした。


「え、ちょ……何、これ……?」

「30分前に臨時ニュースがあってな、ニューヨーク上空に未確認巨大生物が出現。都市に攻撃の兆しありと米軍が出動、ものの数分で巨大生物は蜂の巣にされて落下、動かなくなったとよ」

「う、ウソよ……だって黒竜王さまは魔術巨神マギデウス10体分の力を持ってるのよ……!? そんな、簡単に……!?」


 声を震わせるカエデに、ガイが顎に手を当てて思い出したかのように口を挟んだ。


「拙者は感じたんでござるが、この世界の兵器はみな魔術巨神マギデウスと同等かそれ以上の力を持っているでござる」

「つまり、だ。10機分の力を持ってても、数十機に囲まれて袋叩きにされたら……」


「ウソよそんなことぉぉぉ!!!」


 真実を直視できないまま、カエデは絶叫とともにパトカーに消えていった。

 と、同時にガイの顔も青くなる。


「待つでござるよ。今ので黒竜王が討伐されたということは……」

「……オヤジ、役目終わったな」

「ああああぁぁぁぁぁ…………!」


 肩を落とすガイの背中を、裕太はポンと軽く叩いた。



 【6】


 訓馬の深い目は、メビウスの幹部で席が埋まった会議室に入ってきたローブ姿の大男を見据えた。

 目深く被ったフードの中には、人間のものとは思えない鋭い牙が見え隠れする巨大な口元がチラついている。


「ゴーワン様、黒竜王はやられちゃったみたい」


 男の背後から、童話に出てくる妖精をそのまま現実に映したかのような姿をした小さな少女が羽ばたき宙を舞って現れ、大男に耳打ちをした。

 大男は一言「予定通りだ」と言い、深く被ったフードを鱗の張った太い腕で自らのフードを外した。


「ワ、ワニ人間……!?」

「信じられん……」

「着ぐるみにしては芸が込みすぎている……」


 妖精にゴーワンと呼ばれた大男の姿を見て、幹部たちは目を見開いて口々に言葉を漏らした。

 その中でもひとり冷静に、訓馬はゴーワンを観察していた。

 2メートルを超す巨体、緑色の鱗に覆われた爬虫類を思わせる皮膚、鋭い牙を擁する強靭な顎。

 ロールプレイングゲームなどに出てくるリザードマンを思わせるその人ならぬ姿は、彼が異なる世界からやってきたことの証拠そのものだった。

 幹部たちの焦燥ぶりを見回したゴーワンが、やや前方に突き出したワニのような口をゆっくりと開く。


「まあそう驚くこともなかろう、人間どもよ。これより新黒竜王軍の総帥であるワガハイと同盟を結ぶのであるのだからな。グハハハハ!」


 室内中に響く大声で高笑いすぐゴーワンを尻目に、訓馬は席を立ち会議室から密かに立ち去った。


 ※ ※ ※


 バカげている。

 この世界の侵略を企てようとするような勢力と手を結ぶとは……社長は何を考えているのだ。

 と、押さえきれない怒りを乱暴にエレベーターの壁へとぶつけた。


 エレベーターを降り、地下のオフィスに戻った訓馬は、マウスを操作しパソコンの画面に設計図を映し出す。

 これまで内宮が数々の戦いで収集したデータから逆算して作り出した、ジェイカイザーの模倣機。

 この設計図が完成し次第、この腐った組織から脱する決意を固める訓馬。

 置き土産など、完成した自動戦闘AI「イドラ」で十分だ。

 訓馬はシワだらけの手で、電子レンジに入っているコーヒー入りのマグカップを静かに持ち上げた。


「おーっす! 訓馬はん、元気しとるかー?」


 素っ頓狂な、調子を狂わせる明るい声に驚き、その拍子でマグカップが僅かに揺れた。

 並々と注がれた黒い液体が、湯気を伴いながら宙を跳ねる。


「あっ熱っ!!」

「なんや訓馬はん、危ないやないか。ええ年なんやし落ち着きぃーや」

「ええい、お前に心配される筋合いはない。……やけに上機嫌じゃないか」

「おっ、わかってまうか! いやな、笠本はんがプレゼントくれたんや~」


 頬を赤らめながら喜びを表現する内宮の傍ら、やけどした指を氷で冷やす訓馬。

 この大変な時に何をはしゃいでいるのだ、と脳内で悪態をつく。

 しかし彼女の無邪気さは、愚かな大人共に失望していた訓馬にとって、ありがたかった。


「まったく、平時に来ても仕事があるわけではないというのに……。コーヒーを入れてやるから、飲んだら帰りたまえ」

「なんや、遊び来るくらいええやんか。冷たいなぁ……って苦っ! なんちゅーコーヒー飲んどるんや!」

「まったく、君は文句ばかりだな。シュガーならそこの棚の中にあるぞ」

「おおきに! うちはまだ舌が子供なんや」


 内宮の姿に呆れながらも、訓馬は無意識に顔をほころばせていた。


─────────────────────────────────────────────────

登場マシン紹介No.21

【ショーゾック】

全高:7.4メートル

重量:不明


 黒竜王軍暗殺部隊が使用する忍者型の魔術巨神マギデウス

 魔力エネルギーを手裏剣状に固めて投げつける光魔手裏剣や、忍者刀に炎を纏わせて斬りつけるカトンソードといった武器を用いる。

 スピード重視の調整をされており、装甲が薄い。

 カラクリ分身の術という忍術によって、雑霊が操縦する無人機を放つことが可能。

 雑霊が操縦者のため戦闘能力は低いが、撹乱や取り囲みなどで有効。

【次回予告】

黒竜王は潰えたが、軍の野望は潰えない。

人質に取られたエリィ、単身救出へ向かう裕太。

彼の前に現れたのは、漆黒に染められたジェイカイザー。

救うための戦いの中、内宮千秋が吼えた。


次回、ロボもの世界の人々22話「出現! ブラックジェイカイザー」


「うちも、戦うんや! 笠本はんと一緒に!!」


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