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第19話「異世界からの刺客 赤竜丸」【Hパート ラノベのような話】

 【7】


「それで、結局あのオジサン何者だったのぉ?」


 翌日、エリィは教室に入るやいなや、未知の相手を倒した報酬で潤った通帳をニヤニヤ顔で眺める裕太に尋ねた。


「信じられないような話だけど」


 と裕太は前置きして、大田原から取り調べで聞いたガイについての話を始めた。



 ※ ※ ※



 曰く、あのガイという男はタズム界というファンタジックな異世界からやってきた戦士だという。

 そのタズム界では、黒竜王軍たる魔物の軍団と人間たちが争い合っているらしく、巨大な魔物に対して人間は魔術巨神マギデウスという魔法で動く巨大ロボットで対抗していた。

 その戦いはガイを含む4人の英傑の活躍により、かろうじて人類側がやや有利という状況で進んでいたらしい。

 しかし、黒竜王軍は勢力を広げるべく未開の異世界であるルアリ界……つまりはこの世界への侵攻を企てていたとか。

 その侵攻を止めるべくガイはこの世界へと転移したのだが、工事現場のキャリーフレームを黒竜王軍の魔術巨神マギデウスと間違えて暴れていた……というのが裕太が聞かされた内容だった。


「……まるでライトノベルみたいな話ねぇ。そんな生い立ちなら、金海さんをスライムのモンスターだって間違える気持ちもわからなくはないけど。それで、どうしてあのガイってオジサンは笠本くんのお母さんを知っていたの?」

「それが……」

「それは、勇者どののお母上であるユミエ殿は我ら英傑の一角であるからでござる!!」


 突然現れたツナギ姿のガイに、裕太はその場でひっくり返った。


「ななな、オッサン! 何で学校に!?」


 椅子の上に這い上がりながら裕太が詰め寄ると、ガイはフンと鼻を鳴らしながら胸を張った。


「大田原殿下の計らいにより、よくわからぬが異星人保護プログラムというものに入れてもらったのでござる! 狭いが綺麗な家と、この学び舎の事務員という一時的な仕事まで斡旋あっせんしてもらったのだ!」


 ──異星人保護プログラム。

 それは、地球へと移住するヘルヴァニア人のための制度である。

 他の惑星からやってきたヘルヴァニア人は、当たり前だが地球の戸籍を持たない。

 それ故に生活に不都合が生じないよう、公的機関が移住者の戸籍を用意し、家と働き口を都合してくれるというものであり、これにより簡単に地球での新生活をスタートできる仕組みである。


「ま、まあ異世界の人も言い換えれば異星人みたいなものよねぇ……」


 自らもその制度にお世話になったことがあるかのように納得するエリィ。

 それよりも、裕太はさきほどガイが言ったことについての納得がまだだった。


「それよりオヤジ」

「オヤジ、オヤジと呼ばないでほしいぞ。拙者はまだ25歳でござる」

「それはどうでもいいから、俺の母さんが英傑だって? 俺の母さんなら5年前から病院で寝たきりなんだが」


 裕太が質問をぶつけると、まるでわかっていたかのようにガイが大きく頷いた。


「いかにも、ユミエ殿は5年前よりタズム界へと魂が召喚された異界人であるからな。我が故郷のタズム界は夢幻むげんうつつの狭間の世界。それ故、召喚された魂は肉体を得て我らの同志となるのだ。」

「つまり、俺の母さんが異世界で英傑になったのか……」

『まるでラノベみたいだな!』


 携帯電話から唐突に発されたジェイカイザーの声。

 しかし、ガイは少しも驚かずに物珍しそうに携帯電話を覗き込む。


「ほう、この機械に勇者どのの魔術巨神マギデウスの意思が宿っておるのか」

「そのネギデウスとは違うものなんだが……っていうか、さっきからオヤジ俺のことを勇者勇者って何のことだ?」

「ネギではなく、魔術巨神マギデウス! ……とにかく、ユミエ殿は閃光の英傑という二つ名を持つタズム界随一の聖騎士パラディン! その息子たる裕太殿はまさしく光の勇者ということではござらんか!」

「いやいやいやいや」


 顔の前で必至に手のひらを振って否定の意を表す裕太。


「冷静に考えてみろ、侍オヤジ。母さんがその英傑になったのって5年前だかそこらへんだろ? 俺はその前に生まれてる。つまり、母さんに後付けされた称号は俺とは無関係じゃないか?」

「いやしかし、それでも勇者どのは拙者と同等、いやそれ以上の実力を持つ! まさしく勇者と呼ぶにふさわしい人物でござるよ!!」

「おーい、銀川。お前も助け舟を……って」


 助けを求めて振り向いた裕太の目に入ったのは、両頬に手を当て妄想に興じるエリィの姿だった。


「えへへ、笠本くんが勇者様かぁ~♥ じゃああたしは、その勇者様を支えるお姫様……。あらやだ、あたしったら本当にお姫様だった~♥ うふふふふ……」

「ダメだこりゃ」


 目を閉じて身体をくねらせているエリィに助力が見込めそうになかったので、今度はジェイカイザーの方へと目を向ける。

 しかし、携帯電話の画面に映っていたのはものすごい勢いで打ち込まれる名前候補だった。


『閃光勇者ジェイカイザー……違うな。愛の勇者……というのも語感的にイマイチか。逆に勇者英傑ジェイカイザー……意味がかぶっているな。むむむむ』


 ロボットアニメのようなタイトルを模索する相棒を見て、裕太はがっくりと肩を落とした。




─────────────────────────────────────────────────

登場マシン紹介No.19

【赤竜丸】

全高:7・6メートル

重量:不明

 ファンタジックな異世界、タズム界で生み出された魔術巨神マギデウスという種類の機体。

 烈火の英傑・ガイの専用機であり、彼が融合することで動き出す。

 武器は炎の剣「イグナーガ」と、その力を用いた火炎魔術。

 魔術巨神マギデウスはタズム界に生息する巨大生物の甲殻などを素材として建造され、その生物の魂と魔力が機体に宿るため生命エネルギーを持ち、傷は時間経過で自動修復される。

 翼竜の姿へと変形した「ワイバーン形態モード」という姿が存在し、タズム界での戦闘では他の魔術巨神マギデウスを乗せて空を駆けることもあった。

 なお、召喚の際に発生する魔法陣は立体映像ではなく本物の魔法陣である。

【次回予告】


 晴れて地球の住人となったガイ。

 彼は困惑しつつも徐々に世界に慣れるべく、日常で四苦八苦をしていた。

 そんな折、キャリーフレームで暴れる不届き者出現の報が届く。

 カーティスと富永の二人と共に、ガイが出撃する。


 次回、ロボもの世界の人々第20話「ふたりのオッサン ひとりの婦警」


「決してやましい気持ちがあるわけではなく、昨日さくじつのお礼代わりにというか……」

「だろうな。オメェみたいな新参者が会って即、富永ちゃんのハートをゲットできるわけはねえ!」

「……私からすれば、カーティスさんも大して知り合ってからの日数は長くないんでありますがね」

「うぐぅっ……」

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