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第19話「異世界からの刺客 赤竜丸」【Eパート 救援】

 【5】


「なんだって!? 不審者に追われている!?」


 カーティスの家を目前にした裕太は、電話口に叫んだ。

 心配そうな表情を浮かべるエリィに目配りをしつつ、進次郎の声に意識を集中させる。


「2脚バイクで逃げているんだが、あいつ走りで追いついてきててな……もしかすると、例の工事現場荒らしかもしれん」

「炎を吹くっていうキャリーフレームを出してくるかもしれねえってことか。よしわかった、ジェイカイザーで向かう!」

「僕たちは住宅街西の開発地域に向かっている。あそこなら被害は出にくいはずだ」

「開発地域だな。待ってろ進次郎!」


 裕太は電話を切るとそのまま携帯電話を空高く掲げ、相棒の名を叫んだ。


「来いっ! ジェイカイザー!!」


 辺りに響く裕太の声。

 しかし、何も起こらない。


「……あら?」


 小首を傾げるエリィの前で、裕太は怒声を携帯電話にぶつけた。


「おいジェイカイザー! お前何で来ないんだよ!」

『裕太、私は気づいたのだ! 今の私はジェイカイザーではなく、ジェイカイザー改なのだと!』

「同じようなもんだろ!」

『違うのだ! 名前とは重要なのだ! さあ叫ぶのだ戦士よ! ジェイカイザー改よ来たれ、と!』


「そんなこと言い合ってる場合じゃないでしょぉ!」


 二人のやり取りに痺れを切らしたエリィが裕太の携帯電話をパシッと取り上げる。

 そして、艶っぽい声でその電話口に語りかけるように囁いた。


「ねぇ、ジェイカイザー。早く来てぇ~♥ お・ね・が・い♥」


 言い終わるやいなや、まるで早回しの映像のように裕太達の眼前に描かれる魔法陣。

 そこから飛び出すように出現するジェイカイザー。


「ま、ざっとこんなもんよぉ」

「ジェイカイザー、お前チョロすぎだろ」

『ぐぬぬ、JKの甘い声には弱いのだ……!』


 悔しがるジェイカイザーのコックピットに乗り込み、コンソールに表示された地図で進次郎達が逃げているであろう場所を表示させる裕太。

 しかし、ふわりとエリィの匂いがコックピットに流れると同時に、横から手が伸びてきて画面をタッチした。

 裕太が思っていたところと違う場所を指し示した画面を横目に、揺れる銀髪の方へと視線が吸い込まれる。


「銀川、お前……!」

「そっちじゃなくて、こっちでしょ。岸辺くんたちが人通りの少ないところを逃げているんだったら……」

「そうじゃなくて、お前も来るのか?」


 裕太の問いかけに、シート脇の空間の中でエリィは俯いた。


「……笠本くんが危険な場所に行って、あたしが安全なところから無事を祈るだけ。っていうのはもう、嫌なのよ」


 これが、まっすぐに視線を合わせて言ったセリフだったら、裕太も素直に感動していただろう。

 しかし、露骨に視線をそらし、わずかに見える口元が歪んでいるのを見れば、主目的が別にあるということがはっきりとわかる。


「そう言って、不審者が使うキャリーフレームが見てみたいだけなんじゃないだろうな」

「うっ……!」


 図星をつかれ、涙目になるエリィ。

 しかし、すぐにその顔に憂いの表情が浮かぶ。


「それもあるけれど、笠本くんが心配なのも本当。邪魔はしないから、お願い」


 まっすぐに見つめられ、渋々コックピットハッチを閉じる裕太。

 こうなったエリィがテコでも動かないのは、今までの経験から分かっている。


「わかったよ。守ってやるから捕まってろよ」

「うん!」


 ひとつため息を吐いて、微笑みながら裕太は了承した。


『男とぉ〜女ぁ〜♪ 素直にぃ〜なれない〜♪』

「おいジェイカイザー、茶化している場合か」

『私だって、私だってなぁ! ジュンナちゃんに「守ってあげるよ」とか言ってみたいし、頼られてみたいのだ!』


 ジェイカイザー悲痛な訴え。

 けれど、裕太はジュンナがジェイカイザーに冷たい理由をいくつか知っている。

 外観が好みでないことと、裕太が起きる前の早朝に携帯電話から発する電波をマウス代わりにしてパソコンで毎朝エロゲーを嗜んでいることだ。

 特に後者は、裕太を決まった時間に起こしに来るジュンナの目にとまっているので擁護のしようもない。


「せめて外面そとづらだけでも繕えば、ジュンナだって軽蔑はしないだろうに。それよりも……行くぞ!」


 裕太がフットペダルをグッと踏み込むと、ジェイカイザーの背部スラスターが青い炎を吹き出し、その巨体を大空へと舞い上がらせた。




    ───Fパートへ続く

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