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第19話「異世界からの刺客 赤竜丸」【Dパート 遭遇】

 【4】


「それじゃあ、お買い物にレッツゴーです!」

「ちょっと待ってくれ、サツキちゃん」


 校門を出て、まっすぐに市街地の方へと向かおうとするサツキを、進次郎が引き止める。


「あれ? お買い物しないんですか?」

「その前に家に寄らせてくれないか? さすがに制服のまま繁華街に出る勇気は僕にはない。先生に見つかったりしたら面倒だからな」

「お着替えなら出しましょうか?」


 腕の先をウニョンと変化させ、着替え一式を擬態で生み出すサツキ。


「……サツキちゃん、僕に外で着替えろというのか?」

「あっ、それもそうですね!」


 いそいそと衣服をまた体内に戻すサツキの姿に、ため息をつく進次郎。

 今まで数々の彼女の擬態を見てきて慣れてきてはいるが、目の前でウニョウニョと人間が溶けるように姿形を変えるのを、何度も目のあたりにするのは精神的に良くない。

 目の前でサツキが私服に着替えるのだって、まるでテレビゲームの装備変更の如く、一瞬で服装が変わるので萌えも情緒もあったものではない。

 いつか、本当の意味で生着替えを見てみたいなと思う進次郎は、健康的な高校男子そのものであった。


 ※ ※ ※


 お金持ちの家にしては至って普通の進次郎の家の前。

 胸までの高さしかない普通の鉄製の門を開ける鍵を探して、通学カバンに手を入れる。


(あれ、どこに入れたかな)


 いつも入れているカバンの内ポケットに鍵が見当たらなかったので、進次郎は一瞬ヒヤリと汗をかいた。

 結論から言うと中敷きの下に潜り込んでしまって、カバンの中身すべてをひっくり返せば見つかるのだが……。


「黒竜王軍配下のモンスターめ、このような所にいたとはな!」


 聞きなれない低い声に気が付き、後ろを振り返った時には甲冑かっちゅう姿の男が剣を振り降ろし、サツキを頭から真っ二つに両断していた。

 左右に別れるようにサツキは足元で金色のゲル状の姿になり、一瞬で人の形に姿を戻す。


「痛いですね! 何するんですか!」

「怒っている場合じゃないだろう! サツキちゃん、逃げるぞ!」


 サツキの手を引き、駆け出す進次郎の脳裏に、甲冑かっちゅうを着ているという工事現場荒らしの情報がよぎった。

 何の躊躇もなく人間……の姿をしたサツキを斬りつけるなんて正気ではない。

 サツキが「こっちのほうが速いです!」と2脚バイクに変身したので一旦足を止め、急いで乗り込む進次郎。


「逃さんぞ! ゴールデンスライムクィーンめ!」


 まるで、ファンタジーゲームに出てきそうな魔物の名前を叫びながら、男は鎧の金属同士がぶつかるやかましい音を鳴らしながら剣を振り上げながら走り始めていた。


「進次郎さん、追ってきましたよ!」

「アクセル全開!!」


 進次郎がアクセルをひねると同時に、2脚バイクが跳躍する。

 全速の自動車には負けるものの、2脚バイクは最高時速70キロ近くまで出すことが可能である。

 それだけの速度なら、この鎧姿の不審者からは逃げ切れる……と進次郎は思っていた。


「うおおおお!!」

「進次郎さん! あの人、ついてきてますよ!」

「2脚バイクに徒歩で追いつくとか、バケモノか!?」


 進次郎はバックミラーに映る甲冑に驚愕しながらも、ハンドルさばきだけは冷静だった。

 あえて人通りの少ない道を選び、右へ左と路地を抜ける。

 彼の天才的頭脳はすぐにこの事態の対処法を導き出し、それを実行に移していた。

 左手でハンドルを操作しながら、右手で携帯電話を手に取る。

 電話をかける相手は、頼りになる親友だ。



    ───Eパートへ続く

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