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勇者系ロボットが目覚めたら、敵はとっくに滅んでた ~ロボもの世界の人々~  作者: コーキー
第一章「覚醒! その名はジェイカイザー!」
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第3話「金色の転校生」【Aパート 転校生は金髪美少女】

 【1】


 裕太が重機動免許を取得して2日後の月曜日。

 ホームルーム前の教室で、裕太とエリィ、それから進次郎はいつもやっているように裕太の席の周りに集まって談笑していた。


「でね、笠本くんったらジェイカイザーで警察のキャリーフレームにステップオーバー・トーホールド・ウィズ・フェイスロックを仕掛けたのよぉ!」

「適当言うな! っていうかなんだよそのクソ長い技名は!」

「天才の僕が解説してやろう。ステップ以下略とは、うつ伏せの相手の覆いかぶさり足首と膝を極め、相手の顔面を締め上げるプロレス技なのだ!」


 進次郎がメガネをこれみよがしにクイッと持ち上げながら、したり顔で解説する。


「知るかよ! なんで知ってんだよ!?」

「フ……天才たるものあらゆる分野に精通していなければならんのでな!」

「まったく、愛国社っていう荒っぽい奴らに襲われて大変だったんだぞ」

「うふふ! でも笠元くんったら、本当にカッコよかったんだからぁ」

『裕太! エリィ殿のこの反応はフラグが立っているのではないか! 今夜あたり家に呼べばイベントが起こるかもしれないぞ!』

「起こるか! っていうかジェイカイザー、勝手に進次郎のゲーム遊びやがったな! 余計な知識ばっかり得やがって! このエセヒーローロボ!」

『エセとは失礼だな、裕太! 大田原どのから平和を託された以上、これから私は悪と戦う正義の戦士として……!』

「ああん、おうちに呼ばれちゃったらあたし、何されちゃうのかしらぁ♥」

「銀川、話がややこしくなるから黙ってくれぇぇぇぇ!」


 裕太が悲痛な叫びをした辺りで教室の扉が勢い良くスライドし、軽部先生がドカドカと足音を立てて入って来た。


「くぉら! てめぇら! またもイチャついて楽しそうにしやがって!」

「これが楽しそうに見えますか!?」


 必死に訴えかける裕太であったが、軽部先生は一瞥いちべつするだけで軽く無視し教壇に登り声を張り上げた。


「相手がいない奴らのことも考えてやれと言っているだろう! だがなあ、寂しい独り身諸君に朗報がある! このクラスに転校生が来たぞ! しかも美少女だ!」

「美!」

「少!!」

「女!!!」


 先生から放たれた転校生、しかも美少女という言葉に教室中の男子生徒の顔が色めきだった。


「「「ウォォォ!!」」」

「こらこら、はしゃぎすぎだぞ!」


 裕太を除き、進次郎を含む男子生徒が一斉にスタンディングオベーションを披露する。



 ※ ※ ※



 彼らは、敗残兵だった。

 かつて、銀川エリィという物語の世界から飛び出たかのようなハーフの美少女を我が手にせんと多くの男子が戦ていた。

 いつの世も、ロマンスや青春を欲し求める男子高校生は決して減りはしない。

 マンガや小説にあるような美少女と過ごす高校生活など、一般的には夢物語に過ぎないのだ。

 だからこそ、彼らはエリィという存在を求め争っていた。

 しかしある日、特に彼女に執着していなかった笠元裕太という存在にエリィが心惹かれたという事実が周知のものとなる。

 彼らにとってその事実は、母国が敗戦し無条件降伏を行ったという大本営発表に他ならなかった。

 戦いに敗れた彼らを待っていたのは、他の女生徒からの軽蔑の眼差しだった。

 銀川エリィ争奪戦という醜い争いに身を投じていた事実は、他の女生徒達が彼らを非難する理由としては十二分であった。

 それ故に、彼らは独立戦争に敗北したコロニー国家の残党兵の如く、この校内でくすぶ雌伏しふくして時を待つ他になかった。

 だが、今まさに彼らは再び青春ドラマの主人公になり得るチャンスを得たと言っても過言ではない。

 転校生の美少女とは、すべての男子が同じスタート地点に立てる唯一の存在。

 誰もが、その救世主、いや聖母の降臨を待ち望んでいたのだ。



 ※ ※ ※



「転校生くらいで大げさな……」


 その渦中からは無縁な裕太は、他の女生徒達と同じ様な冷ややかな目で盛り上がる男子生徒を見ていた。

 裕太にとっては異性の転校生と言っても多少の興味はあれど、あまり魅力のある存在ではない。

 というのも、ただでさえエリィがいる上、口うるさい新参者についこの間から頭を悩ませているからでもある。


『裕太! 美少女というと昨晩遊んだゲームのクーデレなアンジェリッタちゃんみたいな女の子だろうか?』


 その口うるさい新参者がやや興奮したような口調で裕太に問いかける。


「知るかよ! ってか誰だよアンジェリッタって!」

「フフ、ジェイカイザーもあのゲームにハマったみたいねぇ」

「お前の差し金か!」

「静粛にしろぃ!!」


 お祭り騒ぎになっている教室中を黙らせるように、軽部先生が平手で黒板を叩いた。

 立ち上がっていた男子達が一斉に着席し、教室が静寂に包まれる。


「いいか、はしゃぎすぎていきなりセクハラになるような質問はするんじゃないぞ!」


 先生が男子生徒たちに諭すように言うと、進次郎が手を上げながら立ち上がり。


「まさか、先生も転校生を狙っていると?」

「バ、バ、バカヤロウ! 教師と生徒が関係を持ったら、そりゃあ大問題だろうが!」

『なるほど、女教師と男子生徒の逆版になるということか!』

「お前もう黙ってろよ」


 裕太が呆れ顔でジェイカイザーを黙らせる。

 斜め後ろからエリィがクスクスと笑う声が聞こえたが、裕太はあえて聞こえないふりをした。



 ※ ※ ※



「それでは、転校生のご入場だぁ!」


 軽部先生が指を鳴らして合図をすると教室の扉が静かに開き、小柄な少女が姿を表し教壇に立った。

 背の順なら確実に一番前になるだろう小さな身体と、その身体に見合うような可愛らしい小さな顔。

 丈があっていないのか制服の袖が少し余っており、指先だけが外に出ている。

 電灯の光を反射して輝く金髪のおさげは、首の左右で小さなリボンに結ばれ膨らみが控えめな胸へと垂れ下がっていた。


「初めまして、金海かねうみサツキと申します。まだわからないことも多いですが、これからよろしくお願いします!」


 サツキはそう丁寧に自己紹介し、一礼してにこりと微笑んだ。

 その笑顔は破壊力抜群だったらしく、男子生徒たちは一斉に立ち上がり頭を下げた。

「「「よろしくー!!」」」


 後に裕太が進次郎に聞いた話であるが、この時クラス中の男子はサツキが天使に見えたそうだ。



    ───Bパートへ続く

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